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戯曲「東京原子核クラブ」

マキノノゾミ氏の代表作ともいえる戯曲「東京原子核クラブ」。
こないだ「天使は瞳を閉じて」の戯曲を熱く語ったら、友人から真夜中にLINEで「お前のは戯曲マニアじゃなくて第三舞台マニアだろ」と言われまして。
まぁ否定はしませんが、戯曲は他のも読んでますよ…というアピールを込めたり込めなかったりで書いてみる。

マキノ氏といえば解散した劇団M.O.Pの作家であり演出家だけど、この戯曲はM.O.Pではなく外部公演用に書き下ろしたもの。
初演は97年、2年後に再演。
そして来年、20数年ぶりに再演すると聞いて、久しぶりに読んでみた。

舞台は戦時中の東京。
主人公の友田をはじめ、下宿「平和荘」に暮らす若き科学者達は純粋に原子物理学という学問に魅せられ、のめり込む。しかし時代は彼らの学問をただの学問として放っておいてはくれず、やがてその技術は兵器開発に利用されてゆく。そんな時代の中で生きた若者達の青春群像コメディ。
物語は、誰をも、何をも、戦争さえも、善とも悪とも語ってはいない。戦争や原子爆弾という題材を扱ってはいても、反戦や反核を訴えるための芝居ではない。
それは私達が今、たまたま二度の大きな震災や原発事故を経験する世代に生きているのと同じく、彼らもまた、たまたま戦争の真っ只中という、どうにもならない時代の中で生きていたに過ぎないのだということを伝えているように感じる。
劇中、売れない劇作家の谷川が「芝居は芝居のためだけにあるんだ、それ以外になんの役にも立っちゃいけねえんだ!」と叫ぶセリフがあって、きっとこの台詞は、この芝居を書いた時のマキノ氏の思いなのだろう。
そーいや今は亡き第三舞台の名優岩谷真哉さんは「芝居で社会を変えよう、人々を啓蒙しようなんて恥ずかしいからやめてくれ!」と吠えていたが、それも根本は同じなのだろうなとふと思ったりした。

主人公の友田を演じたのは、初演では扉座の有馬自由さん、再演では西川忠志さん。最初、西川忠志と聞いた時には同姓同名の別人かと思ったが、あの西川忠志さんでした。
ちなみに来年の再演(再再演)では、彦次郎を元第三舞台の小須田さんが演じると聞いて、ひとりでおおっ!と叫んでしまった。初演・再演では彦次郎はMOPの酒井さんが演じているのだけど、小須田さんが演ると聞いた瞬間からもう私の中で彦次郎は完全に小須田さんで上書きされました。キャラがハマりすぎ。
あー。観たいなあ。でも東京公演しかない。残念。。

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