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『転売は悪?「ゴッホ美術館」コラボのポケモンカード、メルカリで高額転売続出。転売とRWA NFTの関係』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.10.1


■オランダ「ゴッホ美術館」コラボのポケモンカード、メルカリで高額転売続出 「発送は日本に帰ってから」説明も

オランダ・アムステルダムの「ファン・ゴッホ美術館」(以下、ゴッホ美術館)はポケットモンスターとコラボした展示企画を9月28日からはじめました。しかし、その記念に配布されるカードがフリマサービス「メルカリ」に多数出品され、ネット上では疑問の声が相次いでいます。

2日連続でポケモンカードについての話題を取り上げますが、

ポケモンカード=転売。
もう条件反射で発想してしまいます。

ところで、転売は「悪」なのでしょうか?


良い転売・悪い転売

世の中の商売はほぼすべて、安く仕入れて高く売る「転売」で成り立っているとも言えます。

良い転売と悪い転売があるとはよく言われますし、転売ではなく「大勢で連帯した不当買い占め」が悪なのだともよく言われます。

「『お金さえ出せばなんでも買える』という"市場の論理"が、確かにある部分では人間社会や経済活動を動かしている原理です。しかし、人間には『私の愛がお金で測られるのはフェアじゃない』というように、"市場の論理"に嫌悪感を持ってしまう部分がどうしてもある。

この『フェアじゃない』という感覚は、経済学では見落とされがちな部分ですが、人々が転売に対して強く抵抗を示す理由だと思います。

政治哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんの整理は非常にわかりやすいものでした。つまり、フェアじゃないと感じると。

適正価格を導き出す仕組みにダイナミックプライシングやオークションなどがあります。それと「転売」はよく似ているとしています。

しかし、転売に納得感のある品物と、嫌悪感を抱かれやすい品物があり、また、販売元と消費者の間に割って入る第三者の登場自体に違和感を感じることもあります。そして上記のように「お金さえ出せばなんでも買える」ということが暴力的に見えるケースもあるとしています。

ミュージシャンのライブチケットが転売にふさわしくないと考えられるのは、ミュージシャンとファンの関係で成立しているビジネスだからです。お金の暴力で、ファンでもない人が、ミュージシャンとファンの間に割って入る構造は嫌悪される。これは感覚的に納得できます。


NFTアート「ファン」の違和感

少し話は飛びますが、NFTアートの二次流通について。

NFTは「二次流通」という言葉遣いをしますが、要するに転売です。
転売=悪という報道が多かっただけに、NFT=二次流通=転売=悪と理解している人も1年くらい前は多かったようにも思います。

NFTアートでは、「アーティストとファンの関係性を、NFTの購入と長期ホールドによる応援で構築する」と説明されてきましたが、違和感が拭い去れません。

転売ヤーが間にお金目的で入ってくること、NFTアートのクリエイターも転売ヤーの存在を織り込んで利用していること、ファンと称する人も多くが転売を目的にしていることなど、純粋なファンとの関係性に見えないことが、多くの人の理解を妨げ、NFTを縁遠いものにしてしまったと考えています。

ミュージシャンとファンの関係の中で、転売ヤーが割って入るせいでライブチケットが転売し高騰することの嫌悪感と同じなはずなのに、NFTアートのファンは「転売ヤーではない」という顔をすることが噓らしく見えるのでしょう。


トレカはもはや転売前提?

トレーディングカードというものはもはや子どもの遊びだとは言えないのが現状だと感じます。トレカの販売元も転売されることを知りつつ、

  1. 積極的に転売防止の対策を取る

  2.  黙認する

  3. 楽しみ方のひとつとして容認する

  4. 観客動員に寄与する「限定レアカード」コラボ企画を立てる

  5. 話題性づくりのために積極的に高額転売を誘発させる

など、対応にもグラデーションが生まれているのが現状です。

ポケモンカードについては「4.」の観客動員のコラボは積極的です。転売されるであろうことは承知しているはずですが、「1.」の転売防止を積極的にやろうという運営姿勢ではありません。


マジックザギャザリングは「億」の話題性

これは文字通り世界に一枚しかないカードであり、封入率0.00003%と希少価値のとても高いカードであり、発売前には200万ドル(約2億9,000万円)の“懸賞金”がかけられるなど、大きな話題を呼びました。

「マジック・ザ・ギャザリング(MTG)」というトレーディングカードでは、億単位の値段で買うことを宣言するコレクターがいることを前提に、世界に1枚しかない「お宝」が入っていることを公表するかたちでマーケティングしています。

もしトレカの販売元がこの転売を防止したければ、世界に1枚ではなくもっとたくさん発行すればよいはずです。なにせ元はカードゲームなのですから、世界に1枚しかないカードでは対戦の役には立ちません。つまり、転売を積極的に利用する「5.」のタイプです。


2018年東京都美術館「ムンクピカチュウ」は30万円

https://pokemon-infomation.com/market-price-prom-pikachu-gogh/

美術館とのコラボカードは2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)に東京都美術館で開催された「ムンク展×ポケモンカード」コラボを記念して配布されたプロモカードが存在します。

現在、このプロモカード『ピカチュウ』(通称:ムンクピカチュウ)は20~30万円前後で取引されるほど高騰しています。

5年前に配布された「ムンク展」のポケモンカードが20万~30万円で取引されている「実績」がありますし、今回の「ゴッホ」は海外・オランダまで行くか、アメリカ・イギリス・カナダ限定で現地の住所証明も必要なオンラインストアでグッズを買って特典で手に入れるしかないという、日本からは非常に手に入れにくい状況も相まって、もっと値上がりするんじゃないかという期待値もあります。

こういう「実績」があるからこそ、今回の「ゴッホピカチュウ」はある意味安心して仕入れ転売できる状況です。


RWA NFT市場は転売を成熟させる

ユーザーが手持ちのポケモンカードをCourtYardに送付、預けることで預けた証拠となるNFT(デジタル上の証明書みたいなもの)が発行されます。

逆に、NFTをCourtYardに返却することで現物のポケモンカードを返してもらえます。

預託期間中、CourtYardは大切にカードを預かるほか、カードの真贋証明などのサービスも展開しています。

もっとも、預託期間中はカードで遊べないじゃないか! ...なんてツッコミも聞こえてきそうですが、実際のところ、これほど高額なカードをカードゲーム用途として活用している人は少ないものなんです。それだけに、コレクション目的、投資用途としてカードを収集している方にはうってつけでしょう。

今後5年間で5兆ドルの市場規模になるだろうと言われて大きな注目を集めているのが「現実資産のNFT化」=Real World Assets Tokenization、一般にRWAやRWA NFTです。

上記は、ポケモンカードの現物に対してNFTを発行し、そのNFTを売買することで所有権だけを移転させるRWA NFTマーケットプレイス「CourtYard」の解説を通じてRWA NFTを開設している記事です。

ポケモンカードをはじめとするトレーディングカードは、すでにファンだけが楽しむものではなくなっているのを前提に、投資目的で売買されることをファンも販売元も織り込み始めているというのが現状です。

しかしRWA NFTという概念や言葉、ビジネスモデルが登場し、銀行や証券会社、不動産会社など硬く伝統的な企業もRWAに参入を表明するようになりました。

萱野稔人さんが例に挙げた「医療用マスク」「水源」「ファン向けライブチケット」のように嫌悪感を抱かれる種類のものはRWAとしても受け入れられづらいと思いますが、トレーディングカードのように転売市場を販売元が利用し始めるようになるとRWAも成立しやすくなります。

上記の記事ではRWAが「悪質転売ヤーを撲滅!?」と称していますが、ニセモノを販売する詐欺は撲滅できても、RWA自体は転売の悪い印象を改善し促進するものだろうと思います。

RWA NFTはまずセキュリティトークン(ST)市場で株式・債券・保険・不動産など、投資目的で売買されることがあらかじめ理解されているものから大きくなるでしょう。続いて、宝飾品・高級腕時計・希少な高級車やスポーツカーなどで「カタチ」のある現物の取引に広がり、そしてポケモンカードのように身近な、しかし非常に高額になることもあるコレクターズアイテムに広がっていくのだろうと思います。

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