『人気アイテムの所有権をNFT化──配送しない越境ECを目指すWeb3マーケットプレイス「Unikura」』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.9.5
■人気アイテムの所有権をNFT化──配送しない越境ECを目指すWeb3マーケットプレイス「Unikura」
頻繁に取り上げているRWA(Real World Assets)NFTマーケットプレイスですが、今回は「Unikura」をご紹介します。
「スマオク」「メルカリ アッテ」「メルチャリ」という新規事業らしい新規事業をたくさん手掛けられた、元ザワット代表取締役の原田大作さんのWeb3/NFT分野での新たな挑戦になります。
高級品を中心にクルマなど大型商品も預かる「Americana」、ポケモンカード専門の「Courtyard」、ロレックスなど高級時計を質草に暗号資産を借りる「Arcade.xyz」など、実物のコレクションアイテムをNFT化して流通売買させるRWA NFT、RWAトークン化のビジネスが世界中で勃興しています。
配送しない越境EC
他のRWA NFTと同じく、コレクターズアイテムの実物を倉庫で預かり、その実物をNFT化したものをネット上で売買し所有権移転するというモデルです。
「配送しない越境EC」と記事タイトルで謳われているキャッチコピーが非常にわかりやすいと感じました。
コレクターズアイテムは、売る側も買う側も「場所」を求めています。同じ趣味を持つ人がより多く集まる適切な場所がなかなか見つからず、売りたいのに・買いたいのに、売買が成立づらいという課題があります。
また、コレクターズアイテムに囲まれて暮らしたいと夢見る人も多い一方、離れた場所に専用の倉庫を借りて大量に保管する猛者がいる世界でもあります。つまり実物が手元になくてもいいと考える人が一定数いる市場でもあります。
これらの課題とニーズを掛け合わせると、コレクターズアイテムの倉庫保管業×NFT化による市場流通=RWA NFTマーケットプレイスという業態に結実します。
一度倉庫に送られたコレクターズアイテムは、基本的には実物は倉庫に置きっぱなし、世界中からNFTのみを売買するため、「配送しない越境EC」が実現できます。
日本はRWA NFTビジネスの好適地
「Unikura」の倉庫は、ニュース記事内では上記の通りシンガポールと日本にあるとされています。
「Unikura」公式サイトでは、上記の通り「日本の一流の倉庫」で保管するとあります。
世界中からコレクションを送りやすい場所であれば、倉庫はどこにあっても構いません。
・今は円安で国際的には相対的に物価や人件費が安い国にもなっていますし、シンガポールよりは土地面積もあります。
・日本は治安が安定しており倉庫強盗の可能性は他国と比べて低いのが大きなメリットです。
・物流網も日本全国津々浦々に巡らされていますし、配送事故も非常に低確率です。
つまり、日本はRWA NFTビジネスをやるのに好適地です。
NFTに関しても他国と比べて法規制が少なく扱いやすいというメリットもあります。
RWA NFT全般の課題として真贋鑑定と倉庫業ノウハウが必要だという難しさはあるものの、当たるも八卦の錬金術なNFTアートやIPビジネスよりも確実性は高そうで、グローバル展開もしやすいのがRWA NFTだろうと見ています。
そのRWA NFTに適している場所が今や日本。これはチャンスと言うしかありません。
コレクターズアイテムを集めることが要
倉庫までの配送料と保管料は無料としています。
RWA NFTはコレクターズアイテムが集まってナンボですから、世界中からのシッピングと保管費用は取らない方針のようです。そのぶん、RWA NFTの売買手数料から倉庫運営費用、空調費、警備費などを捻出しなければなりません。
倉庫から実物を引き出す場合の配送料金はかかります。「Unikura」のホワイトペーパーには以下のようなフローの説明があります。
つまり、集めたコレクションはできるだけ倉庫の中にいてほしい。というメッセージが伝わる設計です。
長期保管と売買の活性化の両立ができるか?
集めるだけではダメで、売買されることが必要です。コレクターズアイテムは長期保有されがちで頻繁な売買が起きづらいという課題の解決方法が難しそうに感じます。
「Americana」のように、または一般の倉庫業のように、保管料を取った方がいいんじゃないかとも思いますが、どうなんでしょうか。
貸し出しビジネスとの組み合わせも
コレクターズアイテムの値上がり期待とは別のビジネスですが、高級バッグや高級腕時計の貸し出しビジネスもニッチですが存在します。
倉庫に集まったアイテムの実物を貸し出すビジネスとの組み合わせもあるかもしれません。破損・汚損・紛失・盗難などの別のリスクが発生するので簡単には横展できませんが、もしコレクターズアイテムの大半が長期保管され流動性を失うとしたら、レンタルビジネスもアリかもしれません。
日本発Web3ビジネスの成功例に
DeFiやDEX、暗号資産取引所、NFTアート、Play to Earnなど、これまで登場したWeb3の「成功例」はいずれも海外の法規制の緩いところから登場しています。
日本では政府を挙げてWeb3推進を謳いつつも、やはり法規制や税制不備などで大手企業は特に躊躇しがちになるのが現状です。スタートアップについても日本でやるメリットが感じらず海外流出が相次ぎました。
しかし、RWA NFTについては日本でやるメリットが大いにあります。日本の治安の良さと物流網の確実性は世界に冠たるものですし、RWAの要である倉庫に使う土地も、狭い国土とはいいながら必要十分な面積が地方都市には確保しやすいはずです。
独自のFTを扱わない限り、RWA NFTは日本では始めやすいのは間違いありません。
あとはグローバルマーケティングを日本発でやれるかどうかにかかっています。マーケティングがうまい海外企業が事業主体で、日本は倉庫業の下請けという構図となりませんように。