『米公聴会「トークン化されたポケモンカードは証券か?」ゲンスラーSEC委員長は答え示さず』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.9.30
■米公聴会「トークン化されたポケモンカードは証券か?」ゲンスラーSEC委員長は答え示さず
アメリカでは証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長がNFTやFTをなんでもかんでも「証券だ!」と言い張り、「証券なのだからSECの監督下でないと許さん!免許取れ!(免許出さんけど)」と、事実上NFTや暗号資産をアメリカで禁止してしまっているのはご存じの通り。
先進技術による社会イノベーションを長年牽引してきたアメリカが、暗号資産については全面禁止しているのは非常に残念ですが、そんなSECのゲンスラー委員長に米国下院の公聴会で
「ポケモンカードNFTは証券?」とガチで質問する事件が起きました。
旧TwitterのXでは半分笑い話のように扱われていましたが、結構芯を食った質問です。
そして「ゲンスラーSEC委員長は答え示さず」というのが大問題なのです。
「現物のポケモンカードは証券ではない」証言
この「現物のポケモンカードは有価証券ではない」と証言しています。
最高額のポケモンカードは4億3,900万円もします。
この現物を売り買いすることは投機的な行為ではあるものの、単なるモノの売り買いです。
RWA NFT、つまりポケモンカードを所有する権利=現物との引換券としてNFTを発行して売買する場合、ポケモンカードNFTは証券にあたるのか?との質問に対してゲンスラー氏は
「場合による」
と答えをはぐらかしましたが、有価証券である可能性を含み置いたということです。
なぜ現物のポケモンカードは有価証券ではなく、ポケモンカードの所有権をNFTにすると有価証券になる可能性があるのでしょうか?
ハウィーテスト
ゲンスラー氏は、ハウィーテストに引っ掛かれば、そのRWA NFTは有価証券にあたると答えています。
ハウィーテストは、次の4つの指標を使って、何が証券で、何が証券ではないかを判断します。
他の人の努力によってもたらされる
利益を期待した
共同事業への
資本の投資
ある資産がハウィーテストの4つの要件すべてを満たせば、それは証券であり、1933年と1934年の連邦証券法に基づいて、SECに登録が義務付けられます。
ゲンスラー氏は暗に、ポケモンカードNFTはハウィーテストに引っ掛かる可能性があると言っているわけです。しかし、そんなことはないはずなのです。
NBA Top ShotとポケモンカードNFTの違い
裁判でもNFTの有価証券性が争われた際に「ポケモンカード」も例示されています。
「NBA Top Shot」のNFT(モーメントと呼称)は、上記の裁判では有価証券にあたると判断されています。
「NBA Top Shot」は、運営するダッパーラボ社のプライベートブロックチェーン上で発行され、二次流通市場もダッパーラボ社が運営していることから、ダッパーラボ社が経営努力をすることが「NBA Top Shot」の値上がりにつながる。という点でハウィーテスト的に有価証券だと判断されたわけです。
対してポケモンカードNFTは事情が違います。
「Courtyard」が既にポケモンカードNFTを発行・売買する仕組みを提供していますが、パブリックチェーンのPolygon上でNFTを発行しています。
そして、「Courtyard」が経営努力することがポケモンカードNFTの値上がりにつながるというよりは、一般市場で現物のポケモンカードの価値相場と相関性があると考えるほうが妥当です。
ポケモンカードNFTも有価証券指定しかねないSEC
先述の通り、ゲンスラー氏は、ポケモンカードNFTの有価証券性に含みを持たせ否定しませんでした。そのことが大問題です。
どんな無理筋な論理でも、いまのSECは「全部有価証券!」と言いかねない、ということです。
香港のRWAガイドラインと対比される
香港証券先物委員会が近く提示すると言っているRWA NFTガイドラインは、もともと有価証券や不動産の登記簿など免許事業になっているものを取り扱う場合と、ポケモンカードのように免許事業外で売買されるものをNFT化して売買する場合とは区別してガイドラインが提示されるのではないかと予想されます。
このガイドラインで「ポケモンカードNFT」のケースは有価証券ではないと明確化されれば、米SECの頑なな姿勢も明確化されるだろうと思います。
アメリカで暗号資産やNFTを使ったビジネスがやりづらくなるほど、香港・中国・アジアにWeb3の中心になるでしょう。日本からは立地的にも近くてありがたいですが、やはり世界一の経済大国アメリカを市場としてみなせないのは痛い。SECが態度を改める日が来ることを切に願っています。