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『電子名刺の普及がWebサービスの「称号」化とウォレットの普及を後押しする』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2023.12.9


■約半年で10万回かざされた「電子名刺」 “ファン”の証明にも活用

もう紙の名刺は古い。スタジオプレーリー(東京・渋谷)が運営するデジタル名刺サービス「プレーリーカード」がユーザー数を伸ばしている。2023年2月のリリースから半年で、プレーリーカードをかざした回数の合計は10万回に到達。さらに同社が今熱心に取り組み始めているのが、プレーリーカードのマーケティング活用だ。特に力を入れているのが、島根県にある海士町のファンコミュニティーサービスだという。デジタル名刺の新たな可能性とは。

コロナ禍明けでリアルに会って商談するケースも少しずつ戻ってきましたが、オンライン会議でしか会ったことがない方のほうが10倍多いのが私の現状、すっかり名刺を使わなくなりました。

リアル面会で名刺交換をしたとしても、その名刺はあまり活用できていないのが現状。名刺をスキャンしてデジタル管理しようというソリューションも昔からありますが、だったらこの「電子名刺」のように初めからデジタルデータで交換した方が活用しやすいのは間違いないと感じます。

この記事の中では個人の名刺だけでなく地域やイベントも全部「名刺」化して、出会いや参加の履歴として活用するアイディアも提示されています。これは今後ものすごく普及するだろうと見ていますが、課題も多いなと感じます。

今回は、可能性を感じつつも課題もある「電子名刺」について考えてみたいと思います。


紙の名刺の課題

まず紙の名刺の問題点を挙げてみます。

・名刺に掲載できる情報が少ない。
カードサイズは狭い。QRコードでWebに飛ばして情報を増やす工夫をするも、だったらQRコードだけでいい。

・内容が更新できない。
1年以上経つと異動・肩書変更・退職などで名刺が役立たなくなることが多い。異動のたびに印刷しなおしでコストも時間もかかる。

・検索できない。
くるくる回るローロレックスで名刺を保管していたのは何十年前か。

・デジタル化したら二度使うことがない。
面会の御礼メールを送る際にメアド、肩書、フルネームを参照したら、あとはGmailが覚えているので名刺を見返すことはない。

・SNSでの連絡のほうが効果的。
電話はもはやかけることはなく、メールも使わなくなった。

・名刺交換した日やシチュエーションは名刺には記録されない。
名刺にメモしないと忘れる、思い出せない。しかし紙の名刺にメモしても見返すことがないのでやっぱり忘れる。

結局「デジタル化すればいいじゃない」という課題ばかりが浮かび上がります。しかしデジタル化した時の課題もあります。


電子名刺の課題

・名刺を貯める場所がバラバラになる。
電子名刺サービスが複数あると探せなくなる。みんなが違うサービスを使ってもまとまった電子名刺の保管先がほしくなる。

・情報漏洩する不安。
紙の名刺は「実際に会ったことがある」ことの証明書の機能をある程度果たしていたが、プロフィールURLだけだとネット上に漏洩する可能性がある。

・思い出すきっかけがない。
紙の名刺はデザインや素材、フォントなどが面白くて記憶に残ったり、手元にモノとして置いておくことで思い出すきっかけになることがあるが、全部デジタルデータになると思いだすきっかけが全員公平になくなる。

・電子名刺サービスの永続性が不安。
電子名刺サービスは「プロフィールを書いたWebページのURL」を共有するものなので、運営社がサービスをやめてしまうとプロフィールデータも人とのつながりも全部消えてしまう。

・プロフィールデータを作成するのが面倒。
特に魅力的なプロフィール内容にしようとすると入力しなければならない情報量が多くなりすぎて、履歴書やLinkedInの入力項目を埋めるくらいの労力がかかる。

これらはおそらく、スマホに標準搭載されるかたちでApple/Googleがデファクトスタンダードを作ることで解決するのではないかと予想しています。


電子名刺の普及の鍵はデジタルウォレット

GoogleウォレットやWeb3ウォレットなどで電子名刺を管理するようになるなら電子名刺は一気に普及しそうです。

スマホはパスキー用端末として自分認証に使う鍵の役割を担っていますし、自分のプロフィール情報もスマホとアカウント情報に持たせるようにもなっています。

IDやプロフィールがスマホにあるなら、名刺交換はスマホ同士のかざし合いでできるのがスマートです。

名刺を貯める場所がバラバラになる。の課題は、ウォレットに集約される、で解決です。名前、出会った日、名刺交換した場所、電子名刺内のプロフィール情報などを手掛かりに検索も可能になります。vCardというデータ形式も昔からありますので、全員共通のデータは管理しやすいはずです。

情報漏洩する不安。は、ウォレットで管理されることで情報漏洩リスクも低減されます。なにしろお金を扱うのがベースのウォレットですから、情報漏洩対策はお金の流出を防ぐのと同じレベルで実現されます。許可した範囲で転送できるようにすることも「送金」と同じようにできるはずです。

思い出すきっかけがない。の課題は、検索、誕生日、変更があった際の通知などで紙の名刺より便利に思い出すきっかけをくれるようになるでしょう。画像や映像との紐づけもできますし、SNSとの連動もできるとより便利で実用的です。

電子名刺サービスの永続性が不安。は、AppleやGoogleであってもアカウントを一方的にBANされる可能性を考えると不安が残ります。ブロックチェーンにNFTとして刻むことも考えられますが、プロフィール情報のように変更があるものをNFT化するのは合理的ではありません。

出会った・訪問した・参加したという事実をブロックチェーンに刻むのはアリですが、NFT化すれば解決するというのはおそらく幻想です。

複数の電子名刺サービスでデータを共有できる「インターオペラビリティ=相互運用性」つまり共通規格化で解決するのがよいのではないかと思います。

プロフィールデータを作成するのが面倒。は、むしろ電子名刺の一番可能性に満ちている部分だと考えています。

たとえば自分の電子名刺にゲームの戦績データを紐づけておけば、ゲームをやり込むたびにプロフィール情報がアップデートされます。

マンガサービスに紐づければ、どのマンガ作品を読んだのか、どういうジャンルや作者のファンなのかをアピールできます。マンガ検定があれば詳しさも証明できます。

資格情報を紐づけておけば、資格を取得するたびに追加されます。

大学生であれば受講した講義、テストでの成績なども公開でき就職活動で有利に使えます。

今回のニュース記事内に出てくる「海士町オフィシャルアンバサダー制度」のように旅先を訪れた履歴、イベントに参加した履歴、地域検定の取得級数などが名刺に刻まれます。


電子名刺がWebサービスのハブになり「称号」が普及する

Webサービスやアプリサービスが、電子名刺と接続されて「〇〇に詳しい」「〇〇のファンだ」を伝える材料を提供するようになるでしょう。つまり電子名刺が各種サービスのハブになります。

各種サービスでは「検定」「称号」が実装され、電子名刺のプロフィールに掲載できるようになっていきます。

そうなれば「〇〇に詳しい人を検索する」が可能になります。
公開名刺と検索サービスが生まれ、プロフェッショナルを探す人材マッチングサービスになったり、マーケティングターゲットを探すためのポイ活サービスなども生まれるでしょう。


Web3ウォレットの視野を広げる

詳しい方はお感じだと思いますが、これら個人の活動履歴を「検定」「称号」(のNFT)というかたちでウォレットで参照できるようにする構想は、Web3ウォレットに期待されていたものです。

しかし今のWeb3ウォレットはブロックチェーンのデータを参照することに限定しすぎているように感じます。先述の通り、プロフィール情報は変更が多く、ブロックチェーンに刻むことが合理的でないものが多くあります。オンチェーン情報以外のものも広く扱えるようにするニーズベースで捉え直す必要があると感じます。

ニーズベースでいうと、電子名刺を中心として各種Webサービスの称号データを参照できるという方が用途が幅広いはずで、もしかすると電子名刺がWeb3ウォレットの概念を変えるかもしれないなと感じています。

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