『スシロー、大型モニターに回転レーン表示「デジロー」発表。レコメンドとエンタメの回転ずし2.0』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.9.28
■スシロー、大型モニターに回転レーン表示 タッチで注文
「回転ずし」の良さをバーチャルリアリティで取り戻せるかもしれません。
スシローが東名阪の3店舗で、横長の大型モニター内に「回転ずし」を再現、タッチ操作で注文できる「デジロー」という新サービスの試験導入を行うことを発表しました。
回転ずしならではの良さは「偶然の出会い」
「回らない寿司屋」という言い回しができるくらい寿司=回転ずしになって久しいですが、コロナ禍と不逞客のイタズラのおかげで最近では回転レーンに商品を流しているところは僅かになりました。
回転ずしの良さは安さや料金のわかりやすさだけでなく、たまたま流れてきたものを手に取る「偶然の出会い」もあったと思います。
回転ずし屋に行っても食べたいものが思いつかないことってありませんか?もしくは、いつも同じものを注文してしまいがちになったり。その時々のセール品は注文するものの、売り切れていると途端に頼みにくくなる、なんて経験をした人は多いんじゃないでしょうか。
そんな時、偶然流れてきたものを見て惹かれるということは起こりがちです。まぁこれでいいや、という消極的な理由でも「偶然」は有り難かったりします。
食べたいものを注文するのが「大将に声をかけて」なのか「タッチパネルで」なのかの違いになりつつあったところ、この大型モニター内で寿司の回転レーンが再現されるようになれば、また「偶然の出会い」の楽しみが復活できます。
それに、廃棄が減るのも良いことです。「偶然の出会い」を狙ってお店側が流した現物の寿司は、一定量は手に取られずに廃棄されてしまいます。デジタルであれば廃棄はゼロです。
テーブルや人によって流れる寿司を変えられる
現物の寿司を回転レーンに載せて回すのと違い、テーブルや人によって流れる寿司を変えられます。バーチャルリアリティのデジタルレーンならでは。
むかし回転レーンに実物の寿司が流れていたころは、着席してすぐはマグロを多めに流し、腹が満ちただろう頃には締めやデザート類を多く流すなどの工夫をしていたとテレビで見たことがあります。
しかし、回転ずしの店舗が大型化するにつれ、テーブルごとに来店タイミングがバラバラになり、人の好みも千差万別、上記のような工夫は意味をなさなくなりました。
今回の「デジロー」では、各テーブルごとに大型モニターが設置されています。コンテンツを一斉配信するだけでなくテーブルごとに出し分けができるのであれば、来店タイミングと着座時間、注文内容によって、テーブルごとに流す寿司を変えることが実現できます。
ECサイトやYouTube、TikTokなどで当たり前に行われている、いわゆるパーソナライズドレコメンドです。
アプリ連携でより精緻なパーソナライズ化
スマホと連携させることで、毎回の注文履歴から好みの傾向を分析して大型モニターでレコメンドすれば、好みの寿司を好みのタイミングで提案することができるようになるはずです。
着席して最初に「今日のテーマ」を提案するのも面白いでしょう。「海老と貝づくしのコース」や「炙り寿司コース」、「変わり種コース」など、いくつかのテーマを最初に提示すれば、回転ずしなのに「大将のおまかせ寿司」のような体験を提供することもできます。
提案されるコースの中身は、気に入らなければスキップすればいいですし、「大将」より「液晶」のほうがお断りをするのも気楽です。
4人家族でそれぞれ別のコースをを頼むことも簡単です。画面を横向きに長く使って回転レーンを再現する表示方法だけでなく、■■■■と横向きに4分割してひとりひとりに提案することだって可能です。
注文マシン以上の体験も大型モニターで提供
大型モニターを活かしたエンタメも提供できるのがこれまでのタブレット型注文機との違いです。
くら寿司の「ビッくらポン!」は、5皿食べるごとに液晶モニターでパチンコの抽選演出のような動画が流れ、当たればガシャポンのボールがもらえるというものです。うちの子どもたちには大人気で、寿司の味よりも「ビッくらポン!」があるくら寿司に行きたがる年頃の時期がありました。
しかしうちの子も下が中学3年生ともなると、さすがに「ビッくらポン!」だけでは選ばなくなりました。
いまは9月14日から始まったモンスターハンターNowを熱心にやっているので、もしモンハンがデジローの大画面モニターに映し出されて、食べた皿の枚数や寿司の種類で技が繰り出されて巨大モンスターに攻撃できたり、他のテーブルのお客さんと共闘して倒せたらゲームで使えるアイテムがもらえるなんてキャンペーンが実施されたら、いくつもある回転ずしチェーンの中でスシロー一択になります。
あと一撃入れれば倒せる!なら、もう1皿食べるでしょう。そんなアップセルも実現できるのがデジローの強みになりそうです。
デジタルで回転ずし2.0へ
「デジロー」の今回の試みは、単なる回転レーンの再現に留まらず、デジタル×飲食の大きな変革につながっています。おもしろいアイディアがいくらでも湧きます。タイアップ企画も豊富になっていくでしょう。
そんなアイディアがどんどん実現できていけば、外食がもっと楽しくなる。コロナ禍と迷惑行為を経て発明された回転ずしのバーチャルリアリティ化は、回転ずし2.0と呼ぶに相応しいものだと感じます。