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『今のお金は快適、CBDC普及を正当化できない──マスターカードがCNBCで語る』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.11.27
■今のお金は快適、CBDC普及を正当化できない──マスターカードがCNBCで語る
顧客は今のお金をとても快適に使っており、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正当化する理由はない、と決済業界大手マスターカード(Mastercard)のアジア太平洋地域ブロックチェーン&デジタルアセット責任者のアショク・ベンカテシュワラン(Ashok Venkateshwaran)氏はCNBCに語った。
クレジットカード会社から見たらそうでしょうね。
「今のお金は快適でCBDCに切り替える動機はない」という指摘はとても本質的だと思います。
カード会社は引き落としできればいい
マスターカードにとっては、クレジットカードで支払われたお金が銀行から問題なく引き落としができていれば、法定通貨でもCBDCでもどちらでも構わず、「今のお金は十分に快適でCBDCに変える理由を顧客は持たない」と判断するでしょう。
すでに法定通貨もデジタルデータ化
CBDCは現在の法定通貨と同じ価値を国が保証するもので、価値の不安は法定通貨と同じです。
また法定通貨も今は物理的なものは少なく、残高の数字だけが移動するという意味ではデジタル通貨っぽく扱えるものでもあります。
いま法定通貨がCBDCに置き換わっても、誰も気づかないでしょう。
法定通貨の不便は銀行口座の不便
しかし、クレジットカードの顧客は最終的に引き落とされる「銀行口座」に関して不便を感じていることは多いものです。
お金自体は法定通貨でもCBDCでも外貨でも何でもよく、そこそこ価格が安定している法定通貨なら「快適」と言えなくもありません。しかし、銀行にまつわる手続き周辺は不便です。
メインの給与振込口座からクレジットカードの引き落としするように設定しつつ、貯蓄用の銀行口座、キャンペーンで作った銀行口座、学校など団体が指定するので仕方なく作った銀行口座など、複数の銀行口座を持つことも珍しくありません。
そうすると、どこにいくらあるのか、全部でいくらあるのかも把握しづらいですし、クレジットカードの引き落とし口座が残高不足にならないように資金移動させる時には手間暇と手数料を取られます。
また、お金を他社に振り込む際にはお互いの銀行の違いで手数料が多くかかります。送金に時間がかかったり、受付時間が決まっていたりするのも不便です。
電子マネーはもっと不便
PayPayなどの電子マネーはもっと不便です。d払い、楽天キャッシュ、メルペイ、au Pay、WAON、NANACOなどなど、同じ法定通貨の電子版なのに、相互に互換性がありません。
ぜんぶ自分のお金なのに、口座間の移動すらできません。
全銀行で共通利用できる電子マネーが法定通貨
電子マネーと比較すると、いまの法定通貨は全銀行・全店舗で共通利用できる電子マネーと言えなくもありません。
「現金」というフィジカルなお金も、銀行口座にあるお金のデータの一部を物理的な証明書として取り出したものだと考えると、よくできた仕組みだなぁと思えます。
つまり、今の電子マネーより法定通貨のほうがよくできた電子マネーなのではないか、だからマスターカードは「今のお金は快適」だと言っているのではないかと思うのです。
NFTも不便
話は飛びますが、NFTも電子マネーと同じ不便を抱えています。
たとえば上記はNFT書籍の例です。ナイストライだと思いますが、まだ不便です。
紙の本は置き場がない・運ぶのが重い、届くのが遅いなどの問題があり、できるだけ電子書籍にしたいと考えている人も増えてきましたが、Kindleに代表される電子書籍や各種電子マンガプラットフォームは「読む権利」しかなく不要になっても売却できません。
紙の本なら古本屋すべてで売ることができます。しかしNFT書籍は売れる場所がNFTが発行されているチェーンの違いで限定され、出版元のマーケットプレイスでしか売買できないケースすらあります。
NFT書籍にするなら、すべての古本屋で売れるように共通仕様にしなければ便利だと感じられないでしょう。
CBDCが電子マネーの一種になりませんように
このように、お金にまつわる今の不便はお金そのものではなく、銀行や電子マネー発行会社、流通の仕組みに関してのものが多いと考えます。
銀行でも電子マネーでも、すでに物理的な現金を移動させるのではなく、残高の数値だけを書き換えるデジタル化はできています。これをCBDCにしたところで、特に便利にはならないでしょう。
場合によっては「PayPayと並ぶ別の電子マネーの一種」のように法定通貨とは別のものとして導入されてしまうと、余計に不便になるかもしれません。
民業圧迫だと批判はあるかもしれませんが、銀行不要、多種多用な電子マネー不要になるような「究極の電子マネー」として導入されないかぎり、コンシューマーとしては法定通貨とCBDCの区別はつかないだろうと思います。
ステーブルコインもそうで、「PayPayと並ぶ別の電子マネーの一種」のような扱いになりつつあります。これでは普及しないでしょう。
「財布にCBDCを入れておけば、どこでも好きな場所で使うことができるはずだ──今のお金とほぼ同じだ」
これがCBDCの理想形ですし、ステーブルコインや暗号資産、NFTもそうあるべきです。