『【完全解説】ゲームで遊ぶとお金が稼げるカラクリ、をさらに理解するために』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.20
■【完全解説】ゲームで遊ぶとお金が稼げるカラクリ
DEA社の山田耕三 Co CEOが書かれたPlay to Earnの構造解説記事が話題です。
「ゲームで遊ぶとお金が稼げる」という響きへの直感的な違和感から怪しげに捉えられていたPlay to Earnを、シンプルな構造にモデル化することで非常に伝わりやすく書かれた素晴らしい記事です。
Earn要素を含むブロックチェーンゲーム(敢えてto Earnとは呼んでいません)の企画開発をやっている当事者としても非常に納得できる部分が多く、整理され言語化されたことによるスッキリ感を得られるものでした。
特にBCG未体験の人に漠然と広がっている感覚的な不安感・怪しい印象を変え、ロジカルに一定の納得感を醸成できることがこの記事の最大の効能じゃないかと思いました。
まず私自身はこの記事に対して率直な共感と肯定の立場であることをお伝えします。
そのうえで、おそらく山田耕三さん自身もご理解されていつつ、伝えたい主旨が伝わりにくくなるので触れられていない点について触れたいと思います。
私もBCG開発当事者なので、BCGにポジティブな印象が広まってほしいと願っています。しかしこれから挙げることが「怪しいと思っている人」から先に指摘されるとむしろ悪い点を隠しているという誤解を与え、むしろ訝しさを深めてしまうかもしれないと懸念します。悪いことは正直に先に言っておこう、という心持ちで今回の記事を書かせてもらいます。
■【完全解説】ゲームで遊ぶとお金が稼げるカラクリ記事の要点まとめ(抜粋)
■書かれていないこと1:今の「to Earn」は理想的な設計になっていない
「いろんな方法で」「複数の方法で」+「外部から」お金が入ってくる仕組みであることがきちんと強調されています。
これは裏返すと「単一の方法で」「内部ユーザーだけから」しかお金が入ってきていない現状の多くのPlay to Earnゲームを否定しています。
たとえばSTEPNはユーザーの課金がほとんどの収益源で単一化しているのが現状です。独自DEXの手数料収入や月額サブスク収入など課金収益を得る方法は徐々に増やされていますが、ユーザー課金以外の収益には大きく広がっていません。
そして「一部を報酬として」つまりユーザーが払った額以上に稼げるわけでは必ずしもないことを示唆しています。Play to Earnの大きな誤解は、(複数の外貨やEarnに無関係な課金資金が流入しない限り)本来ユーザー全員が100%稼げるわけではない、ということです。
加えて、「継続的に」外部からお金が入ってくるという時間軸の視点も大切です。
STEPNの大半の運営収益はユーザーが初期にシューズNFTを購入するイニシャルフィーです。そのあとに追加課金・継続課金するシーンがほとんどない(または追加課金しても原資回収できない)ことが経済構造上の問題です。
この記事のように複数の外貨が継続的に入ってくる構造になっていれば理想的なPlay to Earnゲームとなるかもしれませんが、現行の多くのゲームはそのような設計になっていません。
「ゲームで遊ぶとお金が稼げるカラクリ」が納得できたのでSTEPNで追加でシューズを買いました!というツイートを見かけましたが、少なくともSTEPNは理想的な経済設計にはなっておらず、その他のGameFiの多くも同様です。
■書かれていないこと2:ゲームテーマと社会課題の解決は直結されているべき
これは山田耕三さんと考え方が違うかもしれません。
私は、社会課題の解決方法としてBCGゲームを使う場合、その社会課題に直結したゲームテーマ・ゲーム内容になっているべきだと考えます。
たとえば、健康増進のために運動をEarnの力で促す=STEPNで毎日歩くゲーム性、は直結しています。
しかしSTEPN運営が利益を元手に二酸化炭素の排出量削減のためにカーボンクレジットを購入する、はユーザーのゲーム体験とは間接的もしくは無関係です。これを「ゲームが社会課題の解決につながる」と呼んでしまうと、すべての企業がカーボンクレジットを買う行為と違いがありません。
Play to Earnゲームで稼ぐことが貧困対策になる、は飛躍しすぎていると感じます。お店でアルバイトすることが貧困対策になる、と言っているのと同義です。オンラインゲームだから家を離れにくいシングルマザーでも稼げる、は、リモートワークのアルバイトでも同じです。
また「毎日歩くことで健康になる」が「病気の発生を抑え、医療費や社会保障費を提言する効果がある」ということに因果関係がどの程度あるのか、いくら投じることが経済的に合理的かが証明はされていません。
「ゲームで遊ぶとお金が稼げる」に対して多くの人が違和感を感じるのは、社会課題の解決方法とゲーム性が直結していない場合だと思います。
マンホールの写真撮影でインフラ老朽化を早期発見すれば報酬が得られる、とか、気象観測センサーを設置することでピンポイント天気予報が実現するから報酬が得られる、は違和感がありません。
しかし社会課題と全く関係ない、さらに言うとゲーム内容自体がプレイヤーの楽しみ以外の付加価値を生まないものをあまり強く社会問題の解決につながるのだ!と声高に言いすぎるとブロックチェーンゲーム全体に不信感を持つ人が増え普及の妨げになることを危惧しています。
■書かれていないこと3:国家予算を取りに行くのは大変
確かに国が準備するESG投資予算は莫大です。
しかし私企業への利益誘導や癒着を防止する観点から入札や公募などの要件をクリアする必要があり、簡単ではありません。
ブロックチェーンゲームが社会課題を解決するのはその通りだと思っていますし、ゲーミフィケーションやto Earnによる動機付けが非常に有効だと思います。これらに国家や大企業の取り組みがマッチングできれば社会課題の解決が加速度的に進むことが期待できると思っています。
しかしweb3スタートアップがいきなり国家予算を取りに行くのは非常に難しく、入札資格を持った大企業とタッグになって中間マージンを大量に払って実現するしかないのが現実だと思います。
3880兆円の市場規模!ゲーム市場20兆円よりはるかに大きい!
なのでBCGスタートアップで社会問題を解決だ!
とはなかなか行けません。
それでも確かに巨大市場は魅力ですし、PMF(Product Market Fit)的にもただ面白いゲームというより、社会的意義がありゲームプレイを通じて課題が解決される方が受け入れやすく差別化も図りやすい時代になってきていると思います。
大変だからやらない、というわけではもちろんありませんが、3880兆円がすべてゲームに置き換わることもない、と現実的には思うのです。
■ブロックチェーンゲームがマスアダプションするためには理解促進から
3点気になったところを挙げましたが、今回の山田耕三さんの記事「【完全解説】ゲームで遊ぶとお金が稼げるカラクリ」でPlay to Earnに向けられたなんとなくの不信感がクリアになった人も大勢いらっしゃると思いますし、世間的に理解が進むことでマスアダプションが進むといいなと思っています。
社会課題の解決や社会的意義のあるプロダクトというのは個人的にも非常に強い興味を持っている分野でもあり、
にはとても可能性を感じています。
Play to Earnは理想的な仕組みで作れば怪しくなくちゃんと稼げるようにできます。社会問題を解決するパワーもあります。ゲームという軽やかさで課題解決できる洗練されたUXが提供できると素敵だと思います。
今回はカウンター側の視点から書いてみましたが、web3やBCGへの理解が進み、受け入れられるようになるといいなと願っています。