『「あたらしい経済」が記事のフルオンチェーン化にトライ。アーカイブの意義と課題』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.9.6
■記事をブロックチェーンに保存、「あたらしい経済」がUNCHAIN とアプリ開発、アスター(ASTR)採用
web3イベントの企画や司会、そしてvoicy「風呂敷畳人ラジオ」の人としておなじみの設楽悠介さんが編集長を務める幻冬舎「あたらしい経済」でおもしろい試みが発表されました。
Webメディアとして配信された記事を、少なくともテキスト部分についてフルオンチェーンで記録・保存するプロジェクトです。
写真・動画・音声などテキスト以外の容量が大きなコンテンツはメタ情報としてURLのみを記録するとのことですが、主たるコンテンツであるテキスト記事についてオンチェーン化して長く未来に残そうとしています。
■記事をオンチェーンに記録する目的は?
Webメディアはテキストから始まりました。
Windows95が登場したころ、物珍しさも手伝ってたくさんの「ホームページ」が立ち上がりました。
当初はチラシ的なもの、企業情報だけのものなどが多かったのですが、徐々に連載記事やブログにあたるようなものも増えてきました。
個人的に思い出深いのは「百式」という18年間続いた海外サイトを紹介する連載記事でした。
徳力基彦さんがこの2018年10月15日の記事の中で「百式」の意義と影響力の大きさを語られています。
この記事の中では「百式」のサイトへのリンクが張られていることから、新しい記事は追加されないものの過去記事が読める状態だったのだと思います。
しかし、残念ながら今は「百式」の当時の記事を読むことはできません。
↑サイトが消滅していますが、「百式」のリンクを載せておきます。
当時の思い出や威力を語り継ぐ徳力さんの記事はとても意義深いものです。しかし「百式」の記事そのものが今は読めないとなるとやはり真の凄さを後世の人が実体験することは叶いません。
(もちろん2000年~2018年の当時の時代感とセットであったからこそ「百式」の海外サイト紹介の意義も増していた部分は大きかったのですが。)
これがもし今読めたら、と願ってしまいます。歴史的な価値があるものをアーカイブしておくことはとても重要。
■デジタルタトゥーを強化する懸念も
かたや、すべてのネット情報をフルオンチェーンで永続化するべきか、には懸念点もあります。
過去に起きた事件や事故、不名誉なことなどが、ブロックチェーン技術が使われていないものについても相当程度残ってしまいます。それは事実だけでなく誤報も含まれますし、後日尾ひれがついたものや最初からフェイクニュースだったものも含まれます。
「忘れられる権利」とも言われますが、残ってほしくない情報も永続化してしまうことがもともとネット上の課題としてあり、さらにブロックチェーン上に記録し「廃刊後も残る」ならば、削除依頼をすることやGoogleに検索結果に出さないでほしいと要望することもできなくなります。
自律分散型で運営主体の意思と関係なくコンテンツが残り続けるのは良し悪しです。
翻ってこの懸念点を前向きにとらえるならば、「あたらしい経済」というメディアとして永続的に残すに足る品質、誤報のなさ、誤解のなさを熟慮したうえで記事を書く責任意識が高まるという効果を発揮するかもしれません。
■別の話:技術資格のNFT化
記事のオンチェーン化とは別の話として、UNCHAIN STARというweb3技術試験をパスした等級証明をNFTとして発行しており、その所有者がプロジェクトメンバーだと紹介されている点も興味深いと感じました。
履歴書に「保有資格」を書く欄がありますが、本当に持っているのかを証明する技術としてブロックチェーン、NFTを使うというのは、公的資格・卒業証明はもとより、上記のUNCHAIN STARのような私的資格についてもどんどん普及していくと考えています。資格は個人に属するものなのでSBTの方が今後は一般的になりそうです。
期限がある資格についてもスマートコントラクトで期限設定が可能ですし、SBTの場合は発行主体が剥脱することも緊急措置として可能になっているため信ぴょう性がとても高い資格証明制度となるはずです。
硬軟織り交ぜたユニークな資格が今後流行るはずですし、個人が持っている資格を一覧しやすくしたウォレットやDIDの開発も進むと考えています。
■国会図書館をフルオンチェーンで
今はオンチェーン化できるデータ容量が小さすぎるのでネット記事くらいが現実的です。しかしより容量の大きなものを記録するニーズは間違いなくあります。
コンテンツをアーカイブする意義、改竄・検閲・削除から保護する価値は歴史を振り返ると明らかです。
今後、オンチェーンデータの大容量化の技術が進むことで、歴史的に記録されるべきこと、戦争や政治の影響を避け後世に語り継ぐべきこと、国会図書館をはじめ世界中にあるアーカイブ機関に保存されているものがすべてフルオンチェーン化される時代がいつかはくるはずです。
先述の通り懸念点もありますが、大きな流れとしては永年記録の方向。これが人類やAIにとってより正しく有意義に使われることを切に願います。