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『永久に利用できないデジタルコンテンツには「購入」ボタンを付けてはならない法律がカリフォルニア州で制定される』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.9.29

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■永久に利用できないデジタルコンテンツには「購入」ボタンを付けてはならない法律がカリフォルニア州で制定される

デジタルコンテンツそのものではなく、コンテンツへのアクセス権を与える形態でのオンライン販売に対してそのことを明示するよう義務付け、永続的にオフラインで利用する方法が提供されていないコンテンツの販売に「買う」「購入」などの用語を使用することを禁止する法案が、カリフォルニア州で制定され、2025年から施行されることが決まりました。

カリフォルニア州で「購入」ボタンに関する新しい法律が成立しました。

この法律では、デジタルコンテンツを実際には所有できない場合、「購入」という表現を使うことを禁じています。これにより、消費者は映画や音楽、ゲームなどのデジタルコンテンツを購入したつもりでも、実際にはそのコンテンツを所有しておらず、ただ利用権を与えられているに過ぎないという現実が明確にされました。

この法律は2025年から施行されます。

所有権と利用権の違い

私たちが普段「購入」と思っているものが実は「利用権」の取得にすぎないケースは多々あります。たとえば、次のようなデジタルコンテンツでは、「購入」と表現されることが多いですが、実際には利用権しか与えられていないことが一般的です。

  • 映画や音楽のストリーミングサービス(例:Amazonプライム・ビデオ、Apple iTunes):映画や音楽を「購入」しても、ユーザーはそのデジタルファイルを所有しているわけではなく、ただ利用権が与えられ、ライセンスが切れれば利用できなくなります。

  • ゲームプラットフォームでのデジタル購入(例:PlayStation Store、Steam):ゲームを「購入」しても、実際にはそのゲームの利用権を得ているだけで、プラットフォームの決定によってコンテンツが削除されることがあります。

  • 電子書籍(例:Kindle、Kobo):電子書籍を「購入」しても、ユーザーはその本を完全に所有しているわけではなく、プラットフォームでの利用権があるだけです。

  • クラウドサービスのデジタルコンテンツ(例:Google Stadiaなどのクラウドゲーム):クラウド上で利用するためのアクセス権が与えられ、サービスが終了すればそのコンテンツにはアクセスできなくなります。

これらは、期間限定でしか利用できない問題、映画などで出演者が不祥事を起こした場合に運営社側の判断で配信を停止できてしまう問題、運営事業者がサービスを終了するとコンテンツにアクセスできなくなる問題などがあり、「購入」して手元に残る「所有」とは明確に区別されるべきです。

墓地の購入と同じ誤解

「購入」と「利用権」の誤解はデジタルコンテンツに限った話ではありません。リアルな墓地や墓石の購入にも存在します。

多くの人が墓地や墓石を「購入」していると考えていますが、実際には墓地そのものを所有しているわけではなく、「永代使用権」という利用権を取得しているにすぎません。

私自身も、長い間、墓地を購入すればその土地を永続的に所有するものだと思い込んでいました。しかし、実際には管理者が設定した条件のもとで、限られた期間、あるいは一定の契約期間中にその利用権を保持できるという仕組みです。

「墓」に関しても一般的に「購入」「販売」と広告で表現されることが多いことから、デジタルコンテンツの「購入」と同様の誤解が生じるのも無理はないと感じます。

墓のデジタル化とその課題

さらに、現代ではお墓のデジタル化が進みつつあり、この分野でも「所有権」と「利用権」の問題が浮き彫りになるかもしれません。

デジタル墓は、従来のお墓に二次元コードを付け、故人の情報や追悼メッセージにアクセスできるシステムや、Web上に仮想の墓を作り、遠方からでも故人を偲ぶことができるようにしているもの、メタバース上にデジタル墓を設置するものなどが編み出されています。

デジタル墓は、リモートワークなどで昔ほど住む場所が固定化されず、自由に住む場所を変えやすくなっている現代においてますます需要が高まるでしょう。

しかし、ここで問題となるのは、デジタル墓がどれだけの期間存続するのかという点です。

デジタル墓は、何等かの所有権が与えられるものではなく、かつ、サービスが終了した場合にはアクセスできなくなる可能性があります。「墓」というものは、ある程度の長期にわたってサービスが提供されなければ、家族や遺族が困ることになります。

デジタル墓についても、その利用権がどのような条件で提供されるのか、また事業が継続できなくなった場合の対応について、法律や業界のガイドラインで明確にされる必要があります。

厚生労働省も墓地に懸念

厚生労働省も墓地に懸念を示しています。厚生労働省が墓地に関して抱えている課題は、主に以下の3つに集約されます。

  1. 墓地経営の不安定性
    墓地の経営において、使用権の販売などによって一時的に多額の資金が集まるものの、それが他の事業に使われてしまい、墓地経営自体が破綻するケースが報告されています。加えて、少子化や家族の分散により、墓参りや墓地の維持が難しくなっているため、無縁墓となるリスクも増しています。これにより、安定した墓地経営が困難になっている現状があります。

  2. 管理不備の問題
    納骨堂や墓地の経営者が財務書類の管理や提出を怠る事例も報告されています。これにより、経営が破綻した際に遺骨の管理が不十分となり、遺族に大きな負担がかかる事態が発生しています。墓地や納骨堂は長期間にわたる運営が前提の施設であるため、財務的な健全性や適切な管理が求められます。

  3. 少子化・核家族化による需要の変化
    少子化や家族構成の変化に伴い、従来のように家族が代々墓を守るという文化が弱まりつつあります。このため、墓地の無縁化が進み、将来的な需要の見通しが立てにくい状況です。これに対して、公共団体や自治体が安定した墓地経営を支援する必要性が指摘されています。

厚生労働省は、これらの課題に対処するために、適切な財務管理と経営監督の強化を推進し、安定した墓地運営を確保するよう努めています。また、各自治体が地域の実情に応じた条例や規則の制定を行い、墓地の管理体制を改善することが求められています。

誤解されやすい「購入」の概念

カリフォルニア州が示したデジタルコンテンツに関する「購入」の誤解だけでなく、「墓」などのリアルなものについても「購入」や「所有」という言葉に対して、無意識のうちに誤解を抱いていることが多いと感じます。

墓地やデジタルコンテンツのように長期間の使用が前提とされるものについては、その利用条件をしっかりと確認する必要があります。デジタル技術の進化に伴い、今後も「所有権」と「利用権」の区別が重要な課題となってくるでしょう。

まとめ

カリフォルニア州の新しい法律は、消費者が自分が何を得ているのかを正確に理解できるようにするための大きな一歩です。リアルな墓地やデジタル墓についても、こうした消費者保護の観点から、利用権の内容や期間が透明にされるべきだと考えます。特に、私たちが「墓」というものに持っている永続性のイメージが、デジタル墓でもある程度保たれることが、今後の重要なポイントとなるでしょう。

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