『パルコが全て生成AIで制作した広告公開。クリエイティブディレクターのAI化が待つ未来』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.11.2
■パルコが全て生成AIで制作した広告公開、驚きとファッション性を追求したグラフィックとムービー
モデルのひと、服、メイク、背景の大道具・小道具などビジュアル要素はもちろん、ナレーションや音楽という音要素も含めて生成AIで作成されたとする、パルコの広告映像が公開されました。
短いムービーですが、ルックが全編にわたって本当にパルコなんですよね。映像的に凝った演出がないのは現状の生成AIの限界なのかもしれませんが、時間が解決するでしょう。
PARCOデザインがAIで表現できている凄さ
このクリエイターがパルコの世界観を理解しているからこそ、このビジュアルが作れたのだろうと思います。
しかし次の課題はむしろ、クリエイティブディレクターの役割をAIが取って代われるかどうかではないかと思います。
そして、生成AIで作ったことがニュースバリューに(まだ)なっている現在、「AIで作りました」表現の公正さがそろそろ問われるようになる気がしています。
「全て生成AIで」はどこまで人間が関与していいのか?
今回のパルコの広告映像は「全てを生成AI技術を用いて」と謳われていますが、映像まるごとシーンごと生成AIで出力したのではないと思います。個々の画像をプロンプトで生成して、全体を1本の広告動画にするのは人間の手作業による編集が入っているはずです。
「全て」が人間が全く編集で手を入れていないように伝わるのは大げさかもしれません。PARCOのロゴは既存のグラフィックを使ったと思いますし、時系列編集は手作業の部分もあると思います。
生成AIで作った画像をPhotoshopで加工したらそれは「生成AIで作った」と言えるのか、どこまで加工したらAI製とは言えなくなるのか、など、堅いことを言えばキリがありません。
「全てを生成AI技術を用いて」=全シーン全パーツで生成AIを「用いて」はいるが、加工していないとは言っていない、という堅い応答もできるでしょう。
新しい技術を応援する立場からすれば、そんな堅いことを言わなくてもいいよなとは思いつつ、ちょっと気になります。
しばらくしたら「生成AIで作成」が当たり前になりニュースバリューを失います。それから以後はむしろフェイク映像ではないことの証明として「AIを使っています」と注釈を入れなければならない時代が来るはずです。今だけの議論ですね。
クリエイティブディレクターがAIに置き換わる時が来る
これまでは生成AIが作り出した画像や映像を人間が感性で評価して選んでいました。今回のパルコの取り組みも、著名なクリエイティブディレクターの感性があってこそパルコらしいルックに仕上がっています。
しかし、このクリエイティブディレクターの評価軸をAIが学んだ時に、生成AIは真の力を発揮します。
生成AIの活用に熱心な伊藤園が使っている、プラグ社の「パッケージデザインAI」は、パッケージデザインを画像生成AIがデザインしてくれることが真の価値ではありません。
生成されたパッケージデザインの画像がコンビニなど店頭で並べられた時、他社の商品より目立つか、手に取ってもらいやすいかをAIが判定する「評価AI」の存在がとても重要です。
パッケージデザインAIは評価AIの評点が高いものを出力しようとします。そして最終的に商品に採用するデザインは、AIのつける点数を基準に選ばれるようになります。
今回のパルコの広告映像は、映像制作者をAIに置き換えたものです。しかし、この向こう側にはクリエイティブディレクターのAIへの置き換えが待っているはずです。
芸術作品は誰が作ったかが重要ですが、ほとんどの商用広告は誰が作ったかを謳っていません。また、有名なクリエイティブディレクターはAIの学習元となり、本人稼働なしで収益を上げるようにもなるでしょう。
クリエイティブディレクターのAI化とクリエイターのAI化がセットになった時、生成AIは完成します。