『「デジタルリハーサル」デジタルツイン上に人の行動を高精度に再現する技術』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.4.21
■デジタルツイン上に人の行動を高精度に再現する技術を開発し、英国ワイト島にてシェアードeスクーターの運用改善に向けた実証実験を開始
富士通のプレスリリースです。
これまでも3Dで現実空間を再現したデジタルツインは作られてきました。建築分野では家やビルなどをCADデータを基にして作られていましたし、製造業では工場のラインを再現して効率アップを図るなどにも活用されていました。
今回の富士通の取り組みは、島をまるごとデジタルツイン化し、そこに「人々」を配置することで、シェアードeスクーターサービスがどのように使われるのかをシミュレーションするというものです。
家や工場よりずっと大きい「島」で、AIで自律動作する「人」を配置してシミュレーションすることを「デジタルリハーサル」と名付けています。言い得て妙なネーミングでこれから流行りそうです。
「人」ペルソナの精緻化が進む
島という、工場よりは大きいけれど閉鎖的な空間に、AIで自律行動する「人」を配置します。その「人」に与える行動原理を精緻化していけば「デジタルリハーサル」の結果がより現実に起きることと一致するはずです。
実在の人間ひとりひとりの「アバター」=分身がデジタルツイン空間にいる状態が究極で、それこそすなわち「メタバース」なのかもしれませんが、もう少し模式化させるのが現実的です。
「デジタルリハーサル用の群衆パッケージ」が開発され、いろんな「デジタルリハーサル」で共通利用され、シミュレーションと現実の差異をフィードバックして「群衆」の行動を煮詰めて精度を上げていくのでしょう。「デジタルリハーサル用の群衆パッケージ」は単体で売り物になりそうです。
災害分野以外、経済活動に「デジタルリハーサル」を活用
これまで「人」をデジタルツインに配置してシミュレーションするシーンは、首都直下地震や南海トラフ大地震、それに伴う津波や河川氾濫による浸水被害など、災害分野が目立っていました。
人的被害、経済的被害をシミュレーションすることで避難計画の立案や防災設備の見直しにつながるほか、衝撃的な映像をCGで作ることで啓発にも役立ちます。
また別の視点では、国や自治体が「デジタルリハーサル」に予算を付けるのは災害分野だけだったとも言えます。
今回の「島でeスクーターのレンタルビジネスが成立するか?」をシミュレーションするなどの個々のビジネス用途に「デジタルリハーサル」が活用されていけば、成功確率が上がる・新規ビジネスの立ち上がりが早くなる・改善ペースが速まるなどにより経済活動が活性化することが期待されます。
今後、汎用的に利用できる「デジタルリハーサル」ソリューションが開発されるでしょう。最初は大型プロジェクトでしか使えない規模感でしょうが、より安価に使えるもの、「バーチャル渋谷」のようにエリア限定で常設されているもの、実在の人も参加する「メタバースでデジタルリハーサル」なども登場すると予想します。
ブーム的にメタバースが模索されたのはこのためだったのか、と思える日が来るんじゃないかと思います。
ブロックチェーンがAIの演算を担うように?
今のAIの限界はデータモデルと演算処理能力の2つだろうと思います。
そのうち演算処理能力に関してはブロックチェーンというサーバの連なり群が担うようになるかもしれません。
web3のdAppsにAIテクノロジーを使う流れが急速に来ていますが、逆にブロックチェーンのサーバインフラやネットワークをAIの演算処理に使うという発想は面白い。
PoW以外にマシンパワーを使われるなんてもってのほか。は今はその通りですが、AIの処理を担えばPoW的報酬を得られるのであれば、チェーンのバリデータをやるかAIをやるかは報酬量で選ばれるようになるはずです。
報酬の支払われ方はPoWで培ったノウハウがありますので、AIも参加報酬型に変わっていくストーリーはあり得ると思います。
「デジタルリハーサル」は紆余曲折の帰着点
将来を予想した時「デジタルリハーサル」によるビジネスシミュレーションは、メタバース、ブロックチェーン、暗号資産などこれまでのさまざまな紆余曲折をひとつに集約する帰着点かもしれません。
まだ3Dデータも群衆ペルソナデータもAI技術も発展途上で今すぐに実現されるものではありませんが、「デジタルリハーサル」を構成する要素ひとつひとつにソリューションベンダーが現れ産業化する中で、かつてのブームテクノロジーがひとつにまとまる、そんな予感がします。