『3Dプリンター住宅はこのままだと普及しない?国のCO2削減の切り札』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.10.21
■3Dプリンター住宅はこのままだと普及しない
3Dプリンター住宅はものすごく期待している技術です。
9月頭には「550万円で1LDKが建つ」という3Dプリンター住宅の実用化・商品化のニュースが話題になりました。
しかし、現在の建築基準法では、3Dプリンター住宅の主な材料であるモルタルを壁や柱といった「構造耐力上主要な部分」に使うことを想定しておらず、法改正しないと日本では普及できないということを指摘しています。
でも大丈夫。必ず法改正されると思っています。
なぜなら、3Dプリンター住宅は日本の課題をいくつも解決するものだからです。
人口減で住宅余り。空き家問題を解決する。
日本はこれからどんどん人口が減っていきます。人が減れば必要な住宅の戸数も減ります。
余っている家に住めば新しく建てる必要がない、という単純なことでは済みません。昔の家は時代に合わず住みづらいことが多く、結局建て替えるしかない場合が多くあります。
これまでは「100年住宅」のような住み継がれる家のほうが資源の無駄がないと考えられていましたが、ライフステージのすべてを1軒で賄おうとすると大きい家になりがちです。
1人暮らし、夫婦2人、子どもが生まれた、子どもが大きくなった、子どもが巣立ってまた夫婦2人、高齢になり2階への階段が登れなくなった、夫婦どちらかが先立ち1人暮らし、介護で子どもが同居・・・などこのすべてに対応できる家を1軒で済ますのは大昔の「お屋敷」の発想だと感じます。
それよりも、時々のライフステージに応じてローコストに建て替えられたり、間取りの変更や住み替えがしやすい方が、家が無駄になりにくいはずです。
必要な家を必要な分だけ増やしたり減らしたりしやすいローコスト化を3Dプリンター住宅は実現できます。
建築労働力不足を解決する。
家を建てるには大勢の人が携わる必要があります。しかし日本は労働力不足です。外国人労働者への依存度が高い建築業界ですが、日本は円安と景気低迷のせいで出稼ぎ先としての魅力を急速に失ってしまい、これからはますます建築労働力は不足していきます。
3Dプリンター住宅はそもそもの人手を不要にするだけでなく、短期間で立ち上がることも労働力の削減に寄与します。
CO2の削減の切り札になる。
3Dプリンター住宅の射出材料はモルタルです。そのモルタルはセメントから作られます。
モルタルはセメントに水と砂を混ぜたものです。
コンクリートはセメントに水と砂と砂利を混ぜたものです。
つまり違いは砂利を混ぜるかどうかです。
モルタルとコンクリートの元になるセメントは、もともとは石灰石から作られますが、モルタルやコンクリートの廃材をリサイクルして作ることが研究されています。
廃モルタル・廃コンクリートをリサイクルする過程でCO2を吸着固定させ、CO2を削減しようという計画が、国を挙げて進んでいます。
3Dプリンター住宅が普及すれば、CO2を吸着固定したモルタルを使うことでCO2の「用途」を作ることができます。また3Dプリンター住宅を建て替える際に出る廃モルタルがリサイクルされる過程でCO2を減らすために寄与します。
しかも3Dプリンター住宅はモルタルだけで作られている単一素材住宅だということもリサイクルのしやすさを後押しします。
手軽に建て替えやすいローコストで短工期な3Dプリンター住宅は、材料のリサイクル過程でカーボンニュートラルに寄与するというわけです。
国のカーボンニュートラル政策が建築基準法改正を後押しするはず
日本の住宅問題の多くを改善し、なおかつカーボンニュートラルにも寄与することが期待されているならば、3Dプリンター住宅が現行の建築基準法のせいで作りづらい問題は必ずや法改正で解決されるはずです。
それどころか、「コンクリート・セメント産業はカーボンリサイクルの重要分野」としてカーボンニュートラルの切り札だと位置付けているほどですから、国が積極的に3Dプリンター住宅への転換を後押しする可能性もあるのではないかとも思います。
2030年までには実用化させ、以降はこの技術の海外輸出も念頭にあるほどです。「3Dプリンター住宅はこのままだと普及しない」との心配は過度には不要。むしろ旧来の住宅メーカーが利権を守るために「100年住宅」を持ち上げ「住宅の使い捨て批判」へと世論を誘導するようなことが起きないように見張っていないと、建築基準法の改正が世論のせいで遅れる事態が起きるかもしれません。