『金融庁「不動産裏付けデジタル証券」を金融商品として規制か。NFTの使途制限を懸念』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.3.15
■金融庁「不動産裏付けデジタル証券」を金融商品として規制か=報道
日本の金融庁は、不動産の所有権にあたる資産性の部分をセキュリティトークン化して販売する商品化方法を、従来の金融商品取引法で規制するという方針を固めたようです。
セキュリティトークンはNFTでも非ブロックチェーンでも対象
セキュリティトークン(ST)の定義は広く取られており、
ブロックチェーン「等」の電子的技術と、ブロックチェーンに関わらなくてもST扱いされますし、STがノンファンジブルトークン、いわゆるNFTであっても規制対象になるようです。
不動産以外が裏付け資産のSTは今回の規制対象外
逆に今回は不動産を裏付け資産にする場合のみ規制対象とする方針で、
会員権や不動産以外の高額商品を分割所有してアセットの権利(利用権や配当受け取り権など)を得られるものについては金商法に該当しないセキュリティトークンと定義しているとのことです。
つまり不動産のセキュリティトークン化だけが今回の規制対象です。
禁止ではなく登録の義務化と販売の適切化が目的
不動産裏付けのセキュリティトークン化を規制するといっても全面禁止するわけではありません。事業者に金融商品取引業の登録を義務付けるとしており、販売の適正化と消費者保護を目的としたものです。
登録なしで不動産NFTを販売する怖さ
仮に「不動産の所有権を1万個に分割してNFT化してOpenSeaで販売する」という事業者が現れた場合、高額商品への投資機会を大勢の人に開く不動産投資の民主化だという謳い文句で注目を集めるでしょう。
しかし不動産NFT(ST)の販売事業者が実際のその不動産を所有しているか、不動産から得られる家賃収入などをST購入者に適切に案分する能力があるか、ST販売後に不動産を勝手に売却してしまわないかなど、不安がたくさん生まれるはずです。
今回は不動産がターゲットですが、高額商品のNFTによる所有権販売では同じ不安を常に抱えるはずです。海外など遠隔地でトラブルが起きた場合は泣き寝入りにもなりかねず、ST化は裏付け資産の種類によらず適切な規制や管理が必要ではあります。
規制はイノベーション加速のために
ただし、NFTを会員権として扱うユースケースは非常に有用ですし、ファンが推しを応援するクラウドファンディング型NFTやFTも、これからもっと広まっていくユースケースだと考えられます。
これらが広く法規制されるとNFTの使い道がグッと狭まりイノベーションが起きづらくなる懸念があります。
不動産についてはもともと金融商品取引法や不動産取引に関する各種法律によって規制方法が固まっていた分野なので定義しやすかったのだろうと思いますし、株式や債券なども同様に規制対象にしやすい分野だと考えられます。
企業が資金調達のためにFT・独自トークンを発行しガバナンス投票や配当を出すケースなどはおおよそセキュリティトークン扱いでしょうから、出資法や株式・債券に関する法律に準拠するかたちで規制される可能性はあると思います。
しかしながらNFTの使い方を限定しすぎると単なる投機商品やデジタルコレクティブルに過ぎないツマラナイものになってしまいます。
また不動産取引や株式・債券などにしても従来型の規制をただ当てはめてイノベーションが阻害されるとしたらそれも問題です。
いわゆるDXや既得権益の解放などイノベーションが進んでいくために必要な適切な規制や消費者保護の方法を探ることが重要で、一律なんでもセキュリティトークンだとしてNFTの使い方を大きく制限するような規制の方向に向かわないでほしいと願います。