『トヨタ、Alexaを廃止しChatGPTへの移行を模索。クルマ×AIアプリのアイディア勝負が始まる』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.3.27

■トヨタ、Alexaを廃止しChatGPTへの移行を模索

トヨタは、プリウス、カローラなど人気のあるモデルの2023年版で、ユーザーがスマートフォンを介して車内でAlexaを操作できるようにしていたアプリのサポートを打ち切った、と米テクノロジー誌The Informationが22日に報じた

ChatGPTの影響が自動車業界にも。
トヨタ自動車がAmazon陣営のAlexaのサポートを打ち切り、マイクロソフト陣営のChatGPTの導入を検討しているらしい、という報道です。


Amazon Alexa側のビジネス課題が打ち切り原因か

WSJ(ウォールストリートジャーナル)からの情報として、ロイターは、Amazonが不採算事業部門の見直しを進めていると報じました。そのなかにはアレクサを擁するデバイス部門が入っているらしく、同部門は年間50億ドル以上の営業赤字を計上しているとまで指摘。

自動車の場合、計画してから実行されるまでに年単位の時間がかかることが多いと聞きます。世界一の販売台数を誇るトヨタグループですから慎重な判断があったはずで、決定されたAlexaのサポート終了についてはおそらくトヨタが一方的・短期に決めたわけではなく、Amazon側としっかり話し合った結果だと思います。

憶測ですが、トヨタがAlexaを切ったというより、AmazonがAlexaを維持発展するビジョンを提示できなかったのかもしれません。


メルセデスMBUXの人間っぽさとレクサスの人間での対応

音声による操作は運転中に適しています。そのため従来からAlexaやOK Google、Hey Siriなど音声コマンドが導入されていましたし、メルセデスの「Hi Mercedes!」と独自実装するメーカーもありました。

メルセデスの「ちょっと暑いな」でエアコンの温度を下げてくれる人間っぽいコミュニケーションには未来っぽさを感じました。

「ナイスなイタリアンレストランを探して!」とゲオルグさんが言うと、MBUXは、Yelp!(海外の食べログ的なサービス)のレーティングに基づいてイタリアンレストランをリストアップし、「どこに行きますか?」と反応した。「3番目のお店に案内して」と応答すると、ナビが起動し、ガイダンスが始まった。

2005年に日本にLEXUSブランドを導入したときからの売りのひとつに「レクサストータルケア」のコンシェルジュサービスがあります。

運転中、コールセンターにワンボタンで接続。上記のように「ナイスなイタリアンレストランを探して!」と人間のオペレーターに頼むと、オペレーターが(たぶん同じようにWebのレーティング情報などをググって)お店を提案してくれるサービスです。

やり取りの中でお店を決めたらカーナビのルート設定もコールセンター側で遠隔操作してやってくれます。

また、到着予想時間に営業しているお店から選んでくれる、お店の予約もオペレーターがやってくれるなど、「人間が電話している」からできる丁寧さと利便性を発揮します。

ただ、メルセデスがやっているように音声AIで代替できる部分は多いはずです。


クルマにChatGPTが入ったら

AlexaやSiriだとやれることがエアコンの操作やカーナビの目的地登録くらいでしたが、正直これらは従来の入力方法だと音声操作のニーズがあまりなかったと思います。

エアコンは物理ボタンの方が使いやすかったし、カーナビも入力がタッチか音声かの違いしかありませんでした。これは音声入力がコマンド型だからです。

対話型で人間側の発想を広げ選択肢を与え、最終的な決定を人間が行うUXなら音声操作の意味が格段に増します。

先ほどの「ナイスなイタリアンレストランを探して!」をもっと複雑に、「予算はこのくらい、場所はあのへん、デート向きのところで!」まで対話で決めていくには、コマンドが決まっている従来の音声認識・音声操作技術では無理でしょう。

クルマにChatGPTが入ったら、コマンドに関係のない条件の洗い出しと絞り込みの部分では対話を使い、最終的に1件に決まったらコマンドとしてカーナビの目的地登録がセットされる、というUXに変わるでしょう。


スマホで個人とクルマがつながる未来

そしてもうひとつ、個人のスマホと認証連携するようになれば、クルマで行ったわけではない場所、ネット検索した場所、インスタで見たお店など個人の体験をクルマに連携させることができるようになります。

ChatGPTが万人向けではなくクルマのオーナー個人のパーソナリティ情報と連携すれば、よりピンポイントに好みを把握し提案できるようになります。

スマホで個人とクルマがつながるようになれば、ChatGPTの対話型で意図を汲み取るような振る舞いの価値が高まります。お店やイベントなどを推薦することもできるでしょうし、スケジュールをリマインドして「そろそろ帰らないとヤバいですよ」なんてやってくれるかもしれません。

これまでのAlexaやSiriなどのコマンド型では、幅広いネットコンテンツや車両オーナーのパーソナル情報を使いこなせないため、連携するにしてもカレンダーくらいに留まっていました。しかしChatGPTなら使いこなせるようになる可能性が非常に高いと考えています。ならば自動車メーカーはスマホを認証キーとして連携させ、よりモビリティ体験を高度化させてくるはずです。

クルマに乗っている時も、クルマに乗っていない時も、パーソナルな情報がシームレスに連携されるようになる。のがChatGPTが採用されたクルマで得られる体験になるのではないかと思います。


クルマ×AIのアイディア勝負が始まる

しかし、自動車メーカーの意思決定から実装までのスピードは、安全性の確認や国の認証などで数年かかるのが通例です。ChatGPTを純正搭載した車両が出てくるのはしばらく先かもしれません。

テスラや新興電気自動車メーカーなどがネットデバイスにアプリを載せるくらいのスピードで突破してくる可能性はありそうで、CarPlay AI Boxのように車両にUSB接続するAndroid端末で純正カーナビをAndroid化する裏技と組み合わせてChatGPTを使えるようになる方が早そうです。

クルマにChatGPTが載った時に何ができるか。
目的地に誘導する広告商品も出てきそうですし、ひとりでの運転中にも話し相手になってくれるサービスは比較的簡単に作れそうです。このへんのアイディア一発でのビジネスはちょっとワクワクします。クルマがAIアプリビジネスのプラットフォームになるのは10年経たず来そうです。

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