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『「片付け」への挑戦がロボット掃除機を次のステージへ押し上げる』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2025.1.8
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■脱いだ靴下も拾ってくれるロボット掃除機「Roborock Saros Z70」
床に靴下を脱ぎ散らかす問題は世界中であるのですね(笑)
今回発表された「Roborock Saros Z70」は、ルンバに代表される床掃除に限定されていたロボット掃除機の概念を覆し、片付けという新たな領域に踏み込んだ革新的なロボット掃除機です。
RoborockのSaros Z70は、ロボットが障害物に遭遇すると出てくる5軸ロボットアーム「OmniGrip」を搭載している。10.5オンス(約300g)以下の物を持ち上げ、1カ所にまとめて置いたり、指定のバスケットに入れたりして、障害物のない状態で掃除を続けられる。
ロボット掃除機といえば、床の掃除を自動で行う家電として広く知られています。しかし、掃除機が動くためには床が片付いていることが前提条件となり、その運用には限界がありました。
真の課題は「片付け」にあり
これまでロボット掃除機を導入できなかった多くの家庭では、床が片付いておらず、掃除機が走行可能な状態を維持するのが難しいという課題がありました。
そもそも「綺麗な部屋」とは、ホコリや髪の毛が落ちていないことよりも、「物が整然と片付いている状態」を指すのではないでしょうか。この点において、人々が抱える本質的な悩みは「床掃除」ではなく「片付け」にあったと言えます。
極論を言えば、モデルルームのような部屋状態を維持できているごく一部の人たちを除いて、片付いていない多くの部屋に住んでいる人にとっては、これまでの床掃除しかできないロボット掃除機は、何万円も払うほど魅力的には思えないものでした。
片付けには、「グルーピング」「定位置管理」「習慣化」という3つの要素が重要であるとされています。しかし、従来のロボット掃除機は床に落ちた物を「吸い込むべきゴミ」と「避けるべき障害物」に単純に分類することしかできず、片付けに対応することはできませんでした。
床掃除と片付け、それぞれに求められるAIの違い
床掃除を行うロボット掃除機に求められるAIの機能は、部屋の形状やサイズを正確にマッピングし、効率的なルートを計算する能力が中心です。これは、センサーによる高精度な障害物回避や、ゴミやホコリを検知して確実に吸引する制御技術によって実現されています。
一方、片付けロボットに必要なのは、より高度な認識力と判断力です。具体的には、物体を識別してカテゴリに分類するグルーピング能力、各物体の定位置を学習する記憶力、そしてそれを適切な方法で収納する操作精度が求められます。また、片付けロボットは、ユーザーごとに異なる物の配置や片付けルールを学び、それに応じて柔軟に対応する必要があります。
床掃除ロボットが「ゴミ」や「障害物」を区別するシンプルなロジックに依存しているのに対し、片付けロボットには「物の意味」を理解する高度なAIが欠かせません。
Roborock Saros Z70の革新性
「Roborock Saros Z70」は、5軸ロボットアームを搭載した初の量産型ロボット掃除機です。このアームは靴下や軽量物を拾い上げ、指定された場所にまとめることが可能です。これにより、散らかった床を整える新たなステップを踏み出しました。
しかしながら、まだ課題も多く、以下のような制約があります。
300g以上の物は持てない。
高い場所に手が届かない。
引き出しを開けるなどの複雑な動作は不可能。
それでも、「片付け」という領域に足を踏み入れたことは大きな進展であり、これまで片付けを前提としなければ運用できなかったロボット掃除機が、片付けまで対応可能な新たな選択肢を提供しています。
片付けロボットが目指す新たな役割
「片付け」の3要素をロボットが実現するには、以下のような技術が求められます。
グルーピング:物の種類を正確に把握し、カテゴリーごとに分類する能力。
定位置管理:家主ごとの所有物と収納場所を学習し、物を適切な位置に戻す仕組み。
習慣化の支援:片付けスケジュールの提案やユーザーとの共同作業を促す機能。
高いところに届く大きさ:本棚に本を戻したり、クローゼットに服をかけることができる、一定の大きさを備える。
重量物を扱えるパワー:重たいものを持ち上げたり、引き出しを開けられる力強さを持つ。
これらの技術を備えたロボット掃除機が実現すれば、掃除だけでなく、片付けを通じて部屋全体を整える存在として、生活の効率を大きく向上させる可能性があります。
さまざまな収納具が人間の体形を前提にしているため、完全な片付けロボットを実現しようとすると、ロボットは自ずとヒト型になっていきます。しかし、収納方法をロボット側に合わせるような家具が登場すること、オーナーである人間に指示を出したり支援を受けるなどして片付けを実現させるような方法もあり得ます。
必ずしも自律型ロボットで完結させる必要はないと発想した方が、片付けロボットの実用化には近道だろうと考えられます。(ロボットに人間が使われるのか、という意見は必ず噴出するでしょうが。)
「片付け」という本当の課題に向き合うロボットが新市場を開拓する
これまでロボット掃除機を購入しなかった層は、「床掃除」だけでは投資対効果を見いだせないと感じていた人々でした。しかし、片付けまで対応できるロボットであれば、彼らにとっても魅力的な選択肢となり得ます。
「Roborock Saros Z70」が現段階でできることはあまり多くありませんが、片付けをロボットにやってもらう世界をつくり、新たな市場を開拓するきっかけとなる製品だと言えるでしょう。