『CCTVが実現した革新的なXR気象報道、日本でも早期実現を!』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.11.28
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■Netizens were stunned: Has Chinese TV weather forecasting developed like this?(ネットユーザーも驚愕:中国のテレビの天気予報はここまで進化)したのか?
CCTVが実現した革新的なXR気象報道
中国のCCTVは台風「ジュピター」が接近した際、Unreal Engine + XR + バーチャルスタジオ技術を組み合わせた新しい気象報道を実施しました。いわば「XR気象報道」です。
インスタにこのXR気象報道を流した際の動画がアップされています。
アンカーが大画面の前で通常の天気予報をしているかと思うと、突然風雨の強い街頭シーンに切り替わり、傘が強風で吹き飛ばされたり、木が倒れてスタジオに突っ込んでくるような演出が加わります。また、冠水した道路では水位の変化を具体的に示し、住宅地の浸水状況なども分かりやすく可視化しています。
危険な現場から中継する問題
日本の気象報道では、臨場感を伝えるために若手アナウンサーが危険な現場からリポートすることが一般的です。近年は「安全な場所から中継しています」という断りを入れるようになってきましたが、実際には報道スタッフは危険と隣り合わせの取材を強いられています。
大雨や暴風の中継では、カメラマンやスタッフも含めた取材チーム全体が危険にさらされます。また、状況が悪化した際の撤退判断が遅れるリスクもあります。豪雨災害の取材現場では、増水した川の様子を伝えようとして危険な状況に近づいたり、強風下での中継で体制を崩したりするなど、常に事故のリスクと隣り合わせです。
XR技術で臨場感を安全な場所から報道
CCTVのXR気象報道では、スタジオにいながら災害の危険性を具体的に伝えることができます。
風の強さの具体的な表現
・傘が反転する様子や看板が飛ぶ状況を安全に再現
・時速60kmの風がどれほどの脅威かを体感的に伝えられる
・飛散物の危険性を具体的に示せる
浸水の深さを視覚的に表現
・膝下→腰→胸というように水位の上昇を実寸大で示せる
・実際の道路や建物を背景に使うことで現実感を高められる
・地域の地形に合わせた浸水シミュレーションを表示できる
避難行動の具体的な説明
・危険な状況での適切な避難経路を図示
・垂直避難が必要なタイミングの説明
・避難所までの経路上の危険箇所を明示
実際の被災現場に行くことなく、しかし現場からの中継よりわかりやすく危険性を伝えることができる気象報道の新しい仕組みを実現しています。
国土交通省のワンコインセンサーとの連携すれば
CCTVのXR気象報道は間違いなくすごい技術なのですが、実効性には課題があるとも感じます。「サンプル映像」に見えてしまうことで臨場感が伝わらなくなることが最大の課題です。
日本の報道番組でも、CGで作り込んだ映像を見せることはよくあります。大地震や津波をCGで表したものなどはよく見かけます。映像上はすごいのですが、あくまでも「サンプル映像」であり、今起きている災害状況を見せるものではありません。
「サンプル映像」だと、視聴者は見流してしまいます。だからこそ今でも被災現場からのレポートがやめられないわけです。
このXR気象報道に臨場感を加えるために、日本の国土交通省が2024年11月14日から開始した「ワンコインセンサー」による浸水状況のリアルタイム可視化システムとの連携が考えられます。
このシステムでは、162の自治体と45の企業が参加する実証実験において、浸水の危険がある地域に多数のセンサーを設置し、24時間体制で監視を行っています。従来のヘリやドローンによる上空撮影では大雨時に確認できず、水が引いた後の調査では即時性に欠けるという課題がありましたが、このセンサーネットワークにより、リアルタイムでの状況把握が可能になりました。
他にも雨の量、風の強さ、倒壊した家、飛んだ看板など、センサーやカメラから得られた情報をデジタルツイン上で再現すれば、臨場感が伝わるXR映像になるはずです。
センサーの設置が効果的な場所とシーンはたくさんあります。
アンダーパスでの事故防止
・センサーによる実測値をXRで可視化
・「この深さの水でエンジンが停止します」といった具体的な警告
・迂回路の案内とその安全性の確認
河川氾濫の予測と警告
・複数地点のセンサーデータから氾濫の進行を予測
・浸水域の拡大をタイムラインで視覚化
・避難すべきタイミングの明確な提示
土砂災害への対応
・地滑りセンサーと連動した斜面の状態監視
・危険度の変化を段階的に表示
・避難が必要なエリアの明確な提示
これらは現状でもセンサーやカメラが設置されている場所もあり、また被害が多く発生する場所でもありますので、優先度が高いと言えます。
高精度のハザードマップの実現にも
XR気象報道が一般化していくと、センサーやカメラの設置個所が充実していきます。(実際は報道のためにセンサーを設置するのではないはずですが、利用用途が多ければセンサーも設置されやすくなるはずです。)
その副次効果として被災状況のデータが蓄積され、蓄積されたデータは、より精度の高いハザードマップの作成にも活用できます。
・実測データに基づく浸水リスクの評価
・地域特性を考慮した避難計画の策定
・過去の災害データとの比較分析による予測精度の向上
高精度なハザードマップがデジタルツイン上で再現されれば、「XR避難訓練」が実現可能になります。避難計画の立案に携わる行政職員が体験すれば、より実効性が高く減災につながるハザードマップと避難計画が描かれるようになるでしょう。
自然災害の多い日本でこそ
私は日本の放送局でもこのような技術の導入が進むことを期待しています。毎年のように水害で人命が失われている現状において、より安全で効果的な防災情報の伝達は急務です。
スタッフの安全を確保しながら、視聴者により分かりやすく災害の危険性を伝えられる本技術は、防災報道の新しいスタンダードになるべきですし、自然災害が多い日本でこそ早期に実現するべきものだと思います。