『テスラがロボタクシーの遠隔操縦スタッフ募集中』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.12.3
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■無人でも人の力が必要…テスラがロボタクシーのサポートスタッフ募集中
自動運転タクシーと言うと、この記事でも指摘されている通り、クルマが自律的にドライバーレスで走るタクシーを想像します。しかしテスラはそうは考えていません。
完全自律自動運転が難しい場所やシチュエーションでも、遠隔操作で対応できるならそれでいいじゃない、というのがテスラの自動運転タクシー事業の考え方のようです。
テスラはヒト型ロボットのデモで、こっそり遠隔操作していたことがバレた事件が過去に何度もありましたが、実はそもそも遠隔操作を前提に考えていたのではないかという気さえします。
そんなテスラは2026年までに無人タクシー「Cybercab」の実用化を目指しており、遠隔操作でこれを支える「テレオペレーター」を募集しています。テレオペレーターは、VRギアを使い、遠隔地からタクシーを操作する役割を担います。
タクシー業界の変革
ストレートにこのニュースを受け取るなら、まずは、タクシー業界全体に変革をもたらします。
従来のタクシードライバーが運転を担当する形態から、完全自動運転や遠隔操作による無人タクシーに移行することで、都市部では乗務員の削減によるコストダウンや運行効率の向上が進みます。
過疎地など乗務員不足が深刻な地域では、大都市に構えた遠隔運転スタジオから支援することで、遠隔運転オペレーターの雇用を大都市で行うことができるようになります。
「すべてを自律運転にするのは無理。だから自動運転タクシーは過疎地のタクシーの代わりにはならない。」という前提条件が、大都市から遠隔操作するタクシーの登場によって大転換する可能性があるということです。
遠隔オペレーターは3段階で普及する
働き方の面でも大きな変化が起きるでしょう。この遠隔操作タクシーは3段階のステップで普及するのではないかと予想します。
第1段階:サラリーマン型の導入
VRギアは通常、タクシー事業者が所有し、オフィス内で従業員が使用するスタイルで導入されます。
この段階では、遠隔オペレーターは企業のオフィスに出勤し、VRギアを使ってタクシーを遠隔操作します。この形式では企業が労務管理を行い、サラリーマン型の働き方となります。企業はオペレーターにVRギアや通信環境を提供し、労働時間や健康管理をすることになります。
第2段階:ギグワーカー型の登場
次に、ギグワーカー的な働き方が登場します。この段階では、個人がVRギアを所有し、複数のタクシー事業者にまたがって仕事を受注することが可能になります。
フリーランスのオペレーターは自分の時間を柔軟に使い、異なるタクシー会社からの依頼を受注し、自宅で働けるようになります。高性能なVRギアを持つことで、より多くの仕事を効率的にこなせるオペレーターが優位に立つ可能性があります。
第3段階:VRギア提供ビジネスの発展
さらに進むと、ギグワーカーやタクシー事業者に対してVRギアを提供するビジネスや、リモート操作専用のスペースを提供するビジネスが登場します。
VRギアを持たない個人や企業も必要な機材を手軽に利用できるようになります。
さらに発展すると、以下のような新しいビジネスモデルが生まれる可能性があります。
ハードウェアのレンタルやサブスクリプションサービス
高性能なVRギアを提供するレンタルモデルや、月額課金で最新機材を利用可能にする仕組み。リモート操作専用のコワーキングスペース
VRギアと低遅延通信環境を完備した専用スペースを提供し、オペレーターが快適に働ける環境を整備。クラウド型遠隔操作プラットフォーム
オペレーターが自前のハードウェアを持たず、クラウド経由で遠隔操作を行える仕組み。
高性能なVRギアを持つオペレーターは、より正確で迅速な操作が可能となり、仕事の発注が集中する可能性があります。この競争が、VRギアの性能向上をさらに促進します。
遠隔オペレーターが働き方を変える
テスラはタクシーの遠隔操縦を進めていますが、ロボティクス技術と遠隔オペレーターの組み合わせが進めば、もっと幅広い業界で働き方がリモートワーク化します。
タクシーのリモートワーク化
今回のテスラの事例の通り具体的に進んでいます。無人タクシーは特に過疎地の交通問題を解決する手段として期待されますが、自律運転車が地形や環境の複雑さから過疎地での導入が難しいという意見も多くみられました。
しかし、完全自律運転ではなく必要に応じて遠隔操作も組み合わせる前提であれば、走れる場所が増えるはずです。
また、遠隔操作に対応するタクシー乗務員が都市部に住んだままでよいのも、移住を前提としなくて済むため、リソース確保において大きな利点です。
ブルーカラーのリモートワーク化
これまでリモートワークといえば、ホワイトカラー職に限られていましたが、ロボティクスによる遠隔操作の技術はブルーカラー職にもその可能性を広げます。
建設現場での重機オペレーターや農業機械の操作がすでに一部で遠隔化されていますが、これがさらに広がれば、多くの物理的業務がリモート化されます。
近所の道路工事に無人のパワーショベルが穴を掘り、近所の家の建て替えに無人のクレーンが梁を吊っている様子を見るようになるでしょう。それら重機のオペレーターは全国・世界のどこかで遠隔操縦しています。
身障者や高齢者にも広がる雇用機会
分身ロボット「OriHime」がカフェにロボットを配置して接客するようなかたちで身障者に新たな仕事を提供していますが、就ける仕事の種類は限られています。
無人タクシー、無人建築重機、介護用ヒューマノイドなどに遠隔操作業務が広がれば、選択できる仕事の種類が増え、移動や体力に制約がある人々の雇用を拡大します。
バスガイドはバスに乗らずにガイドできるようになりますし、
フォーミュラレーシングのドライバーはGに耐える肉体の限界を超えた速度域でのレースをリモート操縦で魅せてくれるようになります。身体障がい者でもプロのレーシングドライバーを目指せるようになるなんてこともあるかもしれません。
まとめ
無人タクシーを、完全な自律運転だけでなく遠隔操作を組み合わせていいというテスラの発想は、現実的で実用的だと感じます。
そしてその前提になっているロボティクス技術が普及することで、新しい働き方やビジネスチャンスを生む可能性に満ちています。それは、地方の交通問題解決から、ブルーカラー職のリモートワーク化、高性能VRギアを活用した競争やビジネスの発展に至るまで、多岐にわたります。
現時点ではまだまだ夢物語のように感じられるでしょうが、これらは着実に実用化に向かっていくはずです。