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『CryptoPunksがIPグッズのライセンスビジネスを革新するか?』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.8.14
■CryptoPunks、NFTの売却後も制作したグッズに対する権利を保有可能か
もうブームが過ぎ過去のものになった感があるCryptoPunksですが、IPを取得したBAYC運営元のYuga Labsがテコ入れを発表する模様です。
その方法や方向性がNFTの新たな可能性を示しそうな予感がしたのでご紹介します。
過去のNFT所有者がすでに作成・公開したものは、(NFTを売り終わった後も)継続して使用し、そこから利益を得ることを許可する形になると明言した。
つまり、「CryptoPunks」の所有時に、自身のNFTからグッズなどを制作し販売していた場合、NFTの売却後も、それらのグッズに対する権利を維持できる形だ。
NFTを購入・所有することでNFT関連グッズなどを作り商用利用するユーティリティを得られ、かつNFTを売却した後も所有時に制作したものに関しては継続して販売し続けられる、というようになることを示唆しています。
これ自体は、CC0の方がシンプルだしマッチポンプ的だなと思わなくもないですが、「権利付与」というユーティリティが流行るきっかけになるかもしれないなと考えています。
■これまでのNFTのユーティリティ
NFTは「唯一無二の証明書云々」という言葉遣いで説明されていましたが、なんだか煙に巻かれたような気がして理解を拒否されることが多かったと考えています。
なので個人的にはNFTを説明するのに「唯一無二」という言葉を使うのは嫌いです。この言葉を使った瞬間にNFT否定派の人が論破しようとしてくるので(笑)
実用面、機能面、ユーティリティで説明した方が腹落ちしやすいと思いますので改めて整理してみたいと思います。
1.デジタルデータを流通しやすくする機能
NFTは画像などのモノを指すと捉えるのではなく「流通させる仕組み」と捉えた方が理解しやすいです。
NFT(というモノ)に価値があるのか、というと論争になりがちですが、だれがいつどこで作り・いくらで販売しだれがいつ買ったか、を改竄不可能な記録を残すことで流通可能にする「仕組み」だと捉えた方がよいと思います。
「流通させる仕組み」でしかないのでモノに価値があるかないかは別の話に切り分けられます。ブロックチェーンに記録することに意味があるか、効果的か、どのチェーンにどう記録するのが流通の安全性や確実性を高められるか、を考えるのは健全です。
2.投機、マネーゲームで稼ぐ機能
良し悪しは人の価値観に依りますが、重要な機能です。
値上がりを期待して購入、安値で仕込んで高値で売却、という差益を生み出すという機能は確かにあります。
市場価格がいくらなのかがすぐに可視化され、ネット上で即時売買でき、これまでの売買履歴が誰でも確認でき、ほかの流通品との相対的なポジションもわかるのはパブリックブロックチェーンに誰でも参照可能なデータがあるからです。(プライベートチェーンは運営がログを公開するのが任意なので運営企業の信用度に依存します。)
3.集金する機能
寄付金を集める、出資金を集める、という機能を持ちます。
投機で稼ぐこととの違いは、売買されるNFT自体の差益で稼ぐのではなく、プロジェクトや団体の活動に期待してお金を出すという点です。
プロジェクトが成功した暁に利益が出る可能性はありますが、初めから利益を期待していない寄付のみのパターンもあり得ます。
クラウドファンディングや株式を用いた出資金集めに近いものです。
4.評価を数値化する機能
プロジェクトに対する評価をNFTの単価や購入者の人数などで数値化する機能を持ちます。株式でいう時価総額や出来高、騰落レシオなどと同じで、プロジェクトを比較や評価する時に使えます。
ここまでがNFTという仕組みにまつわって生じる自然権的なユーティリティです。ほかにもあると思います。
ここからは実装的ユーティリティを見ていきます。
5.パスポート、入場券機能
特定のNFTを持っている人だけが入場・入室できるという機能です。
DiscordなどでVIPルームに入るためにはNFTを持っていなければならない、10枚以上持っていれば重要なロールや称号が与えられる、という使われ方をします。
デジタルチケットというものはNFTに限らず以前から開発されてきましたが、特定企業の特定プラットフォームを利用することで実現されていました。
NFTであればどこでどのように入手したとしてもパスポートとして機能させることが(そのように実装すれば)可能です。パブリックブロックチェーンの相互運用性や互換性を活かしたNFTならではの特徴です。
6.コミュニティでの連帯機能
機能的に入場制限しなくても、コミュニティの人間関係の中でNFTを持っていることにより一目を置かれるというものある意味のパスポート機能になります。TwitterのPFPもこれに当たります。
7.ゲーム内アイテム機能
ゲームやメタバースなどでアイテムをNFT化する使い方です。
期待されるのはパスポートNFTと同じようにどこでどのように入手したとしても使えることですが、実情は特定ゲーム内で発行されそのゲーム内でしか使えないことが多く、NFTである意味がない使われ方になっています。
将来はメタバースのアバターやウェアラブルアイテムで期待されているようにどこのバースでも相互に使える状態ですが、共通規格化など課題が多いのが実情です。
8.各種権利付与
今回のメインはここです。NFTを持っていると〇〇する権利が得られる、というユーティリティです。
映画にキャラクターとして登場できる権利、エンドクレジットに名前が載る権利、DAOコミュニティで投票できる権利、キャラクターグッズを制作し商用販売する権利などがこれに当たります。
NFTのスマートコントラクトやプラットフォーム側に機能実装せず約款などで規定するケースも多く、新たな開発や投資が不要で実現できることから提供しやすいことがメリットです。
ただし機能実装しているわけではないので違反者が取り締まられない、実際に訴えられたりしないだろうと高を括る場合は実効性が低くなるのは課題です。
■グッズ販売権をNFT売却後にも与える、は有効か?
今回のCryptoPunksの新たな提案は、NFT所有時に制作・販売したグッズについて、NFT売却後も継続販売できる権利を付与する、というものです。
これが実現すれば、高額なCryptoPunksも一時的に所有してグッズを開発し、販売開始後に手放してしまえば販売権の入手に費やしたお金を回収できる可能性があります。タイミングによっては売買益で儲かるかもしれません。
これまでのグッズのライセンス販売の場合では、IPホルダーに個別交渉し、ライセンス取得費用と販売利益の分配比率を相談して決めるのが通例でした。
グッズを作りたい側の信用も必要で、だれでもライセンスを得られるわけではないのが実情です。当然お金もたくさんかかりますし、ライセンス関連に費やしたお金が戻ってくることもありません。
ライセンスビジネスを民主化するという機能それ自体は、NFTがOpenSeaという誰でもアクセス可能なところで売買され、買うだけで権利を得られるという意味で非常に革新的です。
さらにNFT=ライセンス権をあとから売却することで、初期にかかったライセンス取得費用を回収できるとすれば、グッズビジネスをやりたい側にとってはよりリスクが低くなります。
CryptoPunks側(Yuga Lab)も、二次流通の回数が増えれば売買ロイヤリティが増えますし、売買が活性化することで価格維持が期待できます。
落ち目になってきたCryptoPunksのテコ入れ策としては妙手ではないかと思います。
これから有名IPがNFTに参入することがもっと増えると思いますが、従来のIPのライセンスビジネスをNFTを介して実行できるようにすることで個別交渉の手間暇コストを削減しつつライセンスによるIPの収益を最大化できる可能性が、今回のCryptoPunksの権利条件の変更で進化するかもしれません。
NFTにまだまだ慎重なIPが多い中で、グッズライセンスに関する先行事例・成功事例をCryptoPunksで実現されれば、有力IPが多い日本発の面白いNFTプロジェクトがこれからたくさん興るかもしれません。CryptoPunksを待たず同じスキームで自ら先行事例になろうとするIPも登場することにも期待です。