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『全自動ラジオ放送AI「RadioGPT」発表』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.3.1

■全自動ラジオ放送AI「RadioGPT」発表。話題の音楽やニュースをAI音声が紹介、SNS投稿も

オハイオ州クリーブランドのメディア企業Futuriが、ラジオ放送用コンテンツ自動生成AI「RadioGPT」を開発、発表しました
(中略)
「GPT-3技術とAI駆動型ターゲットストーリー発見およびソーシャルコンテンツ生成技術 TopicPulse 、AI音声技術を組み合わせ、あらゆる市場やあらゆるフォーマットに合わせこんだラジオ放送エクスペリエンスを提供する」一連のシステムとのこと。

2010年3月14日のradiko立ち上げから長く開発と運用に携わっていたこともあり、ひときわラジオには思い入れがあります。

ラジオの制作現場では、マシンボイスにしゃべらせるText to Speech(TTS)の技術を使って番組やラジオCMなどを作ることは少し試されています。また音楽主体の番組であれば楽曲リストを作るだけである程度自動的に流せる仕組みが作られたりもしています。

しかし今回の「RadioGPT」のような、SNSからその時々の時事ネタを拾ってきてトーク部分の原稿も生成しラジオ番組まるごとGPTで自動制作する、というソリューションはちょっと衝撃です。


RadioGPTで作られた実際のラジオ番組の音源

↑英語でのトークですが、実際の音源を聴いてみると何をやろうとしているかや出来栄えがわかります。

Facebook、Twitter、Instagramといった主要なSNSをはじめ、2万5000以上のニュースメディアや情報ソースをスキャン、そのときどきでトレンドになっているトピックを特定し、GPT-3技術を用いてラジオ放送用の原稿を生成、ラジオ局はそれを何パターンかのAI音声、または既存のパーソナリティの声を再現するよう学習させた音声でオンエアできます。

その時々の時事ネタをSNSから拾ってきて番組で話す、ということは実際のラジオの現場で行われています。ならば自動的にSNSからの拾い出し、原稿を自動生成して実在のパーソナリティの声を学習したAI音声でしゃべらせればいいじゃない、をやろうとしています。

音楽とトークのつなぎの雑さなどはありつつ、英語のTTSがもともとクオリティ高めだということもあり、音楽+トークの番組としては案外ちゃんと聴けるものになっていると感じます。


GPTは創作が得意だが事実を正しく伝えるのが苦手

ただし、ChatGPTを使ったことがある人ならご存じの通り、作らせる原稿の種類に得手不得手があります。架空の話を作るのは案外うまいものの、事実を伝える報道のようなことは非常に苦手です。

デモ放送では、スプリングフィールドと呼ばれる架空の街で流行のニュースやSNSトピックを紹介する格好で放送を流しています。Futuriはデモで用いる「サンプルストーリーは実際にAIで生成したものではあるものの、さまざまな異なる地域から収集した」トピックを用いていると説明しています。

こういう架空の町を舞台に存在しない事件やニュースを創作させて番組にするのはGPTの得意とするところです。上記のデモ音源を聴いた感じでも、知らない街に関する話なので全く違和感がありませんでした。

コンテンツにはほかにも天気予報や流した楽曲に関するアーティストのエピソード紹介を生成したり、さらにはプレゼント企画の実施も可能。時間帯に合わせてプログラム構成を変えることができるため、昼間と夜間でトークと楽曲の配分や音楽ジャンルを変える、といったこともできそうです。

天気予報はGPTに原稿を作らせるのではなく別のシステムで実現できますし、そうすべきです。プレゼント企画はGPTが勝手に大盤振る舞いしないか心配です:-p

アーティストのエピソード紹介は実はGPTの苦手分野です。
米津玄師さんのプロフィールをChatGPTに尋ねてみました。

Q. 米津玄師のプロフィールを教えてください。

A. 米津玄師(よねづ けんし)は、日本のシンガーソングライター、音楽プロデューサー、ミュージシャンです。彼は、1991年3月15日に大阪府に生まれました。

→Wikipediaによると、誕生日は1991年3月10日、出身地は徳島県徳島市です。こういう間違いをGPTはよくやります。

米津は、学生時代から音楽活動を開始し、2009年にバンド「ハチ」の名前でデビューしました。その後、2012年にソロプロジェクト「米津玄師」として活動を始めました。

→2009年に「ハチ」の名前で活動をしていたのはあっていますが、「ハチ」はバンドではなくニコニコ動画でのハンドルネームです。

2012年に「米津玄師」の本名名義の『diorama』でデビューしたのですが、バンドからソロプロジェクト化したように書いてしまっています。

彼の代表曲には、「Lemon」、「パプリカ」、「海の幽霊」、「感電」、「Flamingo」、「打上花火」などがあります。また、彼は数々のアニメや映画の主題歌も手掛けており、作詞・作曲・編曲・歌唱という多岐にわたる才能を持っています。

彼は、2019年にアルバム「STRAY SHEEP」をリリースし、日本をはじめ世界中で高い評価を受けました。彼の音楽は、独自の感性や哲学を持っていることで知られており、多くの人々に愛されています。

→代表曲や才能の評価は概ね合っていますが、アルバム「STRAY SHEEP」が発売されたのは2020年です。

このように、アーティストのプロフィール原稿をGPTに作らせるのは今のところ苦手です。

日本のラジオ放送波に乗せるラジオ番組としては、事実確認が不十分で考査を通せません。場合によっては放送倫理に抵触する表現が混じるかもしれず、GPTでの番組制作の完全な無人化はまだ難しそうです。


放送局側には番組制作の自動化ニーズがある

完全な自動化は難しいにしても、事後チェックと修正を前提に完パケ番組を作る、大まかな構成を作らせる、SNS上での話題をピックアップさせる、番組のハッシュタグが付いたツイートを拾い出して要約する、などの補助的な使い方は今でもできそうです。

さらに、放送中のコンテンツに関するSNSやブログ投稿、その他のコンテンツをリアルタイムで生成できるほか、アドオン機能のインスタントビデオ生成によってソーシャルメディアに投稿するためのショート動画をAIで自動生成。これもアドオン機能ながら、ポッドキャスト向けの音声も自動で作り出し、投稿できるとのことです。

今のラジオ番組は番組音源を作る以外の作業が大量にあります。
Podcast用の音源を別に制作し、番組SNSを運用し、番宣を動画で作ったりもします。

これらの業務を人手と予算が変わらないか減らされている厳しい経営環境の中でやっていかなくてはならないのが実情。RadioGPTが制作した番組をそのまま放送に乗せられないにしても、補助的な活用方法で人件費や制作時間を圧縮するニーズは放送局側には確かにあります。

RadioGPTがラジオ制作の仕事を奪う、とまでは現段階では言えないレベルではありますが、ラジオ局の経営サイドや制作の現場でのニーズは確かにありそうです。

デモ放送では、スプリングフィールドと呼ばれる架空の街で流行のニュースやSNSトピックを紹介する格好

のような架空設定での番組なら許される部分が多いのも事実で、「話題のGPT AIが作ったラジオ番組です」というキャッチコピーで実験的に使ってみるラジオ局も現れそうです。

最初は30分のAI専門番組からでも、うまい使い方を学びながら広くいろんな番組にGPTが食い込んでいき全体としての制作コストを抑えるのに貢献することを目指す、というのはありそうなストーリーだと思います。

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