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『「Web3×金融ビジネス」は日本で成立する?改めてWeb3の魅力と本質を考える』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.6.20

■「Web3×金融ビジネス」は日本で成立する?教訓にすべき統制国家中国の金融サービスの事情

<目次>
1.Web3の基本要素
2.バズワードと化したWeb3
3.対比で考える、金融とWeb3の交わる領域はあるのか?
4.第三世代金融は「分散と集権、匿名と特定」のハイブリッド
5.統制国家「中国」の金融サービスの事情、学ぶべき教訓とは
6.日本が「Web3×金融」で目指すべき領域とは?
7.どんな利用者を想定すれば良い?サービスの具体案を解説
8.DAOの理想と現実
9.可能性はあるも…乗り越えなければならない構造的問題

DeFiや独自トークンなど金融面と相性がいい「価値のインターネット」とも呼ばれるWeb3についての、特にFinTech目線で現状を整理した記事かと思いきや、金融にとどまらないWeb3の過去・現在・未来をかなり現実的な視点から整理された非常に読み応えのある記事でした。

1度通し読みするだけで30分かかる長文ですし、Web3に関する事前知識が必要な内容ではあるものの、改めてWeb3とは何なのか?を考え直すのによいきっかけを与えてくれます。


Web3の基本要素を改めて整理

 GAFAに支配されたWeb2.0に対するアンチテーゼとしてのWeb3は、下記のような要素があると言える。
国境、人種、民族の制約がなく、誰でも参加できる
“価値のインターネット”とも言われるように、経済的価値の交換が仲介者なしでP2Pで行うことができる
アーキテクチャー面で分散しており、安定性と永続性がある
スマートコントラクトと呼ばれる処理を自動化する仕組みが動いており、そのコントラクトの作成と展開にガバナンスルールが存在する
その結果、大口の投資家や創始者のような特定のプレイヤーに支配されない
数多い参加者がガバナンスルールに基づき平等な権利を保有できる
参加することに対する何らかのインセンティブ設計がある
 これだけ聞くと、Web3の概念と、それを実現するブロックチェーンの技術に夢と希望を抱くのは自然なことだ。

ああ、そうだったなぁ。
と不思議な感慨を抱きながら上記の箇条書きを読みました。

けれど筆者もこの後に指摘しているように

 そこでは、マネーロンダリングや詐欺・賭博行為の横行する可能性が高い(現にそのとおりになっている)のだが、悪く言えば法律上のグレーゾーンを利用してお金儲けをしようという人々、良く言えば進取の気性に富む起業家たち、が集まっている。勝手に始められるカジノ(IR)のようなものだ。

短期的に儲かる部分だけを上手に取り出し、Web3であることの夢と大儀でラッピングした詐欺まがいのサービス、またはWeb3であること自体が目的化してしまった原理主義的なサービスが横行しました。

実際にそれらサービスには巨額な投資が集まったこともあり、少人数の界隈に対して過分なお金が動き、結果的に「頭を冷やせ」と冬の冷気を浴びせられたのが今です。


何の課題を解決するのか?

きちんと市場が自浄作用を働かせているとも言えますが、結局「何の課題を解決するのか?」に立ち戻ることになります。

中央集権は悪で分散化が正義、なのではなく、特定の強権的意思決定に振り回されることがなくなる安心感を確立するために分散化が必要なわけです。昨今のTwitterに非常にわかりやすい中央集権化の居心地の悪さを感じます。

筆者がWeb3の本質を3つに絞るとすれば、下記が挙げられる。
■Web3の本質

(1)アイデンティティ管理が、特定のプレイヤーに支配されていないこと
(2)スマートコントラクトが中央集権的なプレイヤーによってコントロールされていないこと
(3)そこで必要となる経済的価値の交換(送金や支払い)が、オンチェーンで処理されること

※原文では「■Webの本質」と表記されていましたが、文脈から「■Web3の本質」として引用

上記はコア部分の処理ロジックとしては「Web3かくあるべき」なのだろうと思いますが、いずれも「何の課題を解決するのか?」と合致していればこそだろうと思います。無為にスマコン化して「これぞWeb3」と称することは、新しさはあるかもしれませんが、実需がありません。


当人が望むかどうかで仕様が決まる

この記事では日本・中国など国家レベルの話、国際金融の話、地方自治体の話など大きな主語・大きな課題とWeb3の組み合わせの可能性や進め方について整理されています。

NGO、NPOの収支管理
募金団体の集金や分配のプロセス透明化
政治家の政治資金の収支管理
公債やソーシャルボンドの発行と購入者への特典付与
 Web3基盤上でNGOを運用すれば、お金の入りと出を検証可能な形で記録することになり、公金の使い方の透明性も増し、最近一部の団体で問題になっているような不正経理が見逃されるリスクを大幅に減らせるだろう。

市民目線だと上記は「そうだよね」と思うのですが、当事者たちは実のところお金の出入りを検証可能な形で透明性を増したくないんだろうと思います。

中国のような巨大な国家では、中央の統制と地方の独自性をバランスさせることに注意を払っており、共通基盤は中央が整備し、アプリケーションは地方や民間の創意工夫に任せて競争させるという考え方は合理的な分担だと理解できる。

中国×Web3も、非中央集権化を望んでいないからこそ超管理的な仕様を採用しています。

民間の株式会社も非中央集権化して仕様をユーザーのガバナンスで決定することは困難です。ユーザーが望むように利潤をユーザーと分かち合う仕様を採用すれば株主から訴訟を起こされます。

けれど、そんな「中央」が残った形式の中でも、冒頭のWeb3に抱いていた可能性や夢にはやはり魅力を感じるもので、私自身は部分的にでもWeb3的発想や技術を課題解決に使いたいと考えるのです。

今回の記事のメインは「金融」ですが、業界的にはいろんな事件事故があってCrypto Winterを経験した今、改めてWeb3はどうあるべきかを考え直す良いきっかけになる良記事でした。これだけのボリュームを全文読めたことにも感謝です。


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