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『「ストーリーで買う人はいない」と断言するZ世代マーケティングからNFT・web3プロジェクトが学ぶべきこと。』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.12.13

■今瀧健登の「Z世代マーケティング」第5回 ZOZOも認めたD2Cのブランド術「ストーリーで物を買う人はいない」

創業5年目の2022年時点で18ブランドを展開し、SNS総フォロワーは約260万人、年商は30億円を見込む。(中略)なぜyutoriは若者から絶大な支持を集めているのか。代表で28歳の片石貴展氏に、「Z世代のヒットメーカー」こと今瀧健登氏が話を聞いた。

Z世代マーケティングの第一人者である今瀧健登さんのインタビュー記事です。

「ストーリーで物を買う人はいない」というタイトルがちょっと刺激的に感じました。というのはNFT界隈ではストーリーで売るのがセオリー、ストーリーのないNFTアートは売れない、と言われて久しいからです。

さてストーリーでNFTを売る手法というのは正しいのでしょうか?


■結論:ストーリーはあって当然。

今瀧 商品での差別化が難しくなっているからこそ、そういった共感性のマーケティングや「ストーリーマーケティング」が、最近は求められているのかなと感じます。この潮流には、どのような背景があると思いますか。

片石 確かにブランドにストーリー性を持たせることは必要だと思うけど、ストーリーで物を買う人はいないと思うんですよ。服のような消費財は特に。ローンチしたばかりのブランドだと多少ストーリーを見るかもしれないけど、単純に物がいいかとか、自分の欲しいムードに合っているかでしか選んでいないと思います。

今瀧さんの「共感マーケティングやストーリーマーケティングが最近求められるのでは?」の問いに対して片石さんの「ストーリーで買う人はいない」という回答になんだか萌えます。

ストーリーに安易に逃げないという覚悟を感じられます。
インタビューは続きます。

 ブランドができた背景とか伝えたいことは、にじみ出るものなんです。だって変じゃない?お店に行って商品を見ているときに、いちいち制作の背景とかを説明されたら。ネット上でも同じことのような気がします。

なので、わざわざストーリーをブランド側から語ることはしません。そもそも何かに満足していないから物をつくっているわけで、つくり手の鬱憤や不満、葛藤を昇華させたものが商品です。だからストーリーが大事なのは今に始まったことではなく、当たり前のことだと思ってます。

ブランドには作り手の思いや問題解決思考がストーリーとなって商品に現れるのだから、ストーリーそのものを説明するのはクドクドしすぎ。

商品にストーリーが表現されていなければどんな崇高な想いがあったとしても買われはしない。

商品を通じたブランドとファンのコミュニケーションの中でストーリーが語られることはあっても、基本は商品力によって売上が決まる。ということを経営者として体感しているのだろうと思います。


■NFTプロジェクトは語らず伝わる商品力で勝負しているだろうか?

NFTアートは画力やユーティリティよりもクリエイター本人のストーリーで売る傾向がまだ多いように思います。一切のストーリーを知らずに絵だけ見せて感動や共感を与えられるものはどれほどあるでしょうか。

作者の生活苦やNFTで食っていくんだと会社を辞めてフルコミット、みたいなストーリーは作品とは無関係です。クリエイターとファンの間だけで育まれたDiscordの中だけのストーリーは、それを知らない人が客観的に作品だけを見てもまったく伝わりません。それを「コミュニティが大事だ」と言い換えるのは簡単ですが、コミュニティと作品の商品力は別のものです。

yutoriの片石さんはサラッと「商品力が大事」と言い切ります。

かたや「子どもが描いた絵」を画力のみで評価するのも違います。子どもらしい自由で素直な発想自体が魅力として昇華しているものもあります。そこには「子どもが描いた」というストーリーを付加することに意味があると思います。


■SNS総フォロワー数という指標戦略

このインタビュー記事では別のポイントでも興味深いものがありました。

マーケティングリリースに「SNS総フォロワーは約260万人」の指標が入ってくるあたり、今後のweb3プロジェクトの参考になると感じました。

片石 例えば2022年7月に買収したA.Z.Rというアパレル企業は、社員全員がZ世代インフルエンサーで1人1つブランドを持っています。

そこはリアルで売るのがめちゃくちゃ得意。なのでyutoriに入ってからも、店舗での販売に力を入れています。

今までyutoriはネットの動向をすごく細かく観察して、トレンド性もクオリティーも高い商品をそこそこ手に取りやすい値段で出すという、仕掛け人的な手法でヒット商品を生んできました。

一方で、A.Z.Rはブランドをやっている社員自身がインフルエンサーなので、社員に憧れるファンが店舗に来ることで消費が生まれる。そのブランドの何が価値になっているかを考えて、戦術を分けています。

インフルエンサーが1人1つブランドを持っている、という戦略は非常に興味深いと感じます。

web3プロジェクトはアンバサダー=宣伝担当としてインフルエンサー・KOL(Key Opinion Leader)を立てることが増えてきました。

しかしあくまでも宣伝担当です。上記のナイキやアディダスのようにインフルエンサーブランドで「〇〇モデル」のような組み方には至っていないものがほとんどです。

今後はインフルエンサーがより深くコミットし、大勢のインフルエンサーが参加している状態を目指すプロジェクトも増えてくるんじゃないかと思います。

YouTubeやTikTokをプロジェクトとしてみた時は「総フォロワー数は100億人」みたいな表現になるわけです。


■インフルエンサーごとの商品力×信頼感の高いフォロワー規模

最近では数千人人~多くても10万人くらいのフォロワー数の人が「より信用されやすくちょうどいい関係人数」だとも言われ始めています。従って一概に総フォロワー数が多ければいいと言えるわけではないのですが、web3プロジェクトの企画を初めから「総フォロワー数」で組み立てられるように設計するのも良い戦略だと思います。

良い商品も人によって好みが違いますので、大きすぎないインフルエンサー×そのインフルエンサーが良いと思う商品でのマーケティングは今の時勢的にとても相性が良いはずです。

個々のインフルエンサーブランドごとに売れる量は違いますが、総体としてみればしっかり売れるし伸びる。アパレルに倣ってブランドの組織化を進めるNFTやweb3のプロジェクトは来年以降徐々に増えてくるんじゃないかと思います。

「ストーリーで買う人はいない」。でもインフルエンサーがファンとの間に育んだ共感性そのものがストーリーになり、きちんと商品に表現されていることが大事。肝に銘じます。

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