『「装着して戦場に出たら殺される」米軍からマイクロソフトに突き付けられたMRゴーグルの厳しい評価で開発が加速』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.16
■マイクロソフト巨額受注のMRゴーグル「装着して戦場に出たら殺される」米軍“実戦デモ”報告書、驚きの中身
現実世界に情報を重ねて表示できる、よくSFアニメなどで出てくる表現ができるようになるのがMRゴーグルです。
MR自体の説明はこちらを参照ください。
先進技術は軍事技術から、はよくある話で、MR技術も軍事技術が先行して開発されています。マイクロソフトが220億ドルもの巨額受注をした「軍事用ホロレンズ」が実戦で使えないという評価が出ているようです。
これはある意味チャンス、短期間で技術が一気に進歩する可能性があるかもしれません。
■米軍兵士の80%以上が頭痛や吐き気を覚えたことが判明
ホロレンズを実戦投入する時の課題が大きく2つに分けて挙げられています。
ひとつ目の課題:いわゆる「酔い」の問題
Quest2などで激しい動きのあるゲームをやると起きる「VR酔い」という言葉はよく聞きます。個人差はあるものの多くの人で起きるとされています。
MRゴーグルは基本的に外界の様子は肉眼で直接見えていて、そこに文字やグラフィックなどを重ね合わせて表示しています。それでも「酔い」は発生するようです。
軍の運用上、夜間に赤外線カメラの映像をパススルーでモニター表示するケースや、肉眼では見えない遠くの様子をズームアップして表示するというように肉眼ではなくモニターに映された映像を見るシーンも多いのだろうと想像します。軍用だとMRとはいえむしろそういう使い方がメインなのかもしれません。であれば酔いやすいはずです。
軍人が訓練や慣れでカバーできないレベルで酔うということですから、デバイスの改善や表示上の工夫で対処することになります。
ふたつ目の課題:ハードウェア性能の課題
視野角の狭さや表示速度の遅さは文字通り命取りになるはずです。他にも戦地で長時間運用するための耐久性やバッテリー持ちなども重要な要件になるはずです。
違う視点で、外側から見た時に的に察知される光が漏れない、電波が漏れない、外部からの妨害電波によるジャミングの影響を受けない、などの要件もあるでしょう。
電波妨害といえば通信電波を遮断されると使い物にならなくなる可能性があります。スタンドアロンで一定程度使える設計ではあると思いますが、やはり外部データと通信で連携することは必要なはず。
そこで、光を使って通信をする「Li-Fi」という技術が開発されつつあります。
こういった技術も軍事先行で開発されて民生用に降りてくるのだろうと思いますし、軍事用ホロレンズの運用でも使われているんじゃないかなと思います。
「酔い」の問題と「ハードウェア性能」の問題、いずれも戦地では生死にかかわる問題です。
■巨額受注してしまったからこそ、改善が加速する
軍事用ホロレンズの受注額は2兆円とも3兆円ともいわれるため、マイクロソフトとしても絶対に改善しなければなりません。
報道で漏れ伝わるくらいですから、実際に米軍や米議会とマイクロソフトとの改善のためのやり取りはもっと大変なことになっているのだろうと思います。3兆円かけて改善できませんでしたとなるとマイクロソフトに対する市場の評価も大きく下がるでしょう。
報道リークで民意を使ってマイクロソフトに圧力をかけさせていると見ることもできます。
このプレッシャーによって、ホロレンズの改善は加速するはずです。
酔いの解消、視野角、明るさ、解像度、表示速度、表示や体験などUI/UXの煮詰め、バッテリー持ち、故障しづらさなどが軍用品として高められれば、その技術は民生用に転用されていくはずです。
マイクロソフトが画期的な解決策を見つければ、MetaやPico、HTCなど他のゴーグルメーカーにも解析されて広まっていくはずです。
戦争を肯定する意図は全くありませんが、軍事先行で技術開発され民生に降りてくることは事実。今回のマイクロソフトに突き付けられた「装着して戦場に出たら殺される」という評価によってMR技術の改善が大きく加速されるもことを期待しています。