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『ZONe ENERGYの「受験生しか見えない」広告の秀逸さ。web3時代にサイネージ広告は再価値化の予感』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.12.17

■「受験生しか見えない」広告なぜ出した? 担当者が伝えたかったメッセージとは

「ZONe ENERGY」(ゾーンエナジー)のサイネージ広告が天才すぎます。

エナジードリンクをPRするのに選んだターゲットは「受験生」。
その受験生だけに届くサイネージ広告を発明しました。

駅ナカにズラッと並んだデジタルサイネージにはゾーンエナジーのイメージカラーである紫と青の雲のような模様だけが映し出されています。画面下部には一応「ZONe ENERGY」のロゴと商品写真はあるものの、画面上部の色柄模様の部分は広告メッセージが何も書かれていないように見えます。

その紫青なサイネージに「受験生」しか持ち歩いていなさそうな「赤フィルム」をかざして見ると、受験生を応援するメッセージが浮かび上がる、という仕掛けです。

仕組みを知ってしまえば何てことはないと考えるかもしれませんが、とても練られた広告だと感動しました。

エナジードリンクと受験生との相性の良さ、
受験生だけが持ち歩くだろう赤フィルムに目を付けたこと、
広告なのに何も書かれていないという異様さがSNSで拡散されやすいこと、
紫青の雲模様のビジュアルだけでも今どき感がある彩度の色使い、
SNSで知って赤フィルムを持って広告を見に行きたくなること、
実際に見に行った人が更にSNSに拡散すること、
赤フィルムで読めるようになるメッセージのポジティブさが受験生を実際に励ますだろうこと、
励ましのメッセージ寄稿者に受験生世代と相性の良いインフルエンサーを起用していること、
様々あるエナジードリンクの中でも紫青のビジュアルが印象に残り、応援メッセージの好印象と掛け合わせて「ZONe」を選ぶ・紫青を忘れない効果も持たせられる、

細部まで行き渡ったマーケティング上の仕掛け、考え抜かれています。


■ターゲティング広告が難しくなっている中での好手法

届けたい相手に届きやすい方法で広告するターゲティング広告はWeb2時代で最も成功したビジネスモデルです。

ターゲティング広告は興味があるものだけが届くので不快感が少なく、好意的なものをコンテンツとして見てもらえるので購買につながりやすい、という説明がされてきましたが、ターゲティング広告が溢れかえる中で不快に感じるものも増えてきました。

日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の調査によると

「不快に感じるインターネット広告」について聞くと、おおむね「不安・不快に感じるターゲティング広告の手法」「不適切/不快な広告内容」「不適切な広告フォーマット(表示のされ方)」の3つに分類された。

特に広告フォーマットでは「閉じるボタンがわかりにくい広告」「意図しないクリックを誘う広告」「画面の大きな部分を占める広告」といった、ユーザーのコンテンツ利用を妨げるものが「実際に見たもの」「実際に見て、不快に感じたもの」のいずれでも上位を形成した。

1.どこで個人情報を手に入れたのかがわからない不安
2.広告の内容が不快
3.強制的な割込みなどで邪魔をするような見せ方

この3点を不快だと感じることが多いという集計がされています。

今回のゾーンエナジーのサイネージ広告はこれら不快な要素を持たないという点でも良質です。

1.赤フィルムを持っているかどうかで受験生に届かせており、個人情報を特定して見せているわけではない。
2.広告の内容が受験生を応援するポジティブなメッセージ。赤フィルムを使わない状態でも紫青のビジュアルのみで妙な情報圧を感じにくい。
3.サイネージ広告はスルーしてもよく、興味を持った人だけが足を止めて赤フィルムをかざす。

すべての不快要素を回避していることがわかります。

好意的に届き、SNSで拡散されやすく、現地に行く・赤フィルムをかざすなど身体性を伴う印象に残りやすい広告設計は見事です。


■サイネージ広告はweb3で復権する?

サイネージ広告はログデータが明示的に残らず個人ごとに出し分けられるわけでもないという点でWeb2の高効率広告から置いて行かれた感がなくはないのですが、web3時代ではAR技術とトークンEarnを組み合わせて復権するかもしれません。

特に今回のようにわざわざ現地に行きたくなる広告は、行って拡散に協力した人にトークンやPOAP NFTを付与するなど、効果測定とインセンティブを組み合わせた手法が発明されることで、「不快なWeb2的ターゲティング広告」よりずっと効果的・好意的な広告手法になる可能性がありそうです。

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