
『ソニー・ホンダEV「AFEELA」発表。2030年ARプラットフォーム化が見えてきた』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.8
■ソニー・ホンダがEV「AFEELA」 25年受注開始
ソニーグループは4日、ホンダとの共同出資会社を通じて2025年に受注を始める電気自動車(EV)のブランド名を「AFEELA(アフィーラ)」にすると発表した。まずハッチバック型のEVを26年春に米国で発売する。最初のEVの開発では米クアルコムと組み、車内で楽しむゲームなどのエンタメは米ゲーム大手のエピックゲームズと協業する。
現在開催中のCESで、ソニー・ホンダの合弁会社から新EV「AFEELA」が発表されました。上記のニュースには1分にまとめられた発表時の動画が掲載されています。
昨年「VISION-S」として発表された時よりもデザインは洗練されていますが、昨年時点では本当にソニーがクルマの販売に乗り出すとは正直思っていませんでした。
2025年前半に受注開始、納車は2026年春に北米で、日本は2026年後半を予定しているとのこと。
最近は新車の発注から納車までの期間が長期化していますので、3年後に納車開始といってもトヨタのランドクルーザーより早く手元に届くかもしれません:-p
■自動車はAR環境に最適
2025年の発売を目指すEVに拡張現実(AR)を活用することを検討。フロントガラスに経路案内や広告などを表示できる技術の開発を進めているという。
水野氏は「将来的に(目的地に向けて)矢印を出したり、スーパーの横を通るとセール案内を出したりする技術を開発中だ」と述べた。ARは現実の景色にCG(コンピューターグラフィックス)を重ね合わせる技術で、安全規制などを踏まえ、実用化の可能性を探る考えだ。
この新型EVではARを活用することを検討しているそう。
自動車×ARは非常に相性がよいはずです。
・車内を360度「ARを投影できるガラス」で覆われている。
・標識、表示、歩行者、建物、他の車両など、運転中に人間が処理しなければならない情報が多く、運転支援のニーズが高い。
・運転者は昔からカーナビなど情報支援に慣れている。
適切にAR技術で表示することで安全性が非常に高まります。
他の車両や歩行者などの接近を「表示」で警告したり、たとえば「右直事故」のように典型的な事故パターンに当てはまることを察知した場合には「右直事故に注意」と運転者に伝えるだけでも事故防止につながります。
フロントガラスに表示するだけでなくサイドウィンドウ・リアウィンドウにもAR表示することができれば車体の死角が減り事故防止にもつながります。
Aピラーと呼ばれるフロントウィンドウとサイドウィンドウの間にある支柱が運転中の大きな死角になりますが、この部分にも映像を投影することで死角をなくそうという試みは以前から行われてきました。
加えてAR技術を使えば、歩行者や自転車が接近していることを警告する表示を出して積極的に注意を促すこともできます。
さらにM2M(Machine to Machine)通信が広まることで「壁の向こう側に車がいる」ことも表示可能になります。見通しの悪い交差点での出会い頭での衝突事故を未然に防げるほか、スマホとのM2M通信ができれば歩行者や自転車の飛び出しも防げるようになります。
衝突回避のために急ブレーキをかけた際、後続車から追突される危険性もM2M通信によって後続車が自動ブレーキをかけることで回避しやすくなります。突然ブレーキだけがかかると後続車の乗員は鞭打ち症になる危険性がありますが、AR表示で前方車両が急ブレーキをかけたことを伝えればわずかな時間でも身構えることができます。
これら安全性を高める技術としてAR+M2Mは自動車ととても相性がよいのですが、エンターテインメントとして昇華させることにも期待です。
グループ会社としてはPlayStation5も有していますしエピックゲームスとのコラボも発表されていますので、上記にある「将来的に(目的地に向けて)矢印を出したり、スーパーの横を通るとセール案内を出したりする」という、文字で書くと実用的っぽく伝わるARの使い方もきっとエンターテインメント色が満載の表現になるのではないでしょうか。
■自動車の車内がARプラットフォームになる未来
ソニー・ホンダの「AFEELA」を皮切りにAR技術が自動車にどんどん普及したら、自動車環境に対してサードパーティーがさまざまなARアプリを供給する流れが起きるはずです。
自動車としての安全基準を審査する団体や技術的な標準化規格もできるでしょうし、ファミ通のゲームのクロスレビューのように自動車用ARアプリを紹介・評価・採点するメディアも登場するでしょう。
Google Map上でお店の紹介とクチコミ投稿をすることが車内ARと一体化することで広告化するでしょうし、「MEO(マップエンジン最適化)」を支援するデジタル広告会社も増えるはず。
自動車向けに開発されたARアプリの一部は歩行者や自転車でも使えるはずです。
移動手段としての自動車がインフォテイメントプラットフォームになる未来はもうすぐです。
自動車は世界全体で年間約8000万台の新車が生産される市場です。3~4年後にAR対応車の初号機が出たとして、そこから5年も経てばかなりの台数のAR対応車が街中を走っている状態になると見込まれます。車両全体の1割がAR対応車になるだけでも5年間で4000万台にもなります。
間もなく自動車向けARアプリが一大市場化するのは間違いないでしょう。その皮切りは2026年、普及期は2030年と具体的な時期が見えてきました。あと数年後の確実に来るARの未来に今から何を備えておきましょうか。