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『QRコード決済「敢えてアプリ起動させる必要性」からクリプト決済の普及課題を見る』のマーケティング5箇条に学ぶ』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.11.14

■FeliCaに明日はあるのか

2022年11月8日、個人的には「楽天EdyとiD、Suicaに未来はないんだな」とFeliCaに対して感傷に浸る一日であった。

の書き出しで始まるケータイジャーナリスト、石川温さんの記事を読んで、暗号資産決済も利便性の追求だけでは解決できない課題があるのだなぁと感じた次第をお伝えします。


■キャッシュレス決済の分類

数年前からはPayPayを筆頭として、QRコード決済が増えてきた。街中のお店としてはFeliCaを読み取る機器が不要で、QRコードを印刷した紙やスマホで決済できるとあって、QRコード決済が一気に普及してきたのだった。それにより、楽天Edyだけでなく、iDも一気に利用頻度が下がっていた。

ユーザーから見た利便性で分類すると、

クレジットカード:
・使える場所が多い=ホテルや飲食店などで対応店が多く大型店では使えないところがほとんどない。
・財布から取り出すのが面倒。スマホは常に取り出せる。
個人の感想→キャッシュレス化、スマホ払いの普及によって「財布」自体の需要が低下した結果、クレカも頻回な日常払いには不便なものの位置づけに。

Suica、Edyなどタッチ支払い:
・プラスチックカードにチャージするのは不便。チャージできる場所に行き、財布に入ったカードを取り出し、現金でチャージする3連コンボの不便さ。
・アプリ版はいつでもスマホでチャージできる。3連コンボのうち2つを解消したが、チャージすること自体が面倒。
・Suicaに関してはタッチするだけでアプリ立ち上げ不要で決済できる便利さが素晴らしく、他の不便さをかなり消し去る。
個人の感想→アプリ起動不要+スマホタッチだけで決済完了は現状最強のUX。これにチャージ不要の後からクレカ請求になれば完璧(だと感じていた)。

PayPay、楽天Pay、d払いなどQRコード決済:
・財布不要、スマホだけで決済できるのは便利。
・チャージ方法がクレカ連動ならマシだが、銀行口座からの払い込みは面倒すぎる。
・お店によって使えるQRコード決済の種類に偏りがある。使えるかどうかを心配しなければならないことが超ストレス。
・支払い時にQRコードを店側に読み込んでもらうのか、自分で読み込んで金額入力するのかが違うのも面倒。金額入力~支払方法選択も面倒。
個人の感想→漠然と「QRコード決済対応のお店が増えた」とは言えない対応銘柄の偏りと、アプリ起動~QRスキャン~金額入力の一連の手間が面倒すぎる(と今でも感じている)。

つまり、スマホでチャージなし・アプリ起動なしで使えるタッチ支払いが最強、QRコードは不便な点が多いのでそれほど流行らないんじゃないか、と思っていました。あくまでも利用者目線では。


■事業者目線だと違う判断基準

数年前からはPayPayを筆頭として、QRコード決済が増えてきた。街中のお店としてはFeliCaを読み取る機器が不要で、QRコードを印刷した紙やスマホで決済できるとあって、QRコード決済が一気に普及してきたのだった。

お店にとって設備不要は非常に大きなファクターなのはよくわかります。手数料やキャンペーンによって「どのQRコード決済が使えるか」がマチマチなのはユーザーとしては困るポイントですが、お店からすると払ってくれれば何でもよく、設備投資と手数料が最も安いものを導入するだけ。

そういう意味ではQRコード決済は小規模店舗まで網羅する可能性が最も高い決済方法だと言えます。

また、決済事業者側もユーザーとは見え方が異なります。今回一番注目したのはココです。

 一方で、QRコード決済である「d払い」の場合、支払いのたびにアプリを起動する。その際、ユーザーがアプリに表示されたキャンペーン情報などを目にすることが多い。結果として、アプリ付与アップなどのお得を目当てにキャンペーンに参加して企業とつながる機会が増える。

 d払いアプリではdポイントのバーコードも表示されるため、ポイントサービスと紐付き、ユーザーのマーケティング情報を収集、さらに次の購買に繋げるといったことも可能だ。

ユーザーにとってのUX最適化、店舗にとっての導入のしやすさによる対応店舗の充実、この2点でサービス普及が決まると思っていましたが、決済事業者のキャンペーン訴求やマーケティングデータの取りやすさが実は一番大きなファクターになりそうです。

なぜなら、決済事業者にとって都合が悪くなれば決済サービス自体をやめてしまう可能性があるからです。

今回の石川温さんの記事で「Edy」や「iD」を続けるのか・テコ入れするつもりがあるのかを質問してゼロ回答なのが物語っています。

ユーザーが不便を感じても、お店のオペレーションが煩雑になっても、ポイント付与のためのバーコードスキャン+QRコード決済が決済事業者にとって最も有利で今後も普及させたいものだということのようです。


■仮想通貨払いはこれら事情をどれも解消できていない

仮想通貨・暗号資産で支払いができる日が来ることを夢見ているクリプト民は多数います。しかし実際は難しい。

法的な問題、価値変動の大きさ、高すぎる要求リテラシー、ウォレットアプリの扱いづらさ、通貨の多さ、ハッキングリスク、事故発生時の補償のなさ、そして昨今のFTX事件・LUNA事件などの不安。

これらだけでもクリプト払いの実現の困難さは想像に難くありません。ユーザーが増えない、対応店舗が増えない、の2方面への大きな課題が山積しています。

もしクリプト払いが実現される場合、先日ご紹介した/Slash Web3 Paymentのように複数の暗号資産を自由に選べるUI/UXか、ETHしか使えない単一トークン払いのどちらがいいかといえば、複数の暗号資産のどれでも使える方がユーザーにとっては良いでしょう。しかしOpenSeaなどオンライン決済ですらETHチェーンNFTならETH払い、など単一支払いに留まっています。

このことも、ユーザーが増えない、対応店舗が増えない状況を生んでいると思います。利便性の高い支払い方法を普及させようとすると、その事業者は複数の暗号資産をその場で両替できる暗号資産交換業免許が必要なのが大きなハードルです。


■非合理的なおおらかさが少し必要かも

さらに加えて、ユーザーに面倒をかけても敢えてアプリを起動させてキャンペーンを目に触れさせた方が運営サイドには都合が良いことも今回わかりました。

利便性だけを追求すると「無駄な買い物」が減って合理化されます。これはクリプト思想とも合致します。

アプリで見せるキャンペーン類も、ユーザーや店舗全員で少しずつ金銭負担して実現している構造です。決済運営会社の中抜きをクリプト思想だと嫌う傾向があり、こういう非合理的な部分をなくした方がいい、なくせるのは非中央集権的な運営ができるクリプトの大きな特長だ、と考えます。

しかし、経済は合理化されると流動性が下がります。無駄遣いや衝動買い、贅沢品によって経済規模が大きくなっているといっても過言ではありません。

/Slashアプリ上でキャンペーン表示できればいいのかもしれませんし、キャンペーンを企画し営業する部隊があれば実現できると思いますが、そのぶん手数料が上がるはずで、クリプト民はそれを好まなさそうです。

まずはクリプト全体の安定化と安全性の向上が普及には必要ですが、その後に決済手段として取り入れられる時、すべてを合理的に組みすぎると実はよくないのかもしれません。今は思想性が強く出る傾向があるクリプト界隈ですが、マスアダプションする際はもう少しおおらかさが必要なのだろうと思います。

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