『“食べる”で稼ぐ Web3 x クチコミ「EatnSmile」』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.4.19
■世界初“食べる”で稼ぐ Web3 x 口コミの新サービス『EatnSmile (イートアンドスマイル)』アプリのベータ版が世界同時リリース。
食べログやぐるなびなど飲食店のレビューサービスをweb3的にしたサービスが「EatnSmile」です。
Web3的アプローチは面白いと思うのですが、先に懸念点を指摘しておきます。
インフルエンサーマーケティングに早速乗り出していますが、その際に使っているキャッチコピーが「稼げる食べログ!?」としています。
「稼げる」という表現は特定商取引法や消費者契約法で「必ず儲かる」ように誤認させる恐れがあると指摘されかねないため、誤認されないように十分気を付けなければならないのですが、悪気なくかなり気軽に使っている印象があり危うさを感じます。
また「食べログ」は他社(株式会社カカクコム)の運営するサービスであり登録商標です。何らかの関係があると誤認させかねず、また他社サービスの知名度や信頼性を勝手に借りたと見なされると商標法違反や不正競争防止法違反で訴えられかねません。
あくまでも第三者のインフルエンサーが勝手に使った言葉遣い、であれば回避できるかもしれませんが、運営会社の代表が出演してしまっていますので言い逃れできません。コンプライアンス意識はもっと高めた方がよいと率直に思います。
レビュワーの投稿に報酬を与える
これまでの飲食店レビューサービスでは、食後のレビュー投稿をしても投稿者には何もインセンティブが発生しませんでした。また飲食店側はレビューサービス運営元に広告出稿しますが、その広告収益はすべてレビューサービス運営元が独占していました。
レビューサービスが成立するのはレビュワーの投稿あってこそで、そのレビュワーに対して報酬がないことはイビツだったとも言えます。
ユーザーの投稿によって成立しているWebサービスはたくさんあります。飲食店・美容院・ECサイトなどなどさまざまなシーンでレビュー投稿されていますし、SNSは投稿そのものがコンテンツです。しかし投稿行為は基本、無報酬です。
報酬でレビューが歪む?むしろWeb3で防げる。
Web3によるクチコミ労働の収益化というモデルは、レビュワー側の需要はありそうに見えます。しかしここに報酬があるとレビューが歪むという懸念があります。
高評価を投稿することを条件に金銭を提供する、という店舗が数多くいます。
私もAmazonで買ったいくつかの商品にこのオファーが入っていたことがありますが、最も悪質だったのはAmazonではなくホームクリーニングサービスの比較サイトを利用した際のことです。
訪問してきたクリーニング作業員が「星5の満点評価をしてくれないと会社でペナルティを食らう。今ここで見ている前で星5をつけてほしい。その様子も写真に撮らせてほしい。」と言われたことです。
自宅に訪問されているため住所も当然バレています。「高評価」を拒否した結果、会社での評価が下がったことを逆恨みされて後日報復されることも心配しました。
幸いクリーニング作業自体は満足いくものだったので星5をつけることは吝かではなかったのですが、高評価の強要を依頼されたことで星1がホンネです。
こんなやり方で高評価を集めていることがわかると、そのクリーニング業者自体はもちろん比較サイト自体の信頼が下がります。この件があってから、ホームクリーニングサービスの比較サイトは二度と利用しないと決めました。
こういった高評価の強要や金銭によるレビュー買収は確かに問題ですが、Web3のto Earnの仕組み=レビュワーに報酬を渡す方法があることを活かして「この期間中にレビューした人のEarn報酬2倍!」という来店キャンペーンを打つこと自体はやりやすくなります。
要は「高評価」を強要されなければよいわけで、報酬で人を動かしつつも買収ではないカタチが取りやすくなれば、「あそこはレビューを金で買っている」という悪評が出るリスクを負わなくても来客数を増やせるというのはWeb3化に期待が持てるポイントだと思います。
レビューハラスメント問題の解決にも?
レビューで悪評を書き込まれると商売に直接的なダメージを食らうことを笠に着た「レビュハラ」も起きています。
「EatnSmile」ではレビュワーはEarnを目的にしますので、Earn報酬が減る・なくなることを恐れます。レビューを材料に不当な要求を防止するために、店舗側もレビュワーを評価するような仕組みがあればバランスが取れるかもしれません。
Earn原資は広告費、メディアサイズが課題
「EatnSmile」ではレビュワーがEarnする原資は広告費のようです。
STEPNをはじめこれまでのto EarnゲームはNFTをユーザーが購入した費用がEarn原資でした。そのため新規ユーザーの増加が途絶えると経済崩壊する「ポンジスキーム」だったことが問題でした。
NFT購入不要でスタートできることは非常に重要で、現在のスマホゲームの多くがFree to Play、無料で始められるのが当たり前です。始めた後に課金要素や広告などで運営は収益を上げるモデルとすることでユーザーの裾野人口を増やすことができます。
特に「EatnSmile」のようなメディア型サービスはユーザー数が重要です。あとからユーザーが課金する要素もありますが、レビュー数、店舗数の方が多くないと広告媒体として成立しません。
先行者として食べログ・ぐるなび・ホットペッパーなど人力営業が強力な先行メディアが多数あるため、店舗から見ると広告費をどこに投じるか、いくら投じるかをシビアに見るはずです。
広告費がEarn原資というのは従来型GameFiのポンジスキーム問題を解消するのに一見良さそうですが、Earnできることをユーザー集めの軸に据えている以上、実際に広告費を集められるかどうかが成否を分けます。
他の先行グルメサービスたちはレビュワーに報酬を与えなくてもレビュー数を十分集められていることもあり、得られた広告収益をユーザーに案分するぶん運営の取り分が減ることも課題です。
コンテンツを供給しているレビュワーが無報酬で運営だけが儲かるモデルにWeb3で一石を投じることは意義深いと思いますが、コアは「限りある店舗広告費の奪い合い」ですから、Earnを動機付けに逆転するのは結構ハードなはず。「Web3の難しさ」もユーザーを限定してしまいメディアサイズを小さくしてしまう要因になります。
このあたりの課題をクリアできるのかどうか、Web3サイドとして応援はしつつ注目していきたいと思います。
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