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『NFTのレンタルが可能に。「ERC-4907」承認』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.15

■NFTレンタル規格「ERC-4907」

NFTにレンタル機能をもたせるイーサリアム改善案「EIP-4907」が、トークン規格「ERC-4907」として承認されたことが分かった。この規格に対応したweb3ゲームでは、NFT所有者が自身のNFTを他のゲームユーザーに一定期間貸し出せ、また自動で返却させることもできるようになる。

今回は公式レンタル規格である「ERC-4907」の可能性を考えてみたいと思います。


■NFTレンタルが想定している本来の使い方

「ERC-4907」はこの規格を提案・開発したNFTレンタルマーケットプレイスのDoubleProtocolのようなレンタルビジネスが念頭にあります。

例えば会員権機能を持ったパスポートNFTを一時的に借りてイベントやコミュニティに参加する場合はレンタル需要がありそうです。高額なNFTを1回のイベント参加のために買うのもハードルが高いですし、NFT所有者もしばらくイベントに参加できず活用できない期間があれば貸し出して収益化したいニーズもあると思います。

Crypto Barの会員権NFTを買ったんだけどNFT.NYCでしばらく日本を離れるから使ってください、と呼び掛けていた方もいました。こういう時に市場から借り手を広く募れると貸し手も借り手もBarも「三方由し」です。


■スカラーシップ手続きのトラストレス化

NFTのレンタルといえば他にもブロックチェーンゲームのスカラーシップが思いつきます。

Axie Infintyの場合の具体的な手順が詳しく書かれています。

(1)スカラーアカウント用メールアドレス作成
(2)Roninウォレットのサブアカウント作成
(3)スカラーシップ用のアクシーをセットアップ
(4)スカラーを募集・スカウトする
(5)スカラーと契約する
(6)スカラーシップスタート!

Axieのスカラーシップの手続きには、Web2の中央集権的な機能実装に依存していたり、アカウントにあたるメールアドレスのエイリアスを作って共有するというアナログな部分があります。

例えばNFTの「借りパク」を防ぐために「身分証明書を持った写真を送ってもらう」や「契約書を取り交わす」といった手続きが発生するのはWeb3のトラストレスの思想から大きくかけ離れています。

「ERC-721(NFT)」にアドレスを付与できる役割(user)と、その役割を自動的に無効化する時間(expires:期限)を追加したという。userによりNFTに使用許可と時間制限を持たせ、expiresでuserを自動失効させることによりNFTのレンタル機能を実現したようだ。

書き込むためのインターフェースや機能はゲーム運営側で実装する必要がありますが、NFT側に期限を書き込めれば身分証明書の送付などという手続きから安心して解放されます。

それに身分証明書を送ってもらっても、契約書を交わしても、グローバルな個人間取引では詐欺事件が発生したら事実上泣き寝入りになる可能性が高いはずです。

運営から見てもユーザー間で無用な個人情報がやり取りされるのは好ましくありません。個人間で勝手にやられたことでも漏洩事件が起きればゲームブランドのイメージを毀損しかねません。


■ブロックチェーンゲームの「NFT」はオフチェーンなことが多い

「ERC-4907」規格は当然ですがNFTがオンチェーンである必要があります。

しかしブロックチェーンゲームの場合、ゲームプレイ中の「NFT」がオフチェーンであることが多いのが現状です。

オフチェーンなユーザーDBを運営が管理していますので、「NFT」の貸し出し機能を公式に実装してしまえば「ERC-4907」のようにオンチェーンに貸し出し記録を書き込む必要なくユーザー間のトラストレス貸し借りは実現できます。

運営が管理している中央集権型ではありますが、ブロックチェーンゲームの「NFT」は今のところ他のゲームと互換性や相互運用性がない場合がほとんどですので、パブリックチェーンに刻んでも運営が機能提供しても解決される課題の範囲は「ユーザー間の無用な個人情報伝達をなくし、個人の信用で貸し借りをする必要がなくなる」という点に尽きます。

「ERC-4907」は技術的には面白いですし、Web3文脈自体が喜ばれる今なら敢えて導入すると話題性はありそうです。開発の手間が同じくらいでオンチェーン化することのゲーム性への悪影響(※)がなければ「ERC-4907でトラストレスなNFTレンタル機能を実現」というキャッチコピーが打てるのはちょっと魅力的に感じます。

(※)ゲームのように頻繁にトランザクションが発生するタイプのユースケースでは待ち時間とガス代が最大の悪影響ポイントです。どんなに高速なチェーンを使ったとしてもゲーム側が設計上の配慮を相当やらない限り快適なゲーム体験は実現できません。


■規格化を契機に「NFTレンタル」自体が流行るかも

「ERC-4907」の規格化を契機に、これから「NFTレンタル」が使われるシーン自体が増えるかもしれません。

特にCrypto Barのような場所ではNFTオーナーが誰かを招待するケースも多いため、ホストとして会員証NFTを購入・所有したうえでたくさんの知り合いに「貸して」体験してもらうというユースケースも有り得ます。

1枚の会員権を使い回されるとBarの売上が減る、はたぶん心配いりません。主な収益源は来店後に消費されるお酒の売上なので、来店回数・人数が多い方がよいはずです。界隈のインフルエンサーな人が会員証NFTの所有者でしょうから貸し出す相手も信用度の高い人を選ぶはずで、会員証が持つ一種のフィルター機能も損なわれないと思います。

オフチェーンなブロックチェーンゲームでも、世の中でNFTレンタルについての認知が拡大すれば公式にレンタル機能を実装するところが増えていく可能性もあります。

NFTレンタルが機能するためにはNFTの価格がある程度高額でなければならない(安価なら借りずに買う)ので向いている市場は限られているかもしれません。

しかし無駄に所有せずレンタルで使うのは時世的にも合っているので、今後「NFTレンタル」を目にする機会が増えNFTが広く普及するきっかけになるかもしれませんね。

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