『Epics DAOの分散型クラウドソーシングはweb3で新しい働き方を実現するか?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.23
■Epics DAOはオープンソースプロジェクトに対して$EPCTトークンエアドロップを行います
ちょっと長めに引用しましたが、非常に重要な取り組みです。
開発者有志が無償で開発・公開しているオープンソースのソフトウェア、その依存率が78%に上る一方で、開発者に金銭的な報酬が廻らず持続可能性が心配されます。
Epicsというオープンソースソフトウェア開発の分散型クラ ウドソーシングプラットフォームを運営するEpics DAOでこのたび、独自トークン「$EPCT」を発行し開発貢献者に配布することを発表しました。
とある通り、換金性があります。
Epicsプラットフォーム上で開発されたプログラムソースはオープンソースライセンスで公開される一方、その開発者は$EPCTトークンによる報酬の支払いを受けられるようにすることで持続可能性を高めようという試みです。
■基本的な仕組みは分散型クラウドソーシング
開発者は「クエスト」と呼ばれる発注案件に参加し、開発完了したら報酬をもらえるという、通常のクラウドソーシングサービスとしてEpicを利用します。
「クエスト」発注者の方が少し変わっています。
$EPCTをUSDCで購入したあと、クエストに対してEPCTを懸賞金(案件発注額)に設定します。バウンティ型で、かかった懸賞金を開発者が奪い合います。
クエストはスマートコントラクトとして公開され、開発者がウィナーだと認証されたら自動的に$EPCTが支払われます。
発注者も$EPCTのステーキング報酬がもらえるようにしているのも特徴的です。クエスト受発注を通じて$EPCTの価値が上がると、発注者も儲かる仕組みです。
通常のクラウドソーシングサービスだと、プラットフォーム運営企業が結構な割合のマージンを設定していますが、Epics DAOはそのマージンをAPR20 %のステーキング報酬に設定してクエストが継続的に発生するようにする仕組みとしているようです。
そして$EPCSの需要が高まることでEpics運営サイドも初期のチームアロケーションを通じて報酬を得られるのだろうと思います。
■オープンソース開発に資金が巡る仕組みを構築
企業勤めの開発職の専門性を高め、発注者は世界中の優秀な開発者にオープンソース自体を修正依頼できるようにすることがEpicsの目指すものとしています。
ホワイトペーパーにEpicsの目指す方向性が示されています。
「開発者のメリット」の中で企業勤めの開発者に関する課題を以下のように設定しています。
会社員としては汎用性の高い人材が求められることで得意分野や専門性が活かされづらいという問題があると。
専門性の高いクエストを懸賞金ベースで受注することで、得意で食っていく働き方を提案しています。
ただしバウンティハンター(賞金稼ぎ)というスタイルなので、生活を安定させつつ専門性を活かすために副業としてクエスト参加をする人も多そうです。フルコミットの人に勝てるかどうかが勝負になってきます。
「依頼者のメリット」には、オープンソース自体を修正依頼できることを挙げています。
案件そのものの発注だけでなく、オープンソースライブラリ自体を自社に最適化させる発注も可能とします。
ここで修正されたソースもオープンソースライブラリとして公開されることから自社サービスの機密に触れるような修正依頼はかけづらいと思いますが、もし多くの人が同じ課題に直面しているならライブラリがブラッシュアップされること自体は非常に有益です。
Epicsプラットフォームを通じてオープンソースライブラリの開発や改善に資金が入り、そのお金で開発者が専門性を活かして食っていける世界を、web3らしい仕方で実現しようとしています。
■技術分野以外にも広くweb3的働き方が広まるか
スマートコントラクトによる報奨金の自動決済、非中央集権的なプラットフォーム運営、ステーキング分配によるトークノミクス、独自トークンによる報奨金の支払い、トークン価値向上を発注者・開発者・DAO運営の皆で目指せる座組など、株式会社では実現し得なかっただろう工夫がたくさん盛り込まれています。
このような仕組みが今回のような開発技術分野だけでなくサービス職種など幅広く活用されるようになるのがweb3時代です。まだ実験段階な部分は多くありますが、ブラッシュアップに従って誰でも使いやすい仕組みになれば、働き方の柔軟性が増したり社会課題の改善スピードが上がるなどの効果が期待されます。