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『タッチパネル券売機の課題は「ヒューマンレス」。対話型AIで解決できるか?』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.3.12

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■「店員に声をかけられたら負けです」“セルフレジ・タッチパネル恐怖症”の中高年たちの本音と涙ぐましい努力

 スーパーなどの小売店、飲食店での「セルフレジ精算」や「タッチパネル注文」は今や当たり前の時代。だが、操作に不慣れな中高年利用者からは「買い物や外食も気軽にできない時代になった」とのぼやき節が止まらない。

昨日、手短にランチを済まそうとエキナカの蕎麦屋に立ち寄ったのですが、そこに注文にまごついている80代と思しき女性がいました。

そのエキナカ蕎麦屋はタッチパネル券売機を採用していました。その券売機の使い方に戸惑っているようなのです。

私とその高齢女性の間に数名の男性が並んでいました。忙しい人がサクッと手早く食べたい人が利用するエキナカ蕎麦屋で、自分の後ろに券売機行列を背負うのはかなりのプレッシャーです。

何度も注文に失敗し、最終的には諦めて立ち去ってしまいました。


高齢女性がタッチパネル券売機でつまづいたポイント

その女性は、400円の温かいかけそばを現金で食べたかったようです。

女性の次のお客さんは70代くらいの男性でした。とても親切な方で、イライラもせずにその女性に使い方を教えています。しかし何度も注文に失敗してお金が戻ってきてしまいます。

正しい手順はこうです。

タッチパネルで「温かいかけそば」を押し、他に追加注文がなければ「発券」ボタンを押し、現金かSuicaの支払い方法から「現金」を選び、画面に表示された「400円」を現金投入口から入れると、食券が出てくる。

最初の商品を選ぶところで目的の商品を探しづらいこと以外は、画面の指示に従って操作していけばいいようには作られています。

しかしこの女性は、操作方法を丁寧に教えようとしている70代男性の話をよそに、最初にお金を入れてしまいます。商品の値段がわからないからか100円玉を1枚だけ入れていました。

この券売機はお金を入れると内部でカウントダウンが始まり、一定時間内に支払い終わらないとタイムアウトして、全額返金されて画面が強制的にトップに戻ってしまう仕様のようです。

先にお金を入れちゃいかん、と70代男性が止めて、まず「かけそば」を選ぶことには成功しました。しかし次の瞬間には100円玉を入れてしまいます。

画面はまだ「他に注文はありますか?」とメニューを開いている状態ですが、券売機の内部でカウントダウンが始まってしまいます。

「発券」ボタンが画面右下に出て点滅していますが、次の100円玉を探しています。そうこうしているうちにタイムアウトしてトップに戻ります。

自動販売機や自動券売機は「先にお金を入れる」と思い込んでいることがこの女性のつまづきポイントでした。


昔の券売機は先にお金を入れるものだった

こういうかたちの、物理的な押しボタンが並んでいる券売機は先にお金を入れるものでした。

その女性はSuicaなどキャッシュレス支払いに対応することもたぶん難しかったと思いますが、券売機がタッチパネルになり、お金を入れる順番が変わるといった変化に対応することも難しいようです。


キャッシュレスより無人化がつらい

駅で切符を買うのもタッチパネルです。エキナカの蕎麦屋にいたので切符は買えたということですが、切符の自動発券機の近くには駅員が待機していますので、訊けばなんとかなります。

しかし先ほどのエキナカの蕎麦屋や最近のファミレスにもタッチパネル注文端末が普及し、少人数化・無人化が進んできています。

ケータイショップも減ってきて、キャッシュレス支払いの種類や手順を教わる場所と機会も激減している中、独居で近隣との付き合いもなくなった高齢者がDX的なアップデートが困難であることは想像に難くありません。

言うなれば、歳をとった時に急に文化の違う外国に移住したような状態です。公式には誰も何も教えてくれず、周りに知り合いもいない。言葉は通じるものの、自ら積極的に聞かないと教えてもらえない。

キャッシュレスやタッチパネルへの変化よりも、日々アップデート学習をサポートしてくれる人がおらず、券売機を目の前にしてわからない時に尋ねやすい人がどんどんいなくなっている無人化、「ヒューマンレス」の流れのほうがつらいのではないでしょうか。


困り察知&対話型AIで対応できないか

無人券売機は経費節減と人員不足を背景に普及しています。この流れは止められません。

物理ボタンをなくし全面液晶のタッチパネル券売機になったのですから、ボタンを並べる以外の表現ができる点を活かして、券売機が店員のように振舞えれば、今回のように注文できず困る高齢者が減らせるのではないでしょうか。

今回のケースでは、注文に失敗していることを検知して、「何かお困りですか?」と店員のように尋ねてサポートを申し出るのはどうでしょうか。

画面を見ずにお金を先に入れようとするのは、券売機がヒトっぽくないからとういのも一因でしょうから、こういう時にこそアバターの出番です。

ローソンのアバター店員のように、実際に向こう側に人間のスタッフをリモート配置するのも解決策のひとつですが、人員削減しコストを下げることが目的でもあるので、対話型AIで代替できる方が経営ニーズとしては高いはずです。

今回の蕎麦屋の場合、困っているポイントを伺うのではなく、手順通りの操作をしてもらうように対話で促していくのがよいと思います。アバターが声をかけ、まず対話に持ち込みます。そしてアバターが指示する順番通りに操作をしてもらい、注文できるところまでリードする。

これは人型の見た目のほうがやりやすく、全面液晶になったタッチパネル端末を活かせます。

まぁアナログには注文に失敗していることを検知したら店内にいるスタッフに通知が行くでもいいのかもしれませんが、お昼時のラッシュアワーで厨房スタッフが店外に出てサポートするのは難しく、人が来ないことがむしろクレームを誘発するということを考えると、AIアバターでの対応のほうがベターなようにも思います。


学ぶ機会、サポートする仕組み

飲食や買い物にまつわるDXは、高齢化がどんどん進む日本においては学ぶ機会やサポートする仕組みが同時にないと本当に困る状況に陥るのだなぁというのをエキナカの蕎麦屋で学びました。

キャッシュレス化も含めて社会がどんどん先進化してほしいと思ってはいますが、そのためには人口ボリュームが大きい高齢者が置いてけぼりにならないための学ぶ機会やサポートする仕組みが同時にないと先進化は進みません。

エキナカという身近なところで大切なことを知ることができた、よい蕎麦屋体験でした。

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