『web3 dAppsは虫の生態系に近い?NHKスペシャル「超・進化論」』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.9
■NHKスペシャル 超・進化論(3) 「すべては微生物から始まった〜見えないスーパーパワー〜」
NHKで放送されている「超・進化論」シリーズが好きです。
昨晩は「微生物」の特集でしたが、これまでも第1回「植物」では動かず話さないと思われていた植物同士が虫の攻撃を感知して毒物を生成したり周囲に危険を知らせる物質を噴霧して「通信」すること、第2回「昆虫」では幼虫からサナギを経て成虫に変態する時のサナギの中でどのような変化が起きているのかを捉えた貴重な映像が放送されるなど、生き物の不思議をとても興味深くわかりやすく伝える良質な番組です。
植物や昆虫などの生態を見ているとweb3のヒントが詰まっているなぁと感じます。
■各々が自律分散的に好き勝手やっているだけ
生態系という地球全体のシステムが動いている中で、動物・植物・昆虫・微生物の個々は自律分散的に好き勝手に動いているだけです。
読み書きやシステムロジックの分析ができるわけではないため、ルールハッカーはいません。
刺激~検知~反応を行うだけのシンプルなリアクション機能だけで「増えるために生き残る」という唯一の目的を果たそうとします。
なのに生態系全体として調和が取れ、種族単位でも比較的永続性が高い状態をキープできています。中長期的には絶滅したりもしますし、有利・不利の差は生まれもしますが、システムとしてはかなりエレガントです。
女王アリをトップにし働きアリが従属しているように見えるアリシステムも、女王アリが指示命令をしているわけではありません。個々が生き残るために個々の役割を果たしているだけで女王アリも生存戦略の一員にすぎません。
■ユーザーもプログラムの一部と見なすのがweb3発想
web3 dAppsの1タイトルをアリ族という自分の種族の中の1ファミリーに例えて考えるなら、個々のユーザーが自分にとって最も心地よい・有利な・儲かる、などの行動原理に従って活動している「つもり」が、ファミリー全体のシステムを駆動させている状態にあたります。
アリは遺伝子にプログラミングされているのでしょうし、web3 dAppsはスマートコントラクトやアプリケーションプログラムに書かれているルールに則って行動が促されます。
上手にスマコンを含めたシステムを描くことで個々のユーザーが自律分散的に動いている状態なのにシステム全体がうまく回ることを目指すのが、プログラムをプログラム通りに動かすことを前提としているWeb2以前のアプリケーションとの発想の違いのように感じます。
つまりユーザーもシステムの一部でありユーザーの行動もプログラムで想定して設計するのがweb3 dAppsだろうと。
生態系をプログラムで再現しようとしているわけですから非常に高度で難易度が高い試みです。うまく行かなければ「神」が中央集権的一撃を喰らわせてリセットするという荒業が使えませんし、アリの世界と違ってdAppsは別のアプリに逃げるというユーザー側の荒業もあります。
web3は生態系を再現するくらい難易度が高い試みです。
■行動を促すのはFinanceだけか?
GameFiなどFinance、お金儲けによってユーザーの行動を促す設計とするのがweb3だとする理解が広まってしまっていますが、「ユーザーの行動自体が生態系システムのプログラムの一部である」と捉えるならば、ユーザーが動機付けされるのはお金だけである必要はないはずです。
金銭的価値を「中央」のみが得てユーザーが得られないではないか、SNSに投稿しているユーザーの営みで「中央」だけが儲かるシステムは理不尽だ、というWeb2の反発から「ユーザーにもお金を」という流れが生まれた、のかもしれませんが、お金はユーザーの行動を規定する強力な理由でありつつも、決して全てではありません。
トークン価値が失われるとサービス全体が終了してしまうのも悪しき事例です。STEPNは経済崩壊しつつもファンはお金儲け以外の目的で歩くことを辞めません。もちろん設計ミスを修正しない限りSTEPNに復活はないと思いますが。
今後登場するdAppsはお金儲け以外のユーザーへの動機付けを提供し、生態系全体を永続化させるものが多く登場するのではないかと思います。
虫や植物の生態系を観察しなおすことがひとつの参考になるのではないか、とNHKスペシャル「超・進化論」を見ていて思ったのでした。