『1km届く!「Wi-Fi HaLow」でIoT社会がやっと実現へ!』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.10.6
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■なんと1km届く! HaLow対応のWi-Fiモジュール「T-Halow」が予約受付中
かなり以前から、あらゆるものにインターネット通信機能が搭載される「IoT(モノのインターネット)」が謳われていました。しかし、2024年10月現在、生活者の実感としてはIoT機器が街中に溢れたり、それで劇的に便利になった実感はありません。
そんな状況がようやく変わるかもしれません。
それは、日本国内では2022年9月の電波法改正により利用可能になったWi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)と呼ばれる技術で、なんと1kmもの距離でのWi-Fi通信を実現できます。このWi-Fi HaLowに対応した通信モジュール「T-Halow」がやっと製品化され、予約が2024年10月中旬に開始されます。
今回は、このWi-Fi HaLowが私たちの生活にどのような変革をもたらすのかについて掘り下げてみましょう。
Wi-Fi HaLowとは?
Wi-Fi HaLowは、従来のWi-Fiとは異なる920MHz帯の周波数を利用する新しい通信規格です。この技術は、特に長距離通信と低消費電力が求められるIoT向けに設計されており、センサーの計測値や監視映像の送受信などの用途に最適です。
通常のWi-Fiでは数十メートル程度の通信範囲が一般的ですが、Wi-Fi HaLowはその距離を大きく上回り、最大1kmの通信が可能です。この長距離通信を活用することで、農業や広い敷地を持つ工場など、遠隔地にあるデバイスを効率的に接続できるようになります。
IoT普及の課題
IoTが普及しなかった原因として、以下のような課題が挙げられます:
通信距離の制約:従来のWi-Fiは通信距離が限られており、広範囲にわたるデバイスの接続には適していませんでした。これにより、農場や工場のような広いエリアでの利用が困難でした。
消費電力の問題:IoTデバイスには長時間の稼働が求められますが、従来のWi-Fiは消費電力が大きく、バッテリー駆動のデバイスでの長期間の使用には適していませんでした。
コストと運用の複雑さ:大量のデバイスを接続する場合、運用コストが高く、管理も複雑化することがIoT普及の妨げとなっていました。
Wi-Fi HaLowはこれらの課題を解決する技術として注目されています。しかし、Wi-Fi HaLowでも一部の課題は完全に解消されない可能性があります。特に、大量のデバイスを接続して管理する際のコストや運用の複雑さは依然として残ることが予想されますが、低消費電力や長距離通信によって運用にかかる負担は軽減されるでしょう。
Wi-Fi HaLowが解決すること
Wi-Fi HaLowの大きな特徴の一つは、その低消費電力性能です。IoTデバイスには長時間稼働が求められますが、Wi-Fi HaLowはバッテリー駆動のデバイスでも長く使えるように設計されています。例えば、農業用の環境センサーや物流管理用のトラッキングデバイスなどで、頻繁にバッテリー交換を行う必要がなくなるため、運用コストを大幅に削減できます。
また、Wi-Fi HaLowは一度に多数のデバイスと接続することが可能です。これにより、スマートホームやスマートファクトリーのような、数百、数千のセンサーが常に情報を送受信する環境にも対応できます。例えば、スマートシティでの交通状況のモニタリングや、大規模な農場での環境管理など、多くのデバイスが同時に動作する環境で、Wi-Fi HaLowの恩恵が最大限に発揮されるでしょう。
低帯域のデータ通信に特化
Wi-Fi HaLowは、長距離通信が可能である一方、データ転送量には制約があります。大容量データの送信には向いておらず、あくまで低帯域のデータ通信に特化しています。しかし、これはデータ量の少ないセンサーや断続的な映像監視などにおいて、必要十分な性能を発揮します。
たとえば、遠隔地にある環境センサーから温度や湿度のデータを収集する、あるいは建物の状態を監視する用途であれば、Wi-Fi HaLowの制約はむしろその長所として働きます。低帯域であっても、安定して長距離のデータ通信を行うことができる点が非常に重要です。
Wi-Fi HaLowが実現するIoT実現シーン例
Wi-Fi HaLowを使った新しい利用シーンも広がってきます。農業分野では、広大な農地に配置されたセンサーが土壌の状態や気象データをリアルタイムでモニタリングし、作物の育成を最適化することができます。また、工場や倉庫では、設備の状態監視や在庫管理にWi-Fi HaLowを使うことで、効率的な運用が可能となります。
さらに、スマートシティ構築においてもWi-Fi HaLowは大きな役割を果たします。街中や道路の交差点などに多数のセンサーを設置することが現実的になり、交通量や環境のデータを集めたり、出会い頭の衝突事故を避けられるようになるなど、市民にとってより安全で快適な生活環境を実現するための基盤となるでしょう。
その他にも、以下のような利用シーンが考えられます:
医療現場での患者モニタリング:病院内や在宅医療で、Wi-Fi HaLow対応のセンサーを利用して患者のバイタルサインを遠隔で監視することで、医療スタッフの負担を軽減し、迅速な対応が可能になります。例えば、高齢者の自宅にセンサーを設置し、異常が検知された際に医療スタッフへ自動で通知するシステムなどが考えられます。
災害時の緊急通信ネットワーク:災害発生時にWi-Fi HaLowを使った緊急通信ネットワークを構築することで、広範囲にわたる被災地の状況を迅速に把握し、救助活動を支援します。例えば、避難所にセンサーを配置し、人数や物資の状況を把握することが可能です。
物流管理の最適化:長距離通信を活かして、トラックの位置情報や輸送中の商品の状態をリアルタイムで監視し、物流の効率化とコスト削減を図ります。例えば、温度管理が必要な輸送品の温度をリアルタイムでモニタリングし、異常があれば即時対応することができます。
スマートパーキング:駐車場に設置されたセンサーで空きスペースをリアルタイムに把握し、ドライバーに駐車情報を提供することで、駐車場の効率的な利用を促進します。例えば、都市部の駐車場で空き状況をアプリで確認し、予約できる仕組みを構築することが可能です。
農村部でのインフラ管理:遠隔地にある水道設備や電力インフラの監視にWi-Fi HaLowを活用し、設備の状態を把握してメンテナンスを効率化します。例えば、水道の漏水を検知し、早期に修理を行うことで無駄な水の浪費を防ぐことができます。
家畜管理:農場にいる家畜にセンサーを取り付け、健康状態や位置情報を監視することで、家畜の管理を効率化し、生産性を向上させます。例えば、牛の発情期を検知し、繁殖計画を効率的に行うことが可能です。
エンターテインメントやイベント:例えば、音楽フェスティバルやスポーツイベントでは、参加者にWi-Fi HaLow対応のデバイスを持たせることで、会場全体の位置情報を把握し、混雑状況をリアルタイムにモニタリングできます。これにより、来場者に対して混雑エリアの回避ルートを案内したり、緊急時には迅速に避難誘導を行うことができます。また、イベント情報や特典を個別に提供することで、参加者の体験をより充実させることが可能です。
まとめ
Wi-Fi HaLowは、これまでのWi-Fiの限界を超え、IoTのさらなる普及を支える新たな技術として期待されています。その長距離通信能力と低消費電力の特性により、農業、物流、スマートシティといったさまざまな分野で革新的な利用が見込まれます。
なお、実際の普及は今後数年以内に進むことが予想されており、農業やスマートシティといった特定の分野から段階的に展開される可能性があります。
また、都市部に住む人々にとっては、例えばスマートパーキングシステムの導入によって駐車場の空き状況を簡単に把握できるようになったり、まだ一部に限られている路線バスの接近情報を正確に把握し、リアルタイムで通知するサービスが当たり前に導入される可能性もあります。
また、商業施設内では、顧客が商品棚に近づくと、その商品に関連する割引情報やレビューがスマートフォンに表示されたり、フードコート内の各席にセンサーを設置し、空席情報をリアルタイムで把握、スマートフォンを使って予約できるシステムも実現可能になります。フードコートで空席を探し回るのは相当なストレスでしたから、もしこれが実現されれれば、多くの人がIoTの便利さを実感できるでしょう。
Wi-Fi HaLowの登場と普及で、なかなか実現しなかったIoT社会がようやく実感できるようになりそうです。