『アニメ制作×NFTによる製作委員会革命』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.9.2
■アニメ制作×NFT
アニメ制作×NFT、web3に関するプレスリリースが続いています。
「ANIM」「CryptoNinja」両プロジェクトに共通点が多く、今後のアニメーション、クリエイティブワーク、IPビジネスの実施方法やファンの意識などが変わっていく流れが見えます。
両プロジェクトについて課題意識や目的の共通点と違いを見ていくことで、今後のアニメ制作にまつわるNFTやweb3の可能性を探ってみたいと思います。
■製作委員会方式への課題意識
温度感や文字表現は異なるものの、共通している課題意識は現状の製作委員会方式です。
製作委員会方式は大きな総予算によるクオリティの高い作品が制作可能になる、金銭的リスクをクリエイター自身が背負う必要がなくなるというメリットの反面、
投資家と請負制作者の関係性となることで可能な限り制作コストを下げるバイアスがかかりやすくクリエイターが低報酬になりやすい、クリエイターの意見より投資家の意見が優先されやすく結果的にダメな作品になることがある、などの問題があるとされてきました。
両プロジェクトでは共通して、
・NFTの販売収益を通じてアニメ制作の原資を作る
・NFTを購入する層はアニメ作品のファンである
・出資者がファンなら作品はねじ曲がらないだろう
という発想を持っています。
CryptoNinjaのリリースでは「web3時代のアニメ”制作”委員会」と製作委員会ではなく制作委員会にするのだ、制作者が中心だ、ということを謳っています。
■NFT販売による制作予算確保+コミュニティドライブ
きっとこれまでの製作委員会方式でも、出資者が作品やクリエイターに対して理解が深ければ、良い作品・良い労働環境が作られていたのでしょうし、そのように作られた作品もあると思います。
しかしそうでない場合も多かった。
そこで、ファンが中心となりやすく、かつ金額より人数・声の数の方が影響力が大きくなる方法としてNFT購入者によるコミュニティからの意見を中心としたアニメーション制作体制が採られています。
NFTを制作予算を集める装置としてだけ使っていたら、単純に儲かりそうだから出資する愛情のない投資家がNFTを買い占める可能性があります。
NFTホルダーだけが参加できるコミュニティで直接ファンが声を上げられる仕組みを採ることで、少数・多額な投資家より多数・少額のファンの影響をより大きくすることができます。
投資家の意見で無理やり前編後編に分割して間延びした作品になり、結果的に商業的にも失敗した某巨人系実写化映画のような事故が起きづらくなるはずです:-p
つまり大手IPでも悩みは同じ。
本来作品の理解や愛情がとても高いはずのIP自身でさえ、投資家の意見に逆らえないのです。できるなら自腹で作品を作りたい。それを叶えられそうだと期待されているのがNFTによる制作予算確保です。
■NFTの「直接利用」と「間接利用」
NFTによる集金部分は「間接利用」、NFTホルダーだけが参加できるコミュニティのパスポート機能は「直接利用」と分類できます。
■最初からお客さんがいる状態
商業的に失敗したくないがために、過去の成功作の続編ばかり作られがちになっているのも現状の製作委員会方式の問題点です。
続編モノがいいところは客数が読めることです。
対して完全新作は客数が読みづらい。
客数が読みづらい作品は投資が集めづらいのであれば、客数が読めるようにしてあげればいい。
NFT購入者の人数で客数を読めるようにしたり、NFT購入そのものが観覧チケットを兼ねて「先払い」になっていれば客数が読めるようになります。
■将来的なリターンの期待
CryptoNinjaのアニメ制作プロジェクトでは、出資者に提供するのをNFTではなく移転・譲渡不可能なSBTとするとしています。
これにより、10年後であっても「当時出資した人はあなた」と特定することができます。他人や二次流通市場で手に入れたわけではなく、間違いなく本人が出資した証明となるからです。
※ウォレットごと譲渡する問題はあります。
これはDIDが確立し、DIDにウォレットを紐づけることで解決されると考えていますが別の話。
10年後、もし初期の出資によって立ち上がった作品が大ヒットしたら、感謝の気持ちを込めて追加でインセンティブを提供することも可能になります。
長く作品を育てたいと願うファンにとっても、将来大きなリターンが得られるかもしれない、というのはひとつの出資動機になります。
■NFTに関する二次利用の確認のしやすさ
NFTというものが広く認知されてきたのはここ最近です。
いろんなIPがNFTへの参入を検討している中、大きな壁になるのが「過去に組成した製作委員会」の存在です。
NFT化する許諾を得ようと当時の製作委員会の加入者にコンタクトしようとした際、連絡が取れない・すでに解散している・別会社に事業譲渡や吸収合併されている、などのケースは発生しがちです。
仮に連絡が取れたとしても、当時は理解のある担当者であっても、人や会社が変わったせいで二次利用に関しての理解が得られないということもあり得ます。
最初からNFTで出資金を集める方法を採れば、ウォレット単位では関係者を特定しやすくなります。ウォレットに対するメッセージの方法はEPNSなどのメッセンジャーサービスが開発されています。
当然ですがNFTに理解のある人しか出資者にいないことも有利です。
二次創作に関する理解は別で既存の大手IPには高いハードルがあると思いますが、それでもNFTプロジェクトを通じて二次創作への理解が進む可能性はあります。
■NFTによる出資者集めの課題
これは端的に人数と金額の少なさでしょう。
これまでの製作員会方式は、課題はあれどビッグバジェットな作品を作れるだけの集金力がありました。
ANIMもCryptoNinjaも、リリースによると出資者の人数に2000人くらいの数を挙げています。
2000人がもし視聴者や映画館来場者の人数だとしたら当然少なすぎます。
2000人がもし1人10万円出資したら2億円ですが、1人100万円払う人を2000人集めて20億円の大作を作るのは、このままのスキームだと難しいと思います。
企業スポンサーを入れようとすると従来の製作委員会と同じ問題を抱える可能性があります。
コミュニティの声が大きく影響する仕組みとしていても、企業スポンサーが1社で10億円払ったら「鶴の一声」が発動され、飲んでしまう可能性は否定できません。(企業も「鶴の一声」をやればSNSで非難されることを恐れてやりづらくなる効果はあると思いますが。)
2000人が1万人、2万人、10万人になり、総額100億円をNFT出資だけで集めてグローバルに展開する巨大作品シリーズが作れました!になったら革命ですし、ぜんぜんその可能性もあると思います。
またアニメ業界に限らずさまざまな業界で同じスキームが使えるはずです。
ファンが出資者となり推しの活動を直接サポートし、得られた収益をファンも得られる、これをNFTやSBTを通じて行われる事例がこれからもっと増えてきそう。まずはANIMとCryptoNinjaアニメーションの成功で道が開けるのかに注目です。
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