『自動化ストーリーボードでインスピレーションを提案する「Pimento」』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2023.12.29
■デザイナーのためのジェネレーティブAI、自動化ストーリーボードでインスピレーションを提案する「Pimento」
画像生成AIを「最終作品をテキストで自動的に作る」ことに使わず、デザインアイディアの参考を量産し、人間のプロデザイナーのインスピレーションの助けとして使う「ムービーボード」の生成に特化したサービスが登場しました。
「AIに仕事を奪われる」がセンセーショナルなキーワードとして使われがちですが、プロの世界ではむしろ、AIと人間が共存共栄できる道が見つかるかもしれません。
AIムービーボードでインスピレーションを整理する
デザインの方向性を検討する時に、コンセプトに合う画像をたくさん集めて1枚のボードに並べる作業をよくやります。
こういう作業ですね。
私の場合、ムービーボードを作るのにPinterest(ピンタレスト)をよく使っています。ネット上の画像をクリップするだけで、ひとつのテーマにあったムービーボードが簡単に作れます。
作ったムービーボードを社内関係者やクライアントに共有して、デザインの方向性や参考になる他社事例などを検討するような使い方をします。
これまでのムービーボードの問題点
アイディアを広げたり意見をまとめるのにとても便利なムービーボードですが、問題点が多々あります。
一番は、画像を集めるのに時間がかかることです。
画像検索や素材集サイトなどで良さそうな画像を探すことに膨大な時間がかかります。
探している間に目が養われてアイディアが浮かんでくることも多いのですが、なにしろ画像を探すのに時間がかかります。
次に、余計な要素に悪影響を受けることがあることも問題として挙げられます。
集めた画像は別の用途のために作られたものであるがゆえに「余計な要素」にアイディアが引っ張られることもしばしばあります。
「有名な商品のパッケージデザイン」などは、デザインそのものよりも商品の知名度に影響されることが多くあります。
既存デザインを使ったムービーボードの場合、プロジェクトメンバーやクライアントに見せた時も、共通理解を得るためには丁寧な説明が必要です。影響力が強いグラフィック1点に引きずられて誤解を受けること、誤解を解くのに時間がかかることも多々あります。
市場に実際に投入されているデザインはパワーがありますので、引っ張られてしまうことが多いのです。
Pimentoでムービーボードの課題を解決
ムービーボードを生成AIで作る「Pimento」であれば、色や雰囲気などの条件を入力して瞬時にAIが画像を生成してボードに並べることができ、画像を探す時間が短縮できます。
また、実在しない画像をAIが生成することから、引っ張られにくいグラフィックアイディアのタネを集めることに向いています。
「有名な商品のパッケージデザイン」が入ってこないことは時に有り難いものです。
ただ、適切に条件を入力しないと「画像ガチャ」で当たりを引くまでのやり直し時間がかかりそうです。
また、アイディアを広げるためにムービーボードを使いたい場合、条件入力できるほどアイディアの方向性が固まっていないこともあります。どちらかというと意見をまとめるほうに使うのに向いているかもしれません。
Pimentoでムービーボードのすべての問題が解決するわけではないと思いますが、より効率的にデザインのインスピレーションを得たりクライアント説明用資料を作れることで、デザインの練り込み作業のほうに時間を多く割けるようになるのは、プロのデザイナーにとってはとても助かるツールになるのではないでしょうか。
「人間の助けになる」というAIの使い方
最終作品を自動的にAIが作るというのもAIの可能性ではあるものの、細部までこだわり抜いたデザインを求められるシーンでは、今の画像生成AIのクオリティは満足いくものではありません。
ある意味、「AIが作ったからこの程度だ」という言い訳つきでなら成立するというのが現状でしょう。
アクセンチュアが、生成AIで広告デザインを自動化することを発表しました。広告業界に殴り込み!のように捉えられ、
「電通とけんかする気はない」という社長のコメントが注目されるような事態になっています。
おそらく「けんかしない」は本音で、クリエイターが心血を注いでデザインする広告クリエイティブ市場と直接ぶつかるものではないと思います。
ただし、広告市場の中のシェアは間違いなく「AIによる広告クリエイティブの自動化」が今後広がっていくのは間違いありません。AI広告が広告市場の過半数を占め、手作業によるクリエイティブは半分以下になるかもしれません。
手作業による広告クリエイティブは「高級品」として今後も残りすみ分けられていくと思いますが、そんな手作業クリエイティブでも、このPimentoのような手助け型AIを活用して効率化を図ることが求められていくはずです。
自動生成もAIですが、手作業もAIの助けを得る。
AIはこんなふうに浸透していくのだろうと思います。