『Twitterの広告収益シェア導入が発表。スーパーアプリ化とトークン導入の布石の第一歩か?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.2.5
■イーロン、ツイッターの収益シェア導入を発表
米ツイッター社のイーロン・マスクCEOは4日、有料ユーザー向けに広告収益の分配を“本日”(注:2022年2月4日)から開始したことを発表した。
広告収益の分配は、「Twitter Blue」プラン加入ユーザーのみが対象。返信欄で表示される広告の収益の一部を受け取ることとなる。
昨日突然Twitterの広告費が案分される収益化プログラムの開始がイーロン・マスク氏のツイートで発表されました。
ただ今のところ収益化プログラムの詳細は公表されておらず、「Twitter Blue加入者限定で、返信欄で表示される広告の収益から案分される」ということしかわかっていません。
この仕様だと単発ツイートがいくらバズっても返信が伸びなければ収益は得られません。
スレッド返信での長文連投や、返信でアンケートを取るような投稿などのスタイルが、収益化導入に伴って一層流行するかもしれませんね。
「原資回収」というBCG的発想がTwitterにも
Twitter Blueのサブスクリプションのコストは、グーグル「アンドロイド」とアップル「iOS」ユーザーが月額11ドル(1,380円)。また、ウェブユーザーは月額8ドル(980円)、年間プラン84ドル(10,280円)となっている。
広告収益でこれらのコストをペイするには、どれだけのインプレッションが必要になるかに関心が集まっている。
STEPNなどのブロックチェーンゲーム(BCG)の多くは、初期にNFTを買ってゲームに参加し、プレイでトークンを稼いで初期投資をペイさせようとする「原資回収」という発想をします。
Twitterはさまざまな意味でweb3サービスではありませんが、ユーザーからお金を取りつつユーザーの活動に対して報酬を与えるという構造はBCGっぽいと言えるかもしれません。
ポンジスキームにならない仕組み
新規ユーザーがNFTを購入したり後から課金したお金を分配する構造のBCGのトークノミクスは自転車操業的なポンジスキームだと批判されることが多いですが、Twitter収益化制度はBCGよりサスティナブルだろうと思います。
・ユーザーの課金ではなく広告費=外貨が収益案分の原資であること
BCG業界ではユーザー課金以外に広告費など「外」から流入する報酬原資のことを「外貨」と呼びます。
・Twitter Blue会員の一部のみが多くの収益を得るモデルだろうこと
詳細は未発表ですが、ツイートの表示数や返信数などに比例して収益案分するだろうことを考えると、収益案分の原資を一部の人が多く獲得し、大半の人は僅か~ゼロという収益の偏在が起きるはずです。
この構造によって収益案分制度の持続可能性が高まります。
・原資回収を目的化しないユーザーが多そうなこと
あとから収益化制度を導入したこともあり、Twitter Blueの月額費用を回収することが目的化しづらそうです。
BCGは「稼げる」こと自体が売り文句でありプレイする大きな動機であることが多く、稼げなくなると辞めてしまうことが多いのも特徴です。
Twitterの場合はツイートすることやフォロワーとのつながりを楽しむこと自体が目的であるユーザーが(収益化が始まった直後の今は当然ながら)大半なので、仮に原資回収できなくてもTwitterを辞める人はほとんどいないでしょう。
トークン・暗号資産を導入しTwitter経済圏が構築されるか
Twitterは「Coin」という独自トークンを開発中であることが以前リークされています。
今回導入された広告費の収益案分制度は法定通貨での支払いですが、将来Coinが導入されればおそらくCoin払いに変更するだろうことが予想されます。
ユーザーはCoinを受け取っても使い道がなければ全額を法定通貨やステーブルコインに交換してしまいます。皆がCoinを売って法定通貨を欲しがればCoinの価値はどんどん値下がりしてしまいます。
その売り圧を抑えるためにも、Coinの使い道が充実することがとても重要です。
dポイントや楽天スーパーポイントのように買い物や飲食に使えるのはユーザーとしてはありがたいですが、法定通貨に交換しているのと同じで売り圧にしかなりません。
Twitter社にとってCoinの価値を上昇させられる方法はTwitterの中でサービスやデジタルアセットなどに消費され、CoinがTwitterの中でBurnされる状態です。
TwitterにCoinが導入される暁にはおそらく、独自のNFTマーケットプレイスを立ち上げた上での支払いやガス代への充当、Twitter内広告の出稿のCoin払い、Twitter Blue会員に付加される各種アドオン機能への支払い、フォロワーからの投げ銭などが使途として設定されるのではないかと思います。
スーパーアプリ化を目指すという報道もあります。
Netflixのようなサブスク動画配信サービスなどエンタメ系サービスを導入したり、銀行系サービスの中でCoin建てで貸付やステーキングを行うなど、SNSの領域を超えた拡張がなされればCoinの使い道やTwitter内Burnの手段が格段に増えます。
スーパーアプリ化のなかでTwitter経済圏が構築され、莫大な費用での買収が意味のあるものになるでしょうし、Twitter買収はこのあたりまで視野に入れたものなのだろうと思います。
web3業界的にはTwitterが交換業免許を持ちカストディウォレットを提供すれば、暗号資産を扱えるユーザーが爆発的に増えるというメリットもあります。Twitter内でCoinを稼いで他で使ったり、他のBCGで稼いだトークンをCoinに代えてTwitter内で使うなどの相互運用もできればBCGの普及の後押しにもなるかもしれません。
そんな構想の第一歩が今回の広告費案分による収益化制度ではないかと見ると、暗号資産のマスアダプションが目前まで来ているのではないかと思えます。