『出川哲朗「日本で日本円が使えませんって、心の底からWHY?」発言がWHY?って思われる時代に早くなれ!』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.11.9
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■出川哲朗、キャッシュレス決済のため現金使えず「日本で日本円が使えませんって、心の底からWHY?ってなって」
出川哲朗さんがテレビ番組で、飲食店で会計時に店員さんに『日本円は使えません』と言われた、というエピソードトークをしたそうです。
簡単に予想が付きますが、その店舗がキャッシュレス決済のみの店だっただけです。
現金主義自慢が共感される今
「行った店で現金が使えなくてさーキャッシュレス決済Onlyの店だったんだよー」
というエピソードトークだと、ネットニュースに取り上げられることはなかったでしょうし、テレビ番組でもカットされていたでしょう。「日本で日本円が使えない」という言い回しがパワーワードだったわけです。
出川さんは、カードも携帯の電子決済も使ったことがない、現金が使えない店なんてアリエナイ、という発言が共感されると思って発言し、テレビ局は放送し、ネットニュースは切り取ったわけです。そして実際に「現金が使えないなんてオカシイ」と共感する視聴者層がいるのも事実でしょう。
しかし、現金Onlyの共感を広げるのはよくありません。現金を使えるように維持するためにはコストがたくさんかかります。効率の悪さ、スピードの遅さが日本の経済循環を悪化させます。
ともすると、キャッシュレス決済は手数料がかかる、現金は手数料がかからない、と、店舗運営者だけでなく消費者も思ってやしませんか?
現金取扱いの隠れたコスト
現金払いの維持には、以下のようなコストが発生しています。
1.物理的コスト
・紙幣・硬貨の製造コスト
・現金の輸送・保管コスト
・銀行やATMの維持管理費用
・現金の引き出し・預け入れに関わる処理コスト
2.セキュリティ関連コスト
・警備費用(強盗対策)
・防犯カメラやセキュリティシステムの設置・維持
・現金輸送時の警備
・金庫などのセキュリティ設備
3.人的コスト
・レジ締めの作業時間と人件費
・現金の計数・仕分け作業
・釣銭準備の時間と手間、人件費
・現金ミスの確認と対応
・銀行への入出金作業の人件費
4.機会損失
・現金処理による接客時間の減少
・レジ待ち行列による顧客離れ
・大金を持ち合わせていない客の損失
・つり銭切れによる機会損失
5.その他のコスト
・偽札リスク
・計算ミスによる損失
・監査・内部統制コスト
・衛生対策費用
・所得隠しによる税収減
キャッシュレス決済にもサーバ代、サーバ運用の人件費、ハッキングや不正対策のセキュリティコストなどはかかります。「この店ではPayPayしか使えない」などの機会損失も発生します。
現金社会とキャッシュレス社会のコスト試算
A.現金社会のコスト(年間)
現金取扱いコスト:約8兆円(日本全体)
小売業における現金管理コスト:約2兆円
金融機関の現金取扱いコスト:約2兆円
現金輸送・警備関連コスト:約1兆円
ATM維持管理コスト:約1.5兆円
その他(偽札対策、紛失・盗難、計算ミス等):約1.5兆円
B.キャッシュレス社会のコスト(年間)
決済手数料:約2-3兆円
クレジットカード(2-3.25%)
電子マネー(1-2%)
QRコード決済(1-2.5%)
システム維持費:約1兆円
決済システムのインフラ整備
セキュリティ対策
システム更新・保守
コスト比較
A. 現金社会:約8兆円
B. キャッシュレス社会:約3-4兆円
差額:約4-5兆円の削減効果
付随する効果 キャッシュレス化による経済効果
消費活性化効果:約10兆円
生産性向上効果:約5兆円
税収増加効果:約1兆円(脱税・租税回避の防止)
注意点:
これらの数値は各種調査や研究を基にした概算です
移行期間中は両システムの併存により一時的にコストが増加する可能性があります
地域や業態によってコスト構造が異なる可能性があります
結論として、完全なキャッシュレス社会への移行により、日本全体で年間4-5兆円程度のコスト削減が見込まれます。さらに、消費活性化や生産性向上などの付随効果を含めると、その経済効果は更に大きくなると予測されます。
コストのぶん、現金に手数料を
現在、一部の店舗では「キャッシュレス決済の手数料が高い」という理由で現金払いを推奨する傾向があります。しかし、上記で見たように、現金取扱いには多大なコストが発生しており、むしろ現金払いこそ追加の手数料を設定してもおかしくない状況とも言えます。
現金決済に手数料を掛けるための方法として、銀行による現金取扱い手数料の見直しが考えられます。すでに小銭の預け入れ手数料が引き上げられているように、紙幣についても手数料を段階的に引き上げることで、キャッシュレス化を自然に促進できる可能性があります。
銀行のジレンマ
ただし、この施策には課題もあります。現金取扱いは銀行の伝統的な基幹業務であり、現金に関する手数料の引き上げは銀行自身の存在意義を問い直すことにもなりかねません。
現金がなくなり、すべてキャッシュレス事業者やCBDCによるデジタルマネーだけでやり取りされるようになると、多くの銀行は必要なくなってしまいます。
日本の銀行業の収益規模(2023年度概算)は、
メガバンク3行の総利益:約2.5兆円
地方銀行全体の総利益:約1兆円
その他金融機関:約1兆円 合計:約4.5兆円程度
と、ちょうど現金社会とキャッシュレス社会の差額の約4-5兆円の削減効果とイコールになります。つまり、現金社会の維持費はすべて銀行の維持費になっているとも言えるわけです。
銀行が自らキャッシュレス社会を推進して銀行業を縮小させるようなことをやるとは考えづらいので、現金に対する手数料はキャッシュレス決済より安いように見せかけ続けるしかないのだろうと思います。
しかし、銀行はこれまでのような収益を上げ続けることは難しく、自ら手を下すかどうかに関わらず、店舗やATMを縮小し、人員を削減し続けることになるはずです。その最中に、紙幣の預け入れや引き出し、保管についても大幅な手数料アップをするだろうと思います。
そうなってくると、多くの人に『現金は手数料がかかる』という意識が付いてくるだろうと思います。
この話がWHY?って思われる時代に早くなれ!
キャッシュレス社会への移行は、一朝一夕には実現できません。しかし、現金取扱いにはコストがかかることを認識し、そのぶんの手数料を現金決済に課すことで、より効率的で便利な決済システムへの移行を促進できるはずです。
そのためには、メディアの適切な情報発信や、銀行による積極的な変革への取り組みが不可欠です。
「日本で日本円が使えない」、現金が使えない、というエピソードトークが共感されない世の中に早くなってほしいと願いますし、まだまだこの発言が共感されるものとして発言され放送されてしまうのが今の日本なのだなぁと、個人的にはとても残念に思いました。