読書録「世界一子どもを育てやすい国にしよう」 ◎シラク三原則
今回は、いつもより少しお堅いタイトルに惹かれて、こちらの本を読んでみました。
軽い気持ちで読み始めたら、結構ずっしりとしたボリュームで日本経済の現状や男女分業が定着してしまった歴史、海外には出産しやすい環境を整えた法律がある、など博識な著者おふたりの会話がどんどん進むので(対談形式)、私は何だかずっと圧倒されていました。でも、それと同時に子どもを持つ親として、歴史や現状をほとんど知らなかった…と反省したんです。
(いろんな考え方や意見があると思いますが)本の冒頭に、著者の出口さんはこのように話されています。
『日本の少子化問題は、深刻の度合いを深めてきています。しかし、政府の問題意識としては、いまだに「将来の労働力が足りない。だから女性に産んでもらわなければ」という域を、大ききは出ていないように見受けられます。いったい、その程度の問題意識で、わが国の少子化問題が解決できるのでしょうか。』
そんなわが国と比べて、フランスには出産しやすい法律があるとのこと。
それはフランスの「シラク3原則」。フランスで奏功している少子化対策として知られています。(恥ずかしながら私は知りませんでした…)
この政策が誕生した経緯に、「パリにディズニーランドができ、英語の大学院ができ、フランスワインを飲む人が減ってきた」こういうことにフランス人は非常に危機感を抱き、議論を重ねたそうです。そして「アングロサクソン(英国系)文化に飲まれることなく、フランス文化をできるだけ守りたい」という結論になり、フランス文化とは何か?それは母語のフランス語を話す人を増やすことという認識に行き着きました。
フランス文化を守るためにはフランス語を母語とする赤ちゃんがたくさん生まれるような社会をつくらなければならない、「赤ちゃんはフランス文化を守る大切な社会の宝だ」という市民の共通認識が生まれたそうです。
著者・出口さんはこのように続けます。
『そして、この先がフランス人が非常にロジカルなところです。男性は赤ちゃんが産めないので、この問題については男性に発言権がありません。赤ちゃんを産めるのは女性しかいない。そうであれば、女性が産みたいときに産んでください、男性の意見は聞く必要はありません、というのがシラク第1原則です。本人が産みたければ、18歳で産んでもいい。すべて女性が決めればいいのです。ただ、18歳ではお金がありません。女性が産みたい時期と、女性の経済力は必ずしも一致しないので、その差は税金で埋める。女性が何人子どもを産んでも、そのことで決して貧しくなることはないと保証したのです。産みたくない人は産まなくていい。でも、産みたいと思ったときは「社会がとことんサポートするので、安心して産んでください」という仕組みをつくったのです。』
そして、シラク第2原則は、赤ちゃんを必ず預けられる保育園を用意すること。
第3原則は、男性でも女性でも育児休業を取ったあと、元の人事評価のランクで職場に戻れるとしたこと。
フランスはこのシラク3原則のおかげで、1994年には出生率が1.66だったのが、15年弱で2.0を超えるまでに回復し、このシラク3原則は、すべて法制化されているそうです。
今回は本の中から「シラク3原則」について紹介しました。
日常の育児では知ることができなかった専門家たちのお話を次回も書いていこうと思います。
小難しい内容だったかもしれませんが、最後までお読みいただき、ありがとうございました!次回(続き)もよろしくお願いします。