私の好きな小説とドラマ。 その1
原作も、ドラマも(ドラマは竹内さん版)好きで、その時に書いた小説――二次創作、つまりパロディ小説を晒す。
そう、晒す。
自分としては、珍しく健全なものを書いたので、正直、このデータをハードディスクから見つけたときには驚いた。
なんじゃ、これ?
もともとの作品は ↓ これ。
小説 「ストロベリーナイト」誉田哲也:著
DVD 「ストロベリーナイト」竹内結子:主演
私は女主人公が苦手で、正直なところ、ドラマを見るつもりも小説を読むつもりもなかった。
でも、なんとなくドラマを見た結果、ドハマりしたシリーズ。
小説からだと、絶対に手を出さなかったと思う。
※注:女主人公が得意ではないので
竹内結子さんの演じる、姫川玲子がとてもよかった。
そして、小説を読んだ。
結果、最高におもしろかった。
このシリーズ、結構最近のところまで読んだと思う。
最新のは買ったままかも……。
早く読みたい。
仕事、辞めたい。
あ。
ドラマは、FODあたりで見れるのではないかと思うので「ストロベリーナイト」は、ぜひ、竹内結子さん版で見てほしい。
さて。
人目に晒してもよさそうな二次創作小説が見つかったので、晒してみることにする。
文章は、本家本元をちょっと意識して書いているのが、笑える。
とんでもない挑戦である(笑)。
結構、恥ずい。
数日後に消してたらごめんなさい。
1本目は、菊田と姫川さん、2本目はノリと菊田。
BLの絡みはないので、安心して読んでほしい。
ただ、原作を知らないと、まったく意味不明なので、とりあえず、原作を見るか読むか、してほしい。
では、心の準備ができた人だけ、下記へどうぞ。
ブラッドハウンド
久しぶりに菊田と二人きりで食事に出かけた。
菊田が選んだにしてはおしゃれな店で、雰囲気がいい。
しかし、先ほどから玲子には心配なことがある。
財布の中身が心許ない。
価格もそれなりに高額そうなこの店で、いつものように割り勘だなんてことになったら、多分、現金では足りない。
現金で足りなければカードで支払えばいいだけの話なのだが、それ以前に自分はこの店の支払いをしなくてはならないのだろうか。
そもそも、菊田から話があると誘われたのだ。
ここは菊田が支払うべきだ。
確かに自分は菊田の上司だが、二人だけで会うのならば、やはりここは男性の方が払うのが自然だと思うのは、玲子の傲慢だろうか。
落ち着いた空気の流れる店とは対照的に、玲子の内心は焦る。
支払いのことも焦りの原因だが、店に足を踏み入れてからというもの、菊田が口をきかない。
必要最低限のこと――つまり、返事などはあるものの、どこか上の空でおかしい。
菊田が恋愛に不器用なのはわかっている。
いい年をした大人二人が一緒にいるのだから、好きかどうかなんて、自然とわかる。
多分、菊田は玲子のことが好きだ。
玲子も菊田のことが好きだった。
ただ、なんとなくはわかっているものの、距離が縮まるなどという変化はまるでない。
一度だけ交わしたキスから、二人には全く進展がなかった。
キスの記憶だって、薄れかけてるんだから。
愛を語り合ってキスをしたわけではなかったが、玲子には大事な記憶だった。
それが、忙しなく流れていく日々に削り取られ、薄くなっていく。
全てを消されてしまう前に新たな「何か」を築きたいと玲子は思っていた。
向かいに座った菊田が、そわそわと落ち着かない様子を見せ始めた。
玲子とは目を合わそうともしない。
こんな態度を取るために玲子をこんな店につれてきたのではないだろう。
玲子は女として確信していた。おそらく、高確率で告白されるはずだと。
「主任、これを」
黙りこくっていた菊田が、ようやく口を開いた。
菊田によって小さな箱が玲子の目の前に置かれる。
それがリング用のジュエリーケースだということは、言われなくてもわかった。
「え……?」
大きな瞳を何度も瞬かせて、ケースを凝視する。
うそでしょ、と声に出して聞きたい。
付き合ってもないし、好きだと言われたわけでもないのに、いきなり一足飛びで指輪?
疑問は次々に湧き起こるのだが、目の前にある大きな存在感の小さな箱が気になって仕方なかった。
「……菊田、これはなに?」
「主……いえ、貴女を捕まえておくために買ったんです」
「……開けてもいい?」
「どうぞ」
菊田は、いつもみたいに「いいっすよ」などとは言わなかった。
玲子の期待が静かに膨らむ。
ようやく来るべき時がきたのかと、表情には出さないように精一杯気をつけながら、ゆっくりと箱を開けると――。
「っ…………」
ゴン、とベッドのヘッドボードに頭をぶつけた。
突然の痛みに驚いて目を見開くと、見慣れた白い天井があった。
玲子がよく利用するビジネスホテルの一室で、今日からまた、玲子はここにお世話になっている。
「やっぱり夢か……」
菊田から指輪をもらえるかもしれないという、甘くて嘘くさい夢を見るのはこれで四度目だった。
細かい部分は毎回違うものの、必ず菊田は自分にリング用の小さなケースを差し出す。
そして、玲子はそれを開ける。
開けると中に入っているのは手錠なのだ。
今日は箱を開けなかっただけマシだった。
「こう何度も同じ夢をみちゃうって、よっぽどあたしは菊田の結婚がショックだったのかな」
自分の感情だというのに、そこは未だによくわからない。
そっとしておきたいから、あえて深く考えていないのか。
それとも元々なんとも思っていないのか。
思い過ぎてこわれてしまったのか。
何かしらのサインなのだろう。
でも、なんのサインなのかがわからない。
楽しかった夢などはだいたい、楽しいという感覚だけを残して、夢の記憶は起きた瞬間に失われる。
菊田の夢も目を開けた瞬間に忘れてしまえたらいいのに。
ホント、やだな。
時計に目をやると、午前七時前だった。ぐったりしていて眠った気はしないが、仕事は待ってくれない。
玲子は身支度を調えて部屋を出た。
――1日の始まりが悪夢からなんて、ありえない。
◆
悪夢は更に続き、何故か今日のコンビの相手は井岡。
どうして自分はこんなにも「井岡率」が高いのかと頭を抱えた。
「玲子ちゅぁぁぁん、赤い糸の導きでんなぁ」
開口一番、恐ろしいことを言いながら両手を広げて近づいてくる井岡に、玲子はエルボーを食らわせ署を出た。
単独捜査はダメだとわかっているが、始終井岡と一緒では捜査の間に余計な心配もしなければならないため、振り切りたくもなる。
だが、井岡を振り切るのはガンテツでもなかなか大変だというのを玲子は知っている。
あちこちにとばされて何をしているのか一見わからない存在ではあるが、無能なわけではない。
だから、無碍にはできない。
でも、やっぱり玲子にとっては悪夢だった。
悪夢から数日が過ぎ、ようやく事件が片づいて玲子は息をついた。
一人で静かに考える時間がほしくて、知り合いが来ることのなさそうなバーを選んで酒を飲むことにした。
しかし、悪夢はまだ続いているのか、バーには偶然にもかつての自分の部下だった葉山がいた。
「……ノリ、久しぶり」
「お久しぶりです、主任」
「もう、あたしはあんたの主任じゃないわよ」
「でも、やっぱり主任は主任です。今更姫川さんなんて呼べません」
「なんで?」
「……よそよそしいじゃないですか」
「………………そうね」
玲子はフッと頬をゆるめて笑った。
まさか、葉山の口から「よそよそしい」なんていう言葉が発せられるとは思わなかったからだ。
姫川班で一番よそよそしかったのは、ノリ、あんたでしょ。
昔の葉山のことを思い出していると、他のことまで芋づる式に掘り起こされる。
菊田のことももちろんだが、玲子にとって初めての年下の部下であった大塚の存在。
葉山と大塚は全然違うが、やはりどこかをリンクさせて思い出してしまう。
強いカクテルをあおったせいなのか、ちょっとだけ切なさが目元に滲む。
玲子の涙に気づいた葉山が席を立つ。
「主任。大丈夫ですか、送りますよ。このあたりに泊まっているんですか」
「んーん、大丈夫。今日は実家まで帰んなきゃなんないの。だから、帰りたくなくて時間つぶしてるんだよね」
「……はぁ」
いつまでもそばから離れない葉山に声をかける。
いつもなら言わないようなことも、うっかり口を滑らせてしまった。
「いいわよ。ちゃんとタクシーで帰るから気にしないで」
真面目な顔で玲子のそばに突っ立っていた葉山は、素直にわかりましたと応えて背を向けたが、振り返って玲子に念を押す。
「連絡もらったら駆けつけますから。何かあったら、すぐに自分まで連絡ください」
「ありがと」
葉山の姿が消えると、玲子はうんっ、と両手を上げて伸びをしながら、呟いた。
「ノリはいい男に育ってるじゃないの」
自分に対する気遣いを思い出し、頼もしくなる。
悪夢続きの一日がここで断ち切られたような気がした。
「ん、明日はきっといい一日になるわよ」
玲子は根拠のない自信を胸に抱き、赤く甘いカクテルを飲み干した。
(了)
肉の代償
帳場が立ち、雑魚寝の日々が続いていた。
葉山は隅の方で小さくなって寝ていたが、周囲のイビキのうるささが気になり始めたら、ずっと止まらない。
不快な音なのにもかかわらず、聞き入ってしまう。
それは、最近のテレビ番組で「無呼吸症候群」について見たからに違いなかった。
誰かのイビキが耳にはいると、じっと聞き入る。
静かに聞いていると、時々「っ…………」と息が止まり、寝ているときに無呼吸に陥る。
今度はちゃんと息を吸ってくれているのか確認するまで耳を傾ける――という繰り返しになる。
そんな者は放っておいて、さっさと寝てしまえばいいのだが、他人事ながら心配なのだ。
今日は隣に菊田が寝ていた。
さすがに、菊田は無呼吸症候群ということはなかったが、時々、何かぶつぶつ呟いている。
その念仏のような寝言がおさまったら、稀に脚や腕が飛んでくることがあるので要注意だった。
「……今日はおとなしく寝てる」
葉山は菊田の様子を確認すると、安堵して布団に入った。
歩き回ってばかりいた今日は、本当に疲れていて、できればゆっくり眠りたい。
目を閉じて意識がぼんやりし始めた頃、ドスッと臀部に蹴りが入った。
案の定、菊田の脚で、無防備なところをやられたため、かなり痛い。
「寝ている人間に文句を言ってもしょうがないんですが……」
さすがに、黙って泣き寝入りというのは悔しい。
だからといって声を荒げれば周囲に迷惑がかかる。
迷惑だけならまだマシだが、自分が叱られる羽目になる可能性もあるため、一時の感情で安易に声をあげることはできない。
明日、菊田に面と向かって抗議するか……。
しかし、証拠もなにもない上に、本人には明らかに記憶がないのだから、抗議しても意味はなさそうだ。
「あ……」
それなら、こちらも気づかれないようにやり返せばいいんじゃないかと、思いついた。
目には目を、歯には歯を――なんて思っていないが、この状況でかわいげのある仕返しならなら許されるはずだ。
葉山は持っていた水性ペンを取り出し、そっと菊田の顔をのぞき込む。
そして、ペン先を額に当て、「肉」の字を書いた。
明日の朝、自分が真っ先に疑われることはないだろう。
姫川班での自分の役割は「三枚目刑事」ではないのだから。
「よし、寝よう」
肉印に満足して、再び眠りにつこうとしたちょうどそのとき。
菊田がまた暴れだし、今度は腕を振り回して、ぶつかった葉山の手首をつかんだ。
「……つかまえ、たぞ、こんにゃろ……」
菊田は夢の中でも仕事をしているようだ。
そのことに小さく笑いを堪えていると、今度は力一杯腕を引かれた。
「うっぁっ……」
ぐいと引かれた勢いで前方につんのめり、菊田の上に覆い被さってしまう。
確保するつもりなのか、菊田の腕の力は弱まることなく葉山を拘束していた。
「ちょっ、菊田さ……っ、わっ……」
ガバリと頭を抱え込まれた状態で必死に藻掻くと、まだ目を覚まさぬ菊田が大きく口を開けて、こともあろうか、葉山の頬に噛みついた。
「っ……っ痛っ!」
◆
「で、ノリが『肉マーク』を書いたら、菊田が噛みついて歯形ができちゃったわけね」
「……はい」
翌日、出勤してきた姫川に顔をあわせるやいなや「えらく男前になったじゃないの!」とからかわれ、経緯を説明する羽目になった。
別に自分だって、少年のいたずらみたいに落書きをしたくてしたわけじゃない。
動機ならちゃんとある。
「でも、まあ……いいんじゃないの? それも」
何がいいのか葉山にはさっぱりわからなかったが、姫川は楽しそうだった。
周囲を見回すと、他の先輩たちもにやにやと笑っている。
姫川班以外の者に肉マーク事件を知られると「ふざけるな」と怒られそうなので、班内だけの話題にはなったが、慌ただしく過ぎてゆく日々の中での小さな休息となった。
葉山はみんなに囲まれながら、少しだけ居心地の良さを実感する。
自分が周囲に馴染んだのか、みんながあわせてくれたのか。
どちらにしても、いい方向に向かっている。
ずっとこんな日々が続けばいいのに。
小さくうなずいた後、誰にも気づかれないように、葉山はキュッと口角を上げたのだった。
(了)