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喫茶「藍色ノスタルジー」に寄せて。

お久しぶりです。アテクシです。
なんだかんだとオタク継続中です。
今日は朗読を観劇して色々と書きたくなったので、久々にnoteに筆を落としています。
基本的には観劇した前提で書いてますので、ネタバレを多分に含みます。
期間限定ですが配信もあるとのことなので、間に合えばぜひご覧ください。

応援している声優さんの一人、鶴野有紗さんがご出演された「藍色ノスタルジー」を観劇しました。
小さな会場の真ん中で、対面で2人ずつが立って朗読するという舞台構成が非常に新鮮でした。
この規模だからこそできる構成、かつ4人がそれぞれに対して様々な感情を抱いている、という構図を表現されているように感じました。

ヤマト。

今回登場する幼馴染4人の中でも、常に中心にいるような人物。
わかりやすくて、優しくて、バカだけどまっすぐ。
とにかく幼馴染3人のことが大好きで、この4人で生きていくことを大切にしたいと思っているのがすごく伝わってきました。
一方で、劇中でのターニングポイント=”剥がし”という手術を受け、特定の感情を失った後は、彼らしい「思いやり」がどこかへと消えてしまったような、そんな微妙なズレを感じました。
それが劇中、幼いころに出会った猫「ミケタロウ」との最期への向き合い方に表れていたような気がしています。

けどその日。
ウミが「命を懸けて主張する」ことを宣言したその瞬間。
彼の中の”剥がし”きれなかった想いが、あの「よーい、ドン!」の叫びに繋がったんだと思います。
「思い出せないなら、また始めればいいだろ」
ヤマトにとって何より大事だったのは、この4人でいつまでも仲良くいられることだったんだろうと思います。

ソラ。

ソラは思春期に最も早く3人から距離を取った人物。
決して幼馴染を嫌いになったわけじゃない。
けど、いつまでも子供じゃないんだからと彼女は語る。
中学生で告白された男子と付き合い、すぐに「なんか違う」と別れてしまい、高校に入学するとすぐに喫茶「藍色ノスタルジー」でバイトを始める。

これはあくまで個人的な考察ですが、ソラはきっと、すごく昔からヤマトに対して恋愛感情を抱いていたんだと思います。
けど、気弱でどんくさいウミを持ち前の優しさで気に掛けるヤマトを見て。
そんなヤマトに支えられているウミを見て。
ソラはかなり早い段階で諦めていたんだと思います。
”剥がし”によって感情が希薄になった後でも、ヤマトの選択の「違和感」に気づけたのは、彼女の根底にヤマトへの関心が抜けきっていなかったからではないでしょうか?

ウミ。

感情を失わせる手術=”剥がし”というキーワードに最も関わってくる人物。
彼女については演じた鶴野さんもご自身のブログで語られているので、こちらもぜひ読んでみてください。

落ち着いているときは聡明で冷静でありつつも、どちらかというと他人を優先しがち。
その根幹にあるのはおそらく、「プルチックの理」という宗教に嵌ってしまった、たった一人の肉親である母の存在。
「自分の感情を優先してしまったら、母はきっと自分の前から姿を消してしまうのでは?」
劇中において、少なくとも小4でこの家庭環境になっている以上、こういった思考になってしまっても仕方ないかなぁと考えていました。

母を失いたくない。けど、自分を大切にしてくれる幼馴染たちも好き。
その微妙な心のバランスは”剥がし”によって崩壊してしまったんだろうなぁと思います。

ミドリ。

語り部が移ろいゆく構成でありながら、本当の語り部である存在、と考察しています。
物語冒頭にあるように、彼は小説家として、自分を含むこの4人を題材とした新作を執筆しています。
一見ノンフィクションのようで、その実「ちゃんと思い出せない」と語るミドリ。

それは恐らく、彼が「この出来事を思い出したくないから」ではないかと考えています。
ウミが「命を懸けて主張する」ことを宣言したあの日。
結局、ウミを止められなかった後悔。
感情を剥がされていてもなお、彼の心にはそのことが本能的に引っかかっていたんだと思います。
”重ね”の手術を受け、その自責の念に押しつぶされることをどこかでわかっていて、それを避けていたんだろうと。
しかし、「作品」としてこれらの思い出と向き合うことで、ようやくミドリは1歩先に進むことができる。
”重ね”るかどうかは別として、彼は未来へ進むことを決めた。
「あの日」のその先の展開も書くことを決めたことが、その何よりの理由だと思います。

余談。

・安孫子さん、演技プランとして最も感情の起伏を抑えていながら、感情の動きがちゃんとある朗読、素敵でした。
・岡田さん、めちゃくちゃ美人でした。あと、ウミを見つめる優しい視線が印象的でした。
・土屋さん、アドリブが絶妙でした。最後の「よーい、ドン!」、身も心も震えました。あと、お見送りで「JK」ポーズする勇気が出ませんでした。
・鶴野有紗さん。笑顔がすごく素敵なのに、不安と緊張が入り混じった「宣言」の表情に惹かれてしまうのはなぜでしょう。
今にも消え行ってしまいそうな声や、無理をして高らかに「宣言」する時の声に、どうしようもなく心が揺さぶられるのはなぜでしょう。
あなたを好きなところはたくさんありますが、結局のところ「好きなことに理由はない」んだと思います。


気づいたら2000字も書いちゃった。
またこの4人+脚本の桐山さんの座組が観られることを願っています。


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