1人の持つ力は、本当にちっぽけなものである。
「CUE!」というコンテンツをご存知だろうか。
ポニーキャニオンとリベルエンタテインメントを中心に、新人声優のキャラクター達をフィーチャーし、デビューから成長を見守っていくことをベースとしたメディアミックスコンテンツである。
2019年10月にスマートフォンアプリとしてのサービスが開始。
アプリ内のショートアニメには、オリジナルキャストとしてのキャラクターが設定されているものの、コンテンツの軸となる16人全員からキャストを選択することができたり、アプリ内のシナリオはモブキャラ以外全員フルボイスなど、とにかく声優を全面に押し出したコンテンツ「だった」。
アプリは2021年4月30日をもってサービスを停止。
再リリースのために開発を継続する、ということになっていた。
一方で、TVアニメが2022年1月から2クールに渡って放送。
キャスト16人が出演するライブや、一部メンバーで展開する朗読劇の開催やCDリリース、タイアップのラジオの放送など、アプリ休止中もコンテンツの展開は継続されていた。
しかし冒頭に引用したように、リベルエンタテインメントは2022年7月23日で開発断念を発表。
2022年11月の4thライブをもってコンテンツのユニット「AiRBLUE」の活動休止も発表された。
また、タイアップのラジオ「A&G NEXT ICON 超! CUE!&A!」の放送が9月22日で終了することも発表された。
いつか来る終わり。
正直なところ、アニメが展開されても、ライブや朗読劇(以降、リーディングライブと表記)が毎月開催されていたとしても、個人的には「終わりはそう遠くないかもしれない」という覚悟のもとで「CUE!」を追いかけていた。
何人かには話したこともあったが「TVアニメが放送されたこの1年、CUE!に全力を注がなければ後々後悔するような気がしている」と考えて動いていた。
その予想が当たってほしくなかったし、「あの時こんなに無理しなくても、供給たくさんでありがたいよね」なんて笑い話をしている未来が来ることを望んでいた。
しかしというか、やはりというか、そうはならなかった。
これらの発表がされた際の感情は、一言で言い表すことはできない。
残念なのはもちろんだし、最初から追いかけてなかった悔しさもある。
まだまだ読みきれなかったアプリ内のシナリオもたくさんあった。
何より、まだまだ新たな16人の物語を知りたかった。
後悔と虚しさと欲望と。
それだけでは言い切れない、色んな感情と。
とにかく、ハッキリとしない感情が心の中で渦巻いている。
その辺りはキャラクターの1人「日名倉莉子」を演じる声優、鶴野有紗さんのブログが見事に的確に表現されているので、割愛する。
途中参戦故の部分は上に書いた通りで、それ以外は「代弁」と言えるほど鮮明に記されている。
決まってしまった未来の先で。
これらの確定事項に対して、今から大きく舵を切らせることはほぼ不可能だろう。
良くも悪くも、そんなに小さい規模のコンテンツではない。
どんなにファンの頭数を集めようとも「今更」でしかないと思う。
改めて、コンテンツを享受する1人のオタクの力など、本当に些末なのだと感じる。
私は私なりに「好き」であり続けたつもりでいるし、その気持ちをそれなりに伝えたい人々に伝えてきたつもりでいる。
しかし、それはあくまで自己満足でしかなく、より大きなものを動かすにはあまりに小さい。
今ファンの立場でできることは、これまでと変わらずコンテンツを愛し、「好き」の気持ちを発信し続け、無理のない範囲でライブやリーディングライブに参加し、グッズを買ったりすることで、コンテンツにお金を落とすことくらいだろう。
少しポジティブに思考を変えていくならば、11月のライブが終わった後も、他のコンテンツで活躍する出演声優の皆さんを引き続き応援し続けることで、「CUE!」はいい思い出や、未来へのきっかけになるのだと思う。
「今活躍してるあの声優さんたち、どの子もAiRBLUEが躍進のきっかけだったよね」
そんな風に言ってもらえる未来が来たならば、「CUE!」というコンテンツは少しでも救われるのではないだろうか。
私がやりたいこと。
一方で私の中では、自分の無力さに苛まれる他ない。
「CUE!」と同時進行で16人のうち8人で活動する「DIALOGUE+」というユニットがあったり、個人で別の大きなコンテンツに抜擢されたり、舞台や配信コンテンツで活躍されたりと、「CUE!」が展開されている間に、各々が活躍の場を広げている。
それは何より、彼女たち自身の魅力と努力に他ならない。
しかし、それをただ待つだけということにどうにもヤキモキしているのも事実である。
「こんなに魅力的な子たちなのに、まだまだそれを知らない人たちが多すぎる。声優やアニメに興味がない人たちならいざ知らず、オタクを自称する人にさえ、伝わっていない人が多すぎる」と感じている。
それは随分とエゴイスティックで、所詮1人の人間の力が及ぶ範囲の話ではないことも重々承知だ。
しかし、コンテンツを中心で動かしている船頭も、たった1人の人間だ。
また、そんな彼女たちを紹介し、活躍の場を広げようと頑張る1人の尊敬すべき人がいる。
規模は大小あるかもしれないし、その先で多くの人間を動かしていることも踏まえた上で敢えて「1人の人間の力」というものの差を感じざるを得ないのだ。
詳細は省略するが、今日ほど「あの日自分の夢から遠ざかること」を選んだのを呪ったことはない。
あの日そのままの道を歩き続けることを選んでいたとしたら。
彼女たちに出会うのはもっと先だったかもしれないが、それでも自分に何かを動かす「力」があれば……と、今無力な自分をひたすら呪っている。
力が欲しい。
彼女たちがもっとより多くの日の目を浴びられるようにできる力が。
あるいは、そもそも活躍の場を提供できるような力が。
魂をかけたコンテンツが終わりを迎えることよりも、その事への後悔の方が、今は大きい。
DIALOGUE+に触れ、1人の子に心を奪われた日から「コンテンツに何があっても、この子やこの子たち8人、そしてAiRBLUEの16人のことは応援し続けよう」と決めていた。
それはブレることはない。
しかし、単に客としている以外に、今持っているもので何ができるだろう、と悩み続けてはいる。
今の私にできることは、せいぜいこうして筆を走らせることくらいだ。
それで何がどこまでできるかわからないし、終わりを迎えたコンテンツに対して亡霊のように縋り続けることが正解かどうかもわからないが、ただのファンだからできる発信もあるのでは、ということも少し考えている。
誰かに何かに迷惑がかからない限り、やりたいことはやってみようと考えている。