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木造建築知識「日本のブランド木材を巡る旅:地域の誇りと職人技」

日本には各地に育まれた「ブランド木材」が存在し、それぞれの地域で長年大切にされてきました。林業が盛んな地域では、木材は単なる建材ではなく、地域の誇りであり、代々受け継がれてきた職人技が詰まっています。この記事では、実際に林業の林業体験を行った埼玉県飯能市と佐賀県神埼市でのエピソードを紹介しながら、日本各地のブランド木材の魅力に迫ります。


1. 埼玉県飯能市の山での林業体験:武蔵の自然と人の繋がり

埼玉県飯能市 西川材の森林

埼玉県飯能市は、都心からのアクセスが良く、豊かな自然が広がる場所です。武蔵の山々で林業体験を通じて、日本の木材産業の伝統に触れることができました。

体験の流れ
木材コーディネーター基礎講座を受講。
https://school.soundwoods.net
埼玉県飯能の山において林業演習に参加し、地元の林業の方々が丁寧に木材の成長や伐採の流れについて説明してくれました。樹齢何十年もの木を丁寧に管理し、自然のサイクルを大切にしながら林業を行っています。樹齢を重ねた木の選定、伐採後の利用方法、伐採した木は後に関東地区をはじめとする主の建材や家具として使用され、地元の暮らしに溶け込んでいきます。

飯能のブランド木材「西川材」
飯能で代表的なブランド木材「西川材」は、特に建材としての質が高く、柱や梁などに広く用いられています。江戸時代、この地方から木材を筏により江戸へ流送していたので、「江戸の西の方の川から来る材」という意味から、この地方の材が「西川材」と呼ばれるようになりました。
西川材の特徴は、適度な硬さと強度、そして美しい木目。埼玉県の伝統的な家屋建築には欠かせない木材で、林業者が自然の循環を守りながら育てているため、環境にも配慮されています。


2. 佐賀県神埼市の山での伐採体験:九州の木と地域社会

佐賀県神埼市の森林


九州地方に位置する佐賀県神埼市の山々も、林業が盛んな場所として知られています。
佐賀県神埼市の森林で行った伐採体験では、九州ならではの独特な風土と地域の文化に触れることができました。

体験の流れ
「NPO森林をつくろう」https://mori-tukurou.com主催の伐採体験に参加。チェーンソーを用いた伐採の手順、代々森を育ててきた生産者様の声を大切に、木を使わせてもらう気持ちを持ち続けることが大切なことを教えていただきました。
木を切り倒す瞬間は迫力があり、自然の力を感じられる瞬間でした。一つ一つの工程に地域の知恵が込められています。九州の温暖な気候で育った木材は質が良く、建物や家具に使われています。

気づき
埼玉県飯能と佐賀県神埼の林業体験を通じて、日本の木造建築を支える全国各地の特徴ある木材が地域社会と深く結びついていることを実感しました。自然と共に歩み、伝統の技術を守り続ける林業者の努力により、日本各地で育まれた木材は、地域のアイデンティティや誇りとなっています。

日本全国には、他にも多くのブランド木材があり、それぞれの地域で異なる特性や美しさを持っています。これらの木材は、単なる建材としてだけでなく、日本の文化や伝統を支える重要な要素であり、持続可能な社会の実現にも貢献する存在です。今後も、地域の木材と職人の技が織り成す「木造建築」の未来に期待が寄せられています。


3. 日本全国のブランド木材:地域の特産と職人の技

日本全国には、それぞれの地域に根付いたブランド木材があり、個性と魅力が詰まっています。これらの木材は、気候や風土、そして林業の伝統が織りなす地域の宝物ともいえるものです。以下、日本各地の代表的なブランド木材をいくつか紹介します。

青森ヒバ(青森県)
日本三大美林のひとつ。青森県津軽地方で産出される「津軽ヒバ」は、ヒノキ科の中でも耐朽性が非常に高い木材です。特に水や湿気に強いため、温泉地の浴室材や住宅の土台材としてよく使用されています。また、芳香性があり、リラックス効果が期待される木材です。
 東北森林管理局では、かつての美林の姿を明らかにするとともに、新たに美林を増やしていくための課題を整理し、その手法について検討・試行するため、「青森ヒバの美林誘導プロジェクト」を実施しています。
青森ヒバ関連ホームページ


秋田杉(秋田県)
日本三大美林のひとつ。秋田の冷涼な気候で育つ「秋田杉」は、木目が緻密で滑らか。特に香りが良く、建物の構造材や内装材、また工芸品にも広く利用されています。
東北森林管理局では、かつての美林の姿を明らかにするとともに、新たに美林を増やしていくための課題を整理し、その手法について検討・試行するため、「秋田スギの美林誘導プロジェクト」を実施しています。
秋田杉の紹介ページ


西川材(埼玉県)
埼玉県の西川地域で産出される「西川材」は、主にスギやヒノキを中心とした木材で、建築用材として高い品質を誇ります。香りがよく、湿気に強いことから、内装材や構造材としても重宝されています。
西川材ホームページ


山武杉(千葉県)
千葉県山武地域で育成される「山武杉」は、湿気に強く、非常に軽量で加工がしやすい特性を持っています。香りが豊かで、住宅や内装材に多く用いられています。また、地元の工芸品などにも幅広く活用されています。
山武杉の紹介ページ


木曽ヒノキ(長野県)
日本三大美林のひとつ。長野県の木曽地方で産出される「木曽ヒノキ」は、極めて緻密で美しい木目が特長です。その耐久性と強度から、建築用材や神社仏閣の柱など、伝統建築に欠かせない木材として広く用いられています。
木曽ヒノキの紹介ページ


飛騨高山のスギ・ヒノキ(岐阜県)
岐阜県の飛騨地方で産出されるスギやヒノキは、寒冷な気候の中でゆっくりと成長し、年輪が詰まって美しい木目を持っています。耐久性が高く、家具や建築材として古くから利用されてきました。特に飛騨高山の家具は全国的にも高品質な製品として知られています。
飛騨高山森林組合


東濃ヒノキ(岐阜県)
岐阜県東濃地方で生産される「東濃桧」は、年輪が詰まって緻密で、香りが強く、美しい木目が特徴です。建築材や家具材としても人気があり、神社仏閣の建築にもよく使われています。
東濃ヒノキ紹介ページ


天竜材(静岡県)
静岡県の天竜地域で生産される「天竜材」は、木目がまっすぐで加工しやすい特性があり、建築用材として広く利用されています。持続可能な林業の取り組みが進められており、環境に配慮した木材として注目されています。
天竜材の紹介ページ


富士ヒノキ(静岡県)
静岡県の富士山周辺で育つ「富士ヒノキ」は、富士山の清らかな水と気候の影響を受けて成長するため、均一で美しい木目が特徴です。耐久性が高く、香りが良いため、住宅の柱材や内装材として人気があります。
富士ヒノキの紹介ページ


北山杉(京都府)
京都府の北山地域で育成される「北山杉」は、江戸時代から続く伝統的な林業で育まれたスギで、均一な年輪と美しい直線的な木目が特徴です。特に「磨き丸太」と呼ばれる加工方法で、柱材や内装材として高級住宅や伝統的な茶室の建築に重宝されています。香りが良く、独特の上品な風合いが日本建築の美しさを引き立てます。
京都杉の紹介ページ


吉野杉(奈良県)
吉野の山々で育まれた「吉野杉」は、赤みがかった色合いと均一な木目が特徴です。特に高級家具や住宅の内装材として使用され、温かみのある風合いが評価されています。
吉野中央森林組合


紀州材(和歌山県)
和歌山県で生産される「紀州材」は、主にスギやヒノキを指します。紀州スギは香りが良く、軽量で加工がしやすいため建材として非常に人気です。紀州ヒノキは耐水性が高く、色合いも美しいため、特に建物の内装材や風呂桶などに適しています。
紀州材の紹介ページ


尾鷲ヒノキ(三重県)
三重県尾鷲地域で育つ「尾鷲ヒノキ」は、高温多湿な気候に適応して育ったため、耐久性が高く、美しい白色の木肌が特徴です。社寺建築などにも使用され、格式のある木材として評価されています。
尾鷲ヒノキの紹介ページ


美作ヒノキ(岡山県)
ヒノキの生産量日本一の美作。岡山県美作地方で採れる「美作桧」は、質の高いヒノキ材で知られ、淡いピンクがかった美しい木肌が特徴です。香りも良く、耐久性があるため、住宅や家具、またインテリア材として多く利用されています。
カリモク商品にて使用
カリモクホームページより


飫肥杉(宮崎県)
飫肥杉の産地である宮崎県はスギの生産量が26年連続で日本一。日照時間が長く温暖で湿潤な気候により、一般的なスギに比べて生育が早く、年輪幅が広い飫肥杉が育ちます。幹が太いが軽量で強度が高いことから、造船用材としての評価が高く、そのおかげで次第に林業が発展していきました。宮崎県南部の飫肥地域で育つ「飫肥杉」は、赤みが強く、美しい木肌が特徴です。軽量で加工しやすく、建築材や家具材としての需要が高いです。また、湿気に強い性質から、住宅の内装材としても使用されています。赤身部分だけを使った大径木高耐久赤身材のObiREDは飫肥杉を使用。
ObiRED紹介ページ


佐賀のスギ、ヒノキ(佐賀県)
佐賀県の人工林率は67%と全国1位です。県北東部の脊振山地や南西部の多良岳山地を中心にスギやヒノキの植林が積極的に進められました。多良岳山地から誕生した「多良岳材」は、丁寧な枝打ちや間伐等による優良材でブランド化が進められています。また、県南の佐賀市諸富町は、伝統的な工芸品として県の地場産品の指定を受けた家具産地です。
 また、半世紀以上にわたる研究の結果、全国に先駆けて次世代スギ精英樹「サガンスギ」の開発に成功しています。
サガンスギの紹介ページ


小国杉(熊本県)
熊本県小国町で育成される「小国杉」は、年輪が美しく、香りも豊かで、特に住宅の内装材や家具材として高く評価されています。地域の特産品として、地元産の「小国杉」を使用した家づくりも広く行われています。
小国杉の紹介ページ


日田杉(大分県)
大分県日田地方で産出される「日田杉」は、香りが良く、年輪が美しいのが特徴です。湿気に強く、加工がしやすいため、住宅や家具材として重宝されています。
日田杉の紹介ページ


屋久杉(鹿児島県)
世界遺産の島、屋久島で育つ「屋久杉」は、樹齢数千年に達するものもあり、その独特な年輪と美しい木目が特徴です。希少価値が高く、家具や工芸品に使われていますが、保護活動が行われており、限定的な利用にとどまっています。
屋久島森林保全センター


各ブランド木材に関する詳細は、地域の森林組合のホームページでさらにご覧いただけます。

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