小さな世界 #1 【一番むかしの記憶】
ふらっと実家に帰ってきた。
幼稚園が休みになり、子どもたちは毎日することもなくなり、ちょっとした息抜きです。
気づけば僕も高校を卒業をして実家を出ていってからのほうが長くなりつつある。気づけばもうおじさんになった。
子どもたちは、朝からおばあちゃんと妻と畑でてんとう虫を探していたらしい。
(撮影:長男)
世間の喧騒とは離れた穏やかな時間が流れている。
子どもたちはてんとう虫がたくさんいたと大はしゃぎで教えてくれた。
話を聞いているうちに、ふと、自分の小さな頃の記憶が蘇ってきた。多分、これが一番小さい頃の鮮明な記憶だ。
一番むかしの記憶 〜幼稚園からの脱走
僕は長男として生まれた。小さい頃はとにかく泣き虫だった。
3歳になって幼稚園に行き始めたが、嫌で嫌で仕方なかった。
毎日幼稚園で泣いては、カバンをしまうロッカーに1日中入って泣いていた。狭いロッカーだったけど、僕にとっては唯一の逃げ場だった。
ある日僕は、何を思ったのか幼稚園からの脱出を試みた。
先生の目を盗んで、入り口の門を開け、後ろも振り返らず全力で家に向かってダッシュした。
3歳児の大冒険だ。
まもなく先生にいないことが見つかり、後ろから追いかけてくるのが分かった。大きな声で僕を呼ぶ声が聞こえた。
先生も必死だったと思う。万が一のことでもあったら大問題だ。
でも振り返るわけにはいかなかった。
目の前には赤信号がある。3歳にもなれば「赤は止まれ」くらいは知っている。
人生で初めての「信号無視」だ。
行くしかないと道に飛び出したが、あえなく信号を渡ったところでつかまってしまった。
つかまって幼稚園に戻されるわけにはいかなかったのだ。当時の僕にとってはそれくらい幼稚園が嫌だった。
幼稚園という小さな世界が、僕にとってはこの世のすべてだった。
そのとき見えてた小さな世界が僕を支配していた。
(つづく)
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