小さな世界 #3 【秘密基地】
まだまだ昔の記憶が呼び起こされてくる。
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秘密基地
僕が育った家は、田舎だったこともあり庭がむちゃくちゃ広かった。
春にはつくしやふきのとうが自生し、夏にはスイカを収穫し、秋には柿が大量になる。本当に自然豊かだった。
小学生になるまで、みんなそんなもんだろうと思っていたが、全然そうじゃなかった。今思えばすごく良い環境で育ててもらった。
庭の片隅に樹齢100年はゆうに越すと思われる、巨大な椎の木があった。
まだ小さかった僕は自分の部屋もなく、何を思ったか一丁前に「自分だけの空間」がほしかった。
秘密基地だ。
その椎の木の下に僕だけの基地を作ると決めた。
基地と言えば、座る場所がいる。僕は家からダンボールを引っ張り出してきて、木の下に引いた。
次は武器だ。戦う相手はいないけど、当時ジェットマンという戦隊ものをテレビでやっていて、分かりやすく影響を受け、敵と戦うことが正義だと勘違いしていた。
なんの変哲もない鉄屑や、木の棒が当時は光輝く武器だった。家の中の倉庫や庭から目ぼしいものを集めて置いておくことにした。
ある日雨が降った。
雨が降った翌日はダンボールがぐちゃぐちゃになっていた。とても座れる状態じゃない。
それからは雨もしのげるように、家から壊れかけの傘を持ち出して開いて置いておくことにした。屋根の完成だ。
まだ小さかった僕は、特に何をするわけでもなく幼稚園から帰ると庭の基地にいった。
「空間」に憧れていたのだ。自分しか知らない秘密の場所ができただけ。それだけで、心が踊った。
「秘密」というのは人間の心を豊かにするのかもしれない。
秘密基地を作っていたことは、今日まで秘密だった。いい大人だし、さすがにもうバレてもいいかな。
(つづく)
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