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0149「四季」
春は印字の擦れたレシート。誰かに呼ばれて産業道路を歩く。人のいない部屋ではダニが陽に焼かれ、朽ちていく間に夏になる。メンソレータムの故郷。革張りのソファ。暗がりで蕎麦を啜る小学生。ひとつの焦燥。はぐらかされた予定。秋は憧れ。着るものを選ばずに葬列の最後尾に並ぶ。自分の乗るバスだけがいつまでも来ない停留所。紙の地図を買い、安いパンを見過ごし、形の良い石を拾う。川肌から湯気が立ち上る。若い鹿のつがいに手を振る。ため息はひとりごとへ、ひとりごとは宛先不明の手紙へ。罫線が雪で滲むことによって屋外だとわかる。誰かに呼ばれて振り返る。山の連なり。音楽の後退。冬の退場。