![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152904273/rectangle_large_type_2_a63c9ac39c090dee49f0c209ea2410cc.jpeg?width=1200)
0122「冬」
キャッチボールがしたい、と恋人に話すと
買ったよ、とこちらを見ずにひとこと。
なにを?という顔で、首をかしげて眼を見ると
わたしの目の前にスマートフォンをかざして、
メル
カリとさらにひとこと。
それが先週の話で、届いたグローブ
には油性ペンで「たくと」
「たくと」はかび臭い。古き良きクソみたいな
におい。
お互いの鼻に「たくと」をあてがって、クソみたいにげらげら笑い合った。
わたしのグローブには「しょうま」これも油性ペンこれもメルカリ。
「しょうま」がわたしの家に届いたのは、いつだったっけかな、そう、
まだわたしが京都にいて、
国だか行政だか、
古き良きクソみたいな場所から送られてきた朱色の封筒を、
開
けられずに、ネタとして職場に持っていったころだったはず。
督促やろこれはまだ大丈夫やわ。
焼却炉みたいにデカイ図体 コックさんに
眼差しで殴り殺されてひとこと、
でも封筒を開
いたら差し押さえで、
これはたぶんあかんわ、思いのほかやさしくて、それはコックさんの話。
そのころのわたしにはキャッチボールをしたい別の人がいて
その人もメルカリだったから「 」とどこかしら、書
かれていたはずなのだけど、
その話はしたのだっけなしたのだろうな。
油性ペンなら消えない。趨勢ならどうかな。
話の尾ひれもパッチパチに輝いて
くっついて消えるだろうなボールはグローブに吸い込まれていくから
その現象を真
実にするために眼で追っていく。夜だった。
そのころからの「しょうま」だったから、かび?って顔して、においだってしない。
土曜日
天気がよかったらしようよ。
言われて、天気予報を見るのが仕方のない
降水確率が絶望的で。もうこれはあれやろ。
恋人はわたしの目の前にスマートフォンをかざして、
ぼくのは雪だよ。
ほんとうだ。
それがおとといの話。
やわい風で容易になびく雪
を
前景に
後景
に、
吸い込まれていく。
その現象を真実にするために眼で追っていく。