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みんなに"伝わる"結婚式

1.背景

この話はひょんなところから始まります。

「みんなに感謝を伝えられる結婚式をつくりたい」
これは、私の友人が結婚式を企画する際にお願いされた事です。

企画の内容はというと…文化センターのホールを貸し切って、
そこでアットホームな結婚式を仲間みんなでつくる。

進行から配膳、食事に至るまで、すべて賛同する個人・企業が
スタッフとして参加し、手作りで進める計画でした。

そんなプロジェクトが、彼の周りにいるメンバーが
繋がりながら、ひろがっていきました。

2.今回のミッション

今回の結婚式では、海外から来られる方もいるけれども、
果たして 中身がちゃんと伝わるんだろうか?
ぽつんと座っているだけじゃ、場を共有できないんじゃないか?
なんてことにふと気づきます。

通訳を付ける手もあるけど、もっと自然に、
みんなと同じタイミングで 伝わらないだろうか?

そんなとき、機械をうまく使う方法にたどり着きます。
「機械で翻訳までさせちゃえば、わかるかも」

それに、会場はだいぶ盛り上がって声も大きくなるとなると、
耳が遠い方も 聞き取りづらいこともおおくなるでしょう。
「日本語も出てたほうがわかりやすいよね。」

今回はスタッフ側からの提案もしやすい環境で、
新郎新婦もチャレンジに理解を示してくれる方々なので
仕組みなども含めて任せてもらえることになりました。

そこで、
①日本語と外国語を両方だす
②本来出すべき映像などもうまく合成して支障のないようにする
③少人数で回せる方法にする
これらが実現できる手段をとることにしました。

3.会場構成

今回使う会場は、公共の施設である「文化センター」の多目的ホール。
昔はこういう場所で結婚式をやるケースも多かったようですが、
最近はもっぱら結婚式場でやることが多くなっているようです。

今回はここで式を作り上げることになりました。

会場の中はこんな感じです。
この大きいスクリーンをうまく使います。

実際には、高砂は別の所に作り、このスクリーンは
余興や案内といった内容につかいました。


4.機材構成

この会場で、余興・字幕・案内をすべてうまく出すために、
機材構成は下記のようにしました。

音声認識には、UDトーク®を用いて翻訳まで実施し、
まあちゃん2017で誤字を訂正、ミキサーで映像合成したうえで
プロジェクターでスクリーン投影しました。

今回は、聴覚障害のある方への支援、というわけではなかったので、
あえてヒアリングループ(磁器誘導ループ)などは組み込みませんでした。

ちなみに、使った機材は、
・iPad Pro (リハ時:iPhone6)
・音声入力:iRig2
UDトーク® (無料アカウント+連続認識アドオン)
まあちゃん2017 Release 48
・カメラ:Canon Ivis HF21
・DVD(BD)プレーヤー:Panasonic DMP-DP88 (リハ時:Sony DVD Player)
・ビデオミキサ:Rorland V-4 EX
・プロジェクタ:NEC  NP2150(4200lm)
・プレビューモニタ:32inch HDMIモニタ

オペレーションエリアはこんな感じになりました。

今回は、UDトーク®という音声認識アプリを使っています。
認識エンジンはAmiVoice® Cloudが使われています。

簡単に図解すると、こんなかんじ。

音声認識の標準辞書では、個人の名前やサークル名、
イベント名などは 一発で正しく変換するのが難しいことがあります。
(とくに造語や愛称などは 日本語辞書にないことも多いのです)

なので、今回は事前に単語登録をして、認識結果の調整をしました。
今のUDトーク®は法人ユーザ向けに用意されていた単語登録機能が
無料ユーザにも開放され「単語登録アカウント」という機能が付きました。
今回はこれをうまくつかって認識結果の精度をあげています。

当日のアナウンスでは、機械的に翻訳してますよ、と
案内して頂くものの、おめでたい席ですから、
表に出すのが憚られる言葉は修正したいってものです。

今回は、文字訂正を効率的に行えるアプリ「まあちゃん2017」で
文字訂正を行いました。オペレーションエリアに1台おいて、
画面を操作しながら 誤字をちょこっと直す、といった感じです。

5.実際はどうだったか

実際の見え方はこんな感じです。
司会が話したと同時に、日本語と外国語に翻訳されて出てきています。

各卓巡りの時は、会場をカメラで写して、下には字幕がでるなど、
だいぶ凝ったオペレーションをしてみました。
(もはや 個人的趣味、オペレータの自己満足の世界・・・ですね^^;)

会場のなかでは、「おお、すげー、どんどん文字になっている!」という声や、ちょっと聞きそびれたときに読み返すなど、みんながそれぞれの形で字幕も楽しんでくれたようでした。

「ちょっとした”言葉”のおもてなし」としても、
有用なのではないでしょうか。

ちなみに・・・2次会でも この問題はつきまといます。
2次会では 超簡易構成で字幕を実現しました。

ちなみにUSBスピーカーは、Sony SRX-33 。
そんなに高くないバッテリー式のモバイルスピーカーです。

2次会では、「翻訳のためにマイクを持って!」とお願いしても
(お酒もはいっている事もあり)意識的に使いにくいようでしたが、
モバイルスピーカーをつけて、「これで話せばみんなに聞こえる」という
場を作ることで みんなが無意識にマイクをつかい、結果的に
字幕も翻訳されて出る、という良い環境を作ることができました。

ユニバーサルな環境を実現するのに不可欠な要素・視点として、
「みんなが使いたくなるように、”環境をつくる”」必要がある、
ということを再認識しました。

そういう意味でも、音声字幕・翻訳字幕は
場を整える「設備」として 一式用意できるようにしておくと
敷居がぐっとさがるのかもしれません。

6.今回の反省点

今回のウェディングパーティの前日リハの時点で
分かっていたことではあるのですが、音声入力をとるPAの端子として
「モニタアウト」をつかったので、会場BGMと混ざって
認識率が下がるケースは時折ありました。
(今回は有線・無線が入り混じる機器構成だったので、
 BGMが混ざることは当初より了解事項としていたのでした)

こういうケースでは、ワイヤレスマイクやマイク専用のPA端子から
出力をとって、音声認識に回すと認識率がUPします。

デジタルミキサーだと、グルーピング機能があるので、
比較的簡単に振り分けができるかと思います。

今回、皆さんが誤字も含めて 比較的好意的に受け止めてくださったようで
文字訂正をしたりしたものの、大きな問題もなく終了できました。

7.みんなが楽しめる、結婚式・イベントを!

実際にはもっと簡素な構成でも 字幕は充分出すことが可能です。
そして、もっといろんな場にも適用ができます。
結婚式に限らず、講演会、レセプション、授業、イベント等・・・。

私は比較的やりすぎるので(^^;
機器構成がとっても複雑にみえるかもしれません。
その点は私が満足できるレベルまでやらないと気が済まないだけなので。
(しっかりエンタテイメント感を出したいだけなんです^^;)

みなさんも、ぜひ色々実践してみてください。
そして、終わったら、やった内容を総括してみてください。
 
あとから冷静に思い返してみると、新たな発見があるかもしれません。
note にかいてみるのって、そういう意味でもいいですよ。
実績を皆さんに紹介して、そういう場を増やす、という意味でも。


開発したり研究したりするのに時間と費用がとてもかかるので、頂いたお気持ちはその費用に補填させていただきます。