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BIRDMAN,羽ばたく!

「クロノロジー」がいいって
言ってくれる人が多くて、
そこは、やっぱりそうですか、って(笑)


——アルバム『BIRDMAN』大好評ですが、どんな反応が届いてますか?

和田 意外だった反応は、この曲が刺さるんだ、っていうのがありましたね。たとえば「Boy」は、俺の中では"アルバムの中の1曲"だったけど。

——メインというわけではないけど、っていう。

和田 そうそう。でも意外とあれがいいって言われたり。長谷川誠さんも個人的に好きな曲として挙げてくれたり(注・長谷川さんによるインタビューはこちら)。あ、そうなんですか、って新鮮でした。あとは「クロノロジー」がいいって言ってくれる人が多くて、そこは、ああ、やっぱりそうですか、って(笑)。

——あれは本当に素晴らしい。

和田 ありがとうございます!

——以前、毎月のように取材をさせてもらっていたころ、新曲が出るたびに取材の資料として発売前の音源をいただくんですけど、何の先入観もなく「Rock Music」を聴いたとき、めちゃくちゃ感動したんですよ。「クロノロジー」はそのときと同じくらい、すごい曲だなって思いました。

和田 「Rock Music」はシングル曲として俺は作ったんだけど、当時のレコード会社のディレクターが「シングルとしては渋すぎる」ってネガティブな意見をぶつけてきたから、俺、怒っちゃってさ、「それを売るのがあなたたちでしょ!」みたいな。それでディレクターもハッとしたのか、打開策として、もう1曲キャッチーなものを作って、「Rock Music」と両A面で出しましょうということになって、それで「赤いゴーカート」を作ったの。

——そうなんですね。

和田 だから「Rock Music」って言われるとパッとそのシーンを思い出す。あれはひとつのリフでずーっと行く、J-POPとはかけ離れたストイックな曲だったから、それをシングルとして、しかもメジャーなレコード会社から出そうなんて、俺も相当、生意気だったと思うよ(笑)。でも、あれをプロモーションしてほしかったんだろうね。勝負したかったんだと思う。これが世に広まったらバンドの可能性がもっと広がると思ったんだろうね。

 * * *

和田唱にインタビューすると、ときどき出てくる、これまでのレコード会社あるいはプロデューサーと果敢に闘う場面。こういう音楽をやりたいというあくなき情熱と、そこに容赦なく水をかけてくる大人の厳しい判断との狭間で、彼はジレンマに襲われながらも、自らの音楽を死守してきた。いくら消されようとしたところで決して消えるはずのない信念は、音楽と誠実に向き合ってきたことの証でもある。

2018年リリースのファーストソロアルバム『地球 東京 僕の部屋』、セカンド『ALBUM.』(2020)、そして最新作『BIRDMAN』(2024)、もちろんTRICERATOPSの現段階での最新作『Unite / Divide』(2022)にも、磨きがかかった正直さと、それゆえに滴る鮮烈な血が色濃く流れている。

それでも彼は幼少期からあらゆる上質な音楽に触れて育ち、音楽だけが持ち得る夢や冒険を知り尽くしている人だ。彼が生み出す美しいハーモニーは、感情のまま吐き出された言葉にもふくよかな空気を吹き込み、聴く人たちを幸福に(あるいは絶望と隣り合わせの希望に)導いてくれる。

『BIRDMAN』は文字通り、音楽家としての彼の羽ばたきを証明したアルバムといえるだろう。耳と心を凝らして注意深く聴きたい作品である。

 * * *


和田
 「クロノロジー」は攻めてるっていうか、俺が好きなことをやったって感じかな。

——表立って音楽の仕事をしている人は、やっぱり聴いてくれる人がいることを意識しなければいけないと思うんだけど、そのフィールドであれができるっていうことがかっこいいなって思いました。

和田 なるほどなるほど! たしかにそういうことはいつも考えているかもしれない。また「Rock Music」に話が戻るけど、あれはずっとワンコードで展開していく曲だけどそれだけでいいのかって言ったらそんなことはなくて。いかにその中でキャッチーなメロディにしていくかっていうのは考えた。ちょっとマニアックな話になるけど、♪Rock music Rock music 欲しいものはそれだけ〜〜、っていうメロディはマイナースケールを使っていて、もしここに違うコードをつけたら演歌にも聴こえちゃうような悲しい音階なの。それをああいうペンタトニックっていうブルース音階のリフに載せることでポップになる。マイケル(・ジャクソン)の「ビリー・ジーン」も、うしろは♪ドゥンドゥンドゥンドゥン・ドゥンドゥンドゥンドゥン……っていうリフなのに、そこに♪Billie Jean is not my lover……(サビを歌う)、演歌みたいなマイナーなメロディがついてるわけ! だからマイケルはわかっていたんだと思う。どの国の人にもわかりやすく伝わる曲になって全世界で大ヒットしたんだから。そういうことを「Rock Music」でもやろうと思った。聴く人のことを考えるってそういうことだよね。

——そうですね。そういう音楽の複雑な理論がわからない人たちにも、いい曲としてちゃんと伝わる。

和田 「ロケットに乗って」では図らずもビートルズの「DAY TRIPPER」と同じようなことが起こってて。リフは渋いペンタトニックスケールで、そこに乗ってるメロディはメジャースケール。そのときは何もわからずにやってたけど、結果的にポップなものになってた。今だったら計算してそれをやっちゃうけど。

——「Rock Music」のときは敢えてそういうことを。

和田 そう。作曲は無知の強さっていうのがすごいある。子供の絵と一緒。ルールや常識を知らないときって強いものができるでしょ。その感覚は取り戻したくても取り戻せないから。なるだけ天然で作りたいと思うけど。

——もはやそれは難しいよね。

和田 難しいね。だからそうじゃないところ、洗練を目指したいね。小田(和正)さんの曲は洗練されてるなと思う。メロディラインが玄人だなって思うし、言葉も少ない中で丁寧に作られてるから。ある部分では目指したいところ。無駄のない作曲というか。

——歌詞も?

和田 そう、いずれね。少しずつやってはいるんだよ。たとえば『ALBUM.』に入ってる「さよならじゃなかった」は音符も言葉もすごく少ない。



今回のサウンドの感触は
すごくポップだと思うんだけど、
歌詞に関しては斬り込みたい

——今回の『BIRDMAN』ではかなり冗舌な印象ですが。

和田 今回はたっぷり書いたね(笑)。言いたいこともあったしね。音楽に関しては、自分で言うのもナンだけど、子供のころからいろんな音楽を聴いてきたから、たぶん成熟してたと思う。KANさんにも俺の転調とそこからの戻り方をものすごく褒められたくらい。これは技が問われるんだよ。転調することがすごいんじゃなくて、自然に戻すことがすごいわけ。KANさんは「戻す責任」って言ってた(笑)。それは本当にそのとおりだと思うね。だから作曲に関してはわりと初期から成熟してたと思うけど、その分、歌詞は全然青かった。だからこれから自分でもいかに変わっていけるか、成熟していけるか、トライのしがいがあるよね。

——歌詞に関しては、今までもいろんな歌詞を書いてきたわけですが。

和田 う〜ん、まあまあ、まあ、そうだね。

——歌詞に対する考え方は変わってきてるんですか?

和田 ずーっと、トラウマになるようなことはいっぱいあったよ。プロデューサーに何か言われるという……ね?(笑)レコーディングで、エンジニアやメンバーが待ってる間、ロビーで、俺はもう完成させてたつもりの歌詞を、(プロデューサーが)「ちょっと唱くん、これなんだけど……」って始まっちゃうの(笑)。あー、また直さなきゃいけないのか、って。みんなを待たせてるし、まだ1行も歌ってないし、どんどん時間が経っていくし。そのもう一方では、なんで直さなきゃいけないんだってフラストレーションもあるし、傷ついてもいるわけ。そんなのが何度もあったから。

——初期のころ?

和田 いやいやいやいや、『SONGS FOR THE STARLIGHT』(2014)まであったよ。そんな昔じゃない、もう十分、大人だったよ(笑)。まぁ、このころにはそういうのも1〜2曲だったけどね。たとえば「HOLLYWOOD」っていう曲なんか、最初はもっと抽象的な歌詞だったの。ハリウッドはあくまで比喩で、偽りの世界のことを歌っていて。それはのちのち「CLUB ZOO」とか「ROSIE」とか、『Unite / Divide』で思う存分やったけど、『〜STARLIGHT』の時期から俺はそういうモードが始まってて。あくまでハリウッドは作られた世界、みんなが信じちゃってる世界、つまりマトリックス。でもそれが相当わかりにくかったみたいで。呼び出しをくらって、さすがに俺も機嫌を損ねちゃってね、変な空気になっちゃったんだよ。で、結局、俺が折れたんだね。そうやって、もともと考えてた世界観が人の意見によって変わっていくと、妙な味付けになって、結果ハリウッドが本当のハリウッド映画のことみたいになっちゃったわけ(笑)。

——そういう顛末があったんですね。

和田 まだ歌詞なんて書いたことがなかった若いときに、絶対的な存在として現れた人の言うことには従わなきゃいけないんだって気持ちが30代終わりになっても続いたね。まあ、結果、今は自由に(歌詞を)書けるようになったし、人生のコントラストを知ることで、ああ、今の俺はハッピーって思えるからいいんだよ。それにもちろんプロデューサーから学んだことはいっぱいあるし、今でもめちゃ役に立ってるよ。ただかつては歌詞を書こうとすると、また直されるのかなって気持ちが同時に働くから、トラウマになったし、歌詞を書くことにビビってた。でも、俺も悪いよ。堂々と「いやいや、これで行きます」って説得できなかったんだから。自信も勇気もなかったんだろうね。

——今はどうですか?

和田 純粋に自分の気持ちをリスナーの人とか世間に向けて歌えるようになったと思う。「Shout!」あたりからは、余計なことは気にせず書けるようになったかな。あのあとソロアルバムがあって、そこから今に至るから。

——作詞の技術もさることながら、歌っている内容はかなり赤裸々な。

和田 一応、ロックミュージシャンっていう自負があるから。今回のサウンドの感触はすごくポップだと思うんだけど、歌詞に関しては斬り込みたい。かなり皮肉っぽかったりとか、覚醒を促せたらいいなっていう気持ちもあるし、ファンの人に対して。あと、おもしろいのは、昔よりも断然ダブルミーニングで書いてるものもあって。たとえばすごく変なことを歌ってたりするんだけど、誰からも突っ込まれないんだよ(笑)。

——どの曲?

和田 たとえば「終身刑」。

——実は今日、「終身刑」の話をしたいなと思ってたんだけど、してもいいのかなっていうのもあって(笑)。

和田 あれはふざけた歌なんだよ。

——これ、奥さまが聴いたらどう思うんだろう、とかって。

和田 じゃあ、森田さんはこの歌の意味がわかってるんだ?(笑)

——自分なりのイメージで。違ってるかもしれないけど。

和田 ここに出てくるギターって、みんな本当にギターだと思ってるみたいだけど。

——んっ?

和田 わかってるなこれは(笑)。じゃあ、「あの日の君に会いにギターケース開く」ってどういうことだと思う?

——え、言いづらいんだけど。

和田 ギターケースは、要は、つまりチャッ……(下を向く)。

——皆まで言うな皆まで言うな!(笑)

和田 わかってるじゃん(笑)。

——「終身刑」っていうタイトルもなかなかだな、って。唱くんが言わんとしてることかどうかわからないけど、結婚して、それでも心に残る人がいて、今も思いを募らせてる自分ではあるけれど、既に囚われの身というか、それが終身刑っていうことなのかな、と。だからしょうがないから……っていう(笑)。

和田 あ、なるほど!(笑)

——本当の意味は?

和田 それはもう単純に、ずっとその人から逃れられないっていう意味。

——ああ、そっか。私は逆に解釈してしまった。

和田 いや、そっちのほうがおもしろい!(笑)奥さんには、深い意味はないけど、こうこうこういうエロい歌なんだよって言ったら、よくそんなこと歌えるね、ってかなり呆れられた。でも、ファンの人たちにはイマイチ伝わってないようだから、もっと直接的に書かなきゃダメかなぁ、って(笑)。

——でもこの曲はこのままがいいよね。

和田 俺はツッコんでほしいわけ。こんなくだらないエロい歌でめちゃウケました、とか。なんでもいいんだけど。でも、なんか伝わってくるのは、かつて恋した誰かを思い出しながら、その人が好きだった曲を今夜俺がギターで爪弾いている的な、つまりまんまの……。

——ロマンチックなイメージで。

和田 そうそう! 俺のファンはみんないい人たち。純粋だし、穿った見方をしないのよ。俺はジョークとか笑いを入れたつもりなんだけど。意外とみんな真面目に捉えてるね。今回のアルバムで思ったのは、比喩とかダブルミーニングってやりすぎると真意が伝わらなくて微妙かも、って、ちょっと思っちゃった自分もいる。

——かと言って、あんまりストレートに表現しても。

和田 下品になっちゃうからね。難しいね。


KANさんが言ってたことが正解だよ。
「人生は最大の暇つぶし」って


——歌詞を書くこと自体は、以前よりおもしろくなってきてるんですか?

和田 そう。前は比喩とか抽象的な表現はあんまりよくないと教えられてきたから、俺もそういうのは逃げなんだと思い込んでたんだけど。たとえば(井上)陽水さんの「少年時代」とか。歌詞の意味はよくわからない(笑)。でもすごく世界観があるじゃない。最近はそういうのもいいなぁと思うようになってきて。

——それこそが歌のためにある詞というか。

和田 あんまり意味がわかりすぎる歌詞は、時にメロディの邪魔をするような気がしてたから、そうじゃないものも書いてみたくなった。だから今、取り組み始めたのは次のアルバムに向けての歌詞作り。

——もう次のアルバム?

和田 そう、俺のiPhoneには曲のアイデアがめちゃくちゃ入ってるのよ。そういう波がバーンッと来るときがあって、そのたびに録り溜めてるから。あまりに増えすぎて、もうこれは絶対に要らないっていうのは消してデータを軽くしてるくらい、いっぱいある。

——いっぱいストックがある中で、TRICERATOPSと、ソロとで、棲み分けみたいなものはあるんですか?

和田 それはなりゆきに任せてる。なぜかというと『地球 東京 僕の部屋』も1/3くらいはトライセラ用に書いてたの、今思うと。逆に、ソロの流れで作ったものが『Unite / Divide』に数曲入ってたり。だからあんまり俺は分けてない。

——時期に合わせて。

和田 そうだね。

——歌詞も?

和田 もちろん歌詞も。ただ『Unite / Divide』では、バンドでやるっていう前提があってさらに攻撃的な歌詞になったというのはある。ロックだからここまで行ったれっていう。……あれ、でも、どうだろう(笑)。

——今回も、かなり攻撃的な印象がありますが。

和田 そうかも(笑)。

——『BIRDMAN』を聴いたときに、歌詞は赤裸々なのにサウンドはアカデミックっていうところが唱くんならではのバランスだなと思って。

和田 「シニカル期」とかね。この合わせ技は、言われてみれば、たしかに。

——「クロノロジー」は組曲になっていて、その中で辛辣とも言える具体的なフレーズが出てきて。ユーモアにも受け取れるし、ちょっとファンサービス的というか。ああ、あのこと言ってるんだな、とか。

和田 そうそうそう。でもネガティブな波動を発すると、一瞬すっきりしたようで、ネガな波動はパワーがあるからブーメランのように自分を痛めつける。俺はそれをさんざん勉強して知ってるのに、やったの。不思議だよね。ホントに不思議。知っててやってるんだから、よっぽどだったと思うけど(笑)。だからいつになっても学びが続く、っていう。

——そういうクロノロジー。

和田 いまだに答えはわからないんだけどね。死後の世界も、臨死体験で肉体に戻ってきた人たちの話を聞くとそういう感じなのかなとは思うけど、肉体に戻って来なかった人の意見は聞けないから、やっぱりわからないんだよね。つまり自分が死ぬまでわからない。だからそこを考えるよりも、今を楽しく生きる、それでいいか、っていうところで終わってるね、あの曲は。KANさんが言ってたことが正解だよ。「人生は最大の暇つぶし」って。いかにおもしろおかしく生きるか。本当にそうだなと思う。


これを機に、みなさん、
もう一度「終身刑」を聴き直してほしい

——今回のアルバムには、みんなが大好きな「Boy」のようなやさしい曲もありますが。

和田 「終身刑」がいちばん好きっていう人は今のところ一人もいないね。

——そうですか(笑)。

和田 「終身刑」はでも実はすごく凝ってる曲なんだよ。シンプルなロックとかブルースのスリーコードなんだけど、それで作るメロディは世の中に出尽くしちゃってるから、どっかで聴いたことがある感じか、もしくは、ありきたりなメロディになっちゃう。そう感じさせない曲にしようと思って、♪このまま僕のギターを感じて〜、の部分とか、サビに半音進行メロディがたくさん出てくる。ふだんスリーコードでは誰もやらないであろうメロディにしたの。そこが俺のめっちゃ自慢ポイントなんだよね。あんまり誰も指摘してくれないけど(笑)。かなり自己満足の世界だよ。

——アルバムを順番に聴いていると、あそこで曲調が変わるから、全体のアクセントにもなっていますね。

和田 これを機に、みなさん、もう一度「終身刑」を聴き直してほしい。歌詞とメロディ以外も、たとえばコーラスもめちゃくちゃ入れたし、Tomo Kannoさんのドラムもとにかくストイックで、どこを切り取っても俺の自信作なの。Tomoさんには「鳥」や「クロノロジー」でも叩いてもらってる。(吉田)佳史とはまた違う意味での日本人離れした感覚があって、よかったよ。そのTomoさんには淡々と叩いてくださいってオーダーしたら、本当に極限まで淡々とやってくれて、でもここぞというときに生っぽい、バーンッて爆発するところもちょっとあって。ドラムは最終段階で俺の打ち込みから生に差し替えてるから、レコーディングは最後に行なわれてるにもかかわらず、それ以前に録音してた俺のベースとの絡みがいいんだよ。まるでセッションした感じになってるの。あと、俺のギターとも絡んで、全体がバンド演奏みたいになってる。それに加えて、歌詞と(笑)、自慢のコーラス。

——素晴らしい。

和田 これがリードトラックでもいいくらい(笑)。リリックビデオ作ろうかな。セクシーな感じで、ちょっと暗示させるような。おそらく、この主人公はその人と最後までは行けなかったんだろうね。だからこそ続きを妄想で。

——そんな詳しく教えてくれなくていいですよ(笑)。

和田 これは男だったらありがちな話だけど、最後まで行った人とはある意味、諦めがつくのよ。でもどっちかって言うと未遂の場合のほうが。

——思いが残ってしまうわけね。

和田 そう。未遂で終わってるからこその無限のループ、終身刑。

——わかりました(笑)。

和田 そういう意味で言うと、「ロケットに乗って」もそういうことだから。誰もそう思ってない。もうちょっと少年っぽいイメージでの「君とロケットに乗って宇宙を旅したい」だと思われてるけど、書いたときの意図はちょっと違うよね。

——やっぱり唱くんのキャラクターもあると思う。まさかそんな歌を作るとは思ってないんじゃない?(笑)

和田 う〜ん……。俺を知ってる俺からしてみたら、もしみんなが俺をきれいなものとして見てるとしたら、おかしな話だよ。ま、いいんだけど。でもなんか、困るよね。何かあったときに幻滅されそう(笑)。でも自分の中でも最低限のルールがあるから、あまりに品がないなっていうところには踏み入れないようにしてるかな。そのへんのプライドはあるのかもしれないね。……わかんない、どうでしょう(笑)。たぶんまだ開いてない扉があるから、次のアルバムでそこをやりたいっていうのはあるかな。

——開いてない扉。

和田 歌詞においてね。変な意味じゃないよ(笑)。なんか、コツを掴めたらいいなと思ってる。

——掴みつつあるの?

和田 まだわかんない。相当ぼんやりしてるんだけど。どうせ新しいものを作るなら、違う扉を開いていたいよね。うん、今、興味あるのは次のアルバムの歌詞、だな。

——『BIRDMAN』もかなり楽しませてもらいましたが。

和田 アルバムは発売されるまでは自分のものとして大事にしてるんだけど、出ちゃうと、あ〜行っちゃった〜、って感じ。次に取り掛かるしかない、ってなる。

——今後はどうなっていくんでしょう?

和田 誰かプロデューサーを立てるのもありかな?(笑)たとえば自分が好きなアーティスト、ポール(・マッカートニー)が若いプロデューサーと組んでやってるらしいっていうニュースが入ったとき、嬉しかったわけ。新しい風を吹かせてくれる人がいたら、すごくいい化学反応が生まれるはずだと思うから。ローリング・ストーンズのこの前のアルバムもそうだったの。俺より若い人と組んで。ミック・ジャガーは新しいことが好きだから。だったら今の若者にもウケるサウンドになるに違いないと思って、俺なんかは嬉しくなっちゃう。規模は置いといて、それを自分に置き換えて考えてみると、たぶんそういうことを喜んでくれる人はいると思うんだよ。

——うん、思う思う。

和田 じゃあ、いざ、やりたいかっていうと、ちょっと悩む。一回寝かせちゃうかもしれない。瞬時に答えろって言われたら「いや、全部自分でやりたい」って言っちゃう(笑)。俺が、すげえいいわこの人って思える人がいたらいいよね。

——若い人がいいよね、20代とか。サウンドのアイデアもいっぱいあるし。

和田 だよね。考え方も柔軟だし。……なるほど! それもいいかもなぁ。

——おおっ?

和田 ただ、もう1枚だけ一人でやりたい。っていうのは、ソロでミニマムなシンプルなものを1枚作りたいの。弾き語りの延長みたいなこととか。まだわかんない、イメージだけど。音も歌詞もそぎ落とされた、モノトーンみたいな。そういうアルバム。それは一人でやりたいな。

——そういうミニマムな濃い世界と、外気を取り入れた新しいアプローチと。両方あったらいいですね。

和田 そうねぇ! 今、けっこう未来が見えたぞ(笑)。


 * * *


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和田唱 X

BIRDMAN / SHO WADA


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