従来の健康保険証廃止はやめるべき
マイナ保険証はメリットよりもデメリットが大きい。従来の健康保険証を廃止することはやめるべきだ。マイナンバーカードに健康保険証機能を搭載すれば利便性が向上するという。1枚のカードに様々な情報を紐づけしていけば、関連する情報をそこから引き出せるので、手続きが簡便になることは予想できる。しかし簡便さを追い求めるあまりに、本来市民が必要としている「安全性」「プライバシー」「公共性」が脅かされてはならない。
まず、マイナンバーカードに他人の情報が紐づけされていたケースがあった。コンビニで住民票を申請したら他人の住民票が打ち出されたということもあった。デジタル化といっても入力するのは人なので、ヒューマンエラーは必ずあると考えるべきだ。情報の紐づけが従来のマイナンバーカードだけならば被害は限定的だったが、マイナカード保険証に他人の情報が紐づけされると、危険性が大きくなる。他人の疾病情報を基に、医師が投薬を行えば、治療に役立たないどころか命の危険にさらされることになる。
またこうした「治療歴」などの情報は個人のプライバシーであるが、マイナンバーカードから情報を引き出すことができるようになれば、今までよりも人の目に触れる機会が増加すると予想される。医療機関などでマイナンバーカードから得られた治療歴などの情報が大量に流失してしまえば、取り返しのつかないことになる。
さらに今後、運転免許証や金融機関情報がマイナンバーカードに紐づけされてスマホに搭載可能となれば、情報漏洩による危険度は格段に高まる。最近でも他人に成りすましてスマホの契約変更を行い、クレジットカード決済機能を悪用されたケースがあった。マイナンバーカードと健康保険証及び様々な情報との紐づけは、情報漏洩の機会を増やし、大量の情報を利用した犯罪を誘発する危険がある。
マイナ保険証を入り口として、民間企業にも情報を利活用させていこうとしているのが政府の狙いである。その先にあるのは医療や福祉や介護や年金などを公共分野から切り離して民間に安く売り渡していこうとしているのが透けて見える。これから高齢社会が進み、社会保障費が増大する責任を民間に押し付けようとしている。しかし民間活用といっても、エッセンシャルワーク部門の人件費が抑制されて働き手が不足している状況を改善しない限り、受け皿にはなれない。今必要なことは、公共で担うべきことを民間に安く払い下げることではなく、公共が担うべきことを実行できるように、制度を再構築することだ。
医療アクセスを制限することになりかねず、命も失われる可能性がある「健康保険証廃止」をやめるべきだ。