タロット18:月(The MOON) それは忠犬のアドバイスか、狼の囁きか?惑わせられる月夜の物語
星に続いて本日は18:月 The MOON。
月は星や太陽のカードと同じように、後に加えられたと言われるカードです。
と言うことで、割と絵柄が自由というか、絵柄の採用における解釈は時代や流派によって異なります。
というかマルセイユ版〜RWSあたりからは伝統的なタロットの月のカードはバッサリと切られています。
こういうのを見ると「タロットの意味はそのデッキに準じる」と思ってしまいます。
ですが、「月」のカードの意味は昔からあまり変わりません。
というのも「月」はタロットカードの出現の前から、占星術の世界においては確固たる意味や役割がしっかり根付いていたからです。
ということで、今回の月のカードの説明はいつもよりサラッと終わるはず・・・!
さて行ってみましょう。
先ずは、月の一般的な意味を知らべてみる
月は常に変化する見た目から、コロコロ変わる資質=気まぐれ、という解釈を与えました。
それを「女性」の資質に当てはめていたのは、大方の方がご存じでしょう。
月は水に関連する全てのものの守護星です。
水には形がありません。
湿っぽくて、優柔不断で、精神的な脆さや危うさの象徴であり、占星術においては蟹座がその役割を担っています。
月が存在感を増すのは夜であり、夜の月は人を惑わす危険なものというのが昔の一般的な考えでした。
現実と虚構が混ざり合い、混沌とした暗闇の中に浮かび上がるのが月です。
正位置の方が意味が良くなく、逆位置の方が若干意味が良いと言われているカードです。
18:The Moon(月)の成り立ち
月のカードの中でも古いと言われているのが左のエステのカード。
現行の月のタロットで描かれている女性ではなく、占星術師・天文学者の男性が描かれています。
右側は作者不明のパリのカード。
月のカードは「ロミオとジュリエット」を表現しているとも解釈されています。
さて、話はエステのカードに戻りましょう。
月の一枚前は星のカード。星と月を並べてみます。
「星を見つけた!」というところから、さらなる星の研究に進んでいるようなストーリーですね。
描かれている月の左下にあるのは地球儀です。
見づらいですが赤い月なので月蝕(ブラッドムーン)を指しているのかもしれません。
その月のもと、占星術師は肝心の月を見上げずにコンパスを手に、自身の手元に集中しています。
研究するとは、自己との向き合いでもあります。
月の支配者は女性が担う
月は夜の支配者であり、神話では女神が担当する領域ものでした。
その後月は女性性を強く表すものへとなっていきます。
中世の絵画ではマリア様と一緒に描かれることも多かった月。
マリア様が三日月を踏んでいれば清らかな処女マリアを称える絵と当時はお決まりになっていました。
ちなみに旧約聖書において、月は「光るもの(光っている)」ものであり、特に悪い意味はありません。
タロットでも、女性が描かれる月のカードも存在しました。
ヴィスコンティ版で後に加えられた月は、月がもつ性=女性が強調されて描かれ、月を持っています。
三日月を踏んでいるわけではないので、マリア様ではありません。
この女性はローマ・ギリシャ神話に登場する女神ディアナ(アルテミス)だと言われています。
彼女は狩猟・貞節と月の女神だと言われており、月のカードにぴったりの人。
タロットでも彼女が持つのは上弦の月(満月に向かう月)、ディアナは満ちていく上弦の月のシンボルでした。
(下弦の月のシンボルは後で記載をします)
月、弓矢、犬がキーワードの美しい女神ディアナ。
女神ディアナがいつも手にしているのは弓ですが、タロットで手に持っているのは「壊れた弓」だとも言われていますし、ただの腰紐だという説もあります。
Cary-Yale版では腰紐です。
高貴そうなお洋服を着ていても裸足の場合の意味するのは基本人間じゃありません。
彼女も女神様をイメージされたと考えられています。
さて、おなじみのマルセイユタロット。
星と同じように、ケアリーシートをベースにして作成したと言われています。
ケアリー(ケーリー)シートからはガラッと変わるのが毎度おなじみ。
ここで月には顔(表情)が、そしてザリガニが登場しますね。
なんでザリガニ・・・!
と思われるかもしれませんが、当時の蟹座の「蟹」の描写って現代から見たら”ほぼザリガニ”が採用されていることも多々ありました。
こんな感じ↓。
1450年頃の蟹座のイラストです。
これは蟹ではなくザリガニ!
詳しく調べていませんが、当時はザリガニも蟹だったんだろうと思います。
現代版のタロットで描かれているザリガニも「蟹座のカニ🦀なんだなぁ」と思うと良いです。
ザリガニが描かれていても、言いたいことは「蟹座の話」なんです。
蟹座の支配星は月ですから、月のカードに蟹(ザリガニ)が登場したのもある意味自然の流れです。
なぜ月に顔が描かれているのか?
それは当時のイラストの流行りだったからです。
カレンダーに描かれたイラストですが、この当時、月だけでなく太陽にも顔が描かれているのが主流でした。
タロットの月に描かれた表情は、この当時の流行を則ったのだと思われます。
RWS版では、マルセイユ版をベースにし、月は太陽に重なっています。
恐らく日蝕です。
月は新月に向かう下弦の月が描かれていることからも、正位置では先行き不透明な未来を予兆させます。
18:The Moon(月)のシンボルワードは「潜在意識化の優柔不断さによる不安と狂気」
頑な月。月に裏表はあるのか?
一般的に月や、月の表す象徴には二面性があると言われています。
表の顔と裏の顔です。
月は同じ面のみを地球に向け、ぐるぐる回っています。
決して裏の顔は地球に対して見せません。
裏の顔はあるけれど、見せません。
それは地球側から見えてる話で、月自身からしたら自分は表裏一体というか地続きでつながっている球体であり、裏表なんてありません。
しかし、月は宇宙の不思議な偶然により、地球側に見せる自身の姿を一定の面だけと決めました。
月は姿を変えることから、移り気と評されます。
しかし、ベースにあるものは生まれ持ったときに与えられてしまった宇宙の運命…自由に変えられない頑固さや不自由さでもあります。
なのに刻一刻と見るものに対して姿を変えてしまいます。
月の不安定さ、不確実さはここにあります。
「未だ見えぬ裏側がある」
頑なな自分と、第三者に映る不信感。
月は勤勉な研究者のように内省を行い続けていますが、それらは第三者には伝わっていないのです。
下弦の月
タロットで描かれているのは欠けていく月、下弦の月です。
ヴィスコンティ版で描かれていたのは上弦の月で決してネガティブなイメージはなかったのですが、RWSでは下弦の月へと変わりました。
神話で下弦の月をシンボルとする女神はヘカテー。
彼女は人間に富と幸福を与える女神と当初は言われつつも、欠けていく月を担っていることから「破壊や消滅を象徴する月」を司る女神とされることが多くなっていったようです。
ディアナを表とするなら、表裏一体の裏を担うのがヘカテー。
そのうち、古典後期になると亡霊の女王としてあらゆる魑魅魍魎と冥府を操る、恐ろしい物凄い形相の女神となっていきました。
(ちなみに、中世のキリスト教では「魔女たちの女王」とも呼ばれており、サバトでは崇められていたようです。)
概して、欠けていく月は衰退や死などをイメージさせるものであり、決してポジティブなイメージはありませんでした。
日蝕の月:太陽の灯りを遮るのは月自身
RWSでは太陽を月が覆い隠していることから「日蝕を描いている」とも言われています。
太陽を覆い隠す月には、険しい表情の顔が描かれていますね。
その顔は上にも書いた通り「この面しか見せない」という頑固で変えられない自分自身です。
日蝕は古代から危機や混乱を意味していきました。
太陽という偉大な神が隠されて闇夜が訪れるというのは、不吉極まりないものだったのです。
英語で月Lunaをベースとする単語Lunatic「狂気」という言葉があります。
月は女性や夜を支配するもの、潜在意識などを表すもので、陰陽2極で言えば必ず陰に相当するものを担う惑星。
その陰が太陽を覆い隠すというのは男性=太陽主義の当時の西洋においてはネガティブ=不吉な表現の方法でした。
水に住まう蟹座になったカニ(ザリガニに見えるけど蟹)
蟹座の元になったカニは、嫉妬深く復讐に狂う女神ヘラが夫と浮気相手の間にできた子供ヘラクレスが獣と戦う際に、獣の援軍としてカニを送ったことが由来です。
カニはやっぱり弱くてヘラクレスに潰されてしまうのですが、ヘラから「弱いくせに勇敢だったわ。お疲れ!」ということで星座に昇格させてもらった生き物です。
とはいえ、蟹に決してネガティブなイメージはなく古代ギリシアでは聖なる生き物として取り扱われていました。
いくらギリシア神話では神聖な生き物でも、その後においては甲殻類に良いイメージはあまりありません。
タロットの表現においては、岩影や砂の中など暗いところを好み、神経質で敏感な生き物というのは生き物界のヒラエルキーの中でも下の方にいるイメージとして良いでしょう。
狼に吠えられる
更には、描かれている動物、犬と狼も象徴的です。
ウェイト氏は狼のことを「野蛮な獣よりもおそましい性質のもの」と表現しています。
神話では狼は冥府を案内する動物とも言われ、忌み嫌われてきました。(死んだ生き物の肉を食べるから)。
ウェイト氏が忌み嫌うように、タロットでも狼は月を冥府へと誘い込んでいるのでしょう。
ちなみに北欧神話で月は「マーニ」として知られていますが、このマーニは弟のソルととももに狼に天界を追い出されてしまいます。
偶然なのかどうなのかはわかりませんが、神話でも月は狼に追い立てられているのです。
18:The Moon(月)の解釈
進むべき道を見つけるために内省を促す月
旅はまだ途中です。
闇夜はかろうじて月灯りに照らされていますが、勇んで進むべき適切な時間ではありません。
星で得たエルピス(予兆)を手に、月はこれからどう進むべきなのでしょうか。
余談。月の苦悩。女は三界に家なし
誕生したその時から頑なに変えられない自分をずっと裏側にじっと隠しつつ、周囲によって自分を変えさせられて、役割も日々変わるのが月です。
占星術では”太陽で生きる”のが天命であったり幸せだと言われています。
月はその真逆を生きるしかありません。
人の本能の根底にあるのは「安心して、安全に毎日暮らしたい、安住したい」というものです。
月はこの反対側を生まれた時から生きています。
女は三界に家なし、とブッダの言葉であります。
自分自身という身は何も変わらないのに、広い世界のどこにも身を落ち着ける場所がないのが女性であり、女性を象徴する月の苦悩なのです。
ただ月が目指すのは次の太陽であり、安住の住処に落ち着くのが旅本来の目的でもあるので、そこら辺は安心してください。
内省を促してこその旅〜タロット全体から眺めてみる:森下あかり的解釈
忠犬の忠告か、狼の囁きか
先ほど記載した犬と狼。
ウェイトさんからは具体的な説明がないようですが。。
これは月明かりで暗いと、犬と狼は区別がつかないよね・・・って解釈を私個人はしています。
北欧の言い伝えでは夕方〜夜にかけての時間を「狼の時間」と言うそうです。これは犬と狼の見分けがつかず、人が惑わされる時間だからだと言われています。
月夜(日蝕)は暗く、敵か味方かの判断も曖昧にしてしまうのです。
これって旅においては、すごく不安です。
狼は野生の中でも家畜や人間を襲ったりする凶悪な動物です。
片や犬は古くから人間と共に生きる、お互いがお互いを必要とするパートナーでした。
印象は対照的な動物ですが、犬の祖先は狼であり、(具体的にいうとDNAとか違うのだけれど)元は同じ生き物です。
0:愚者(The FOOL)でも犬は忠告的な立場を担っています。
西欧においてRWS版ができた頃犬は人間の良きパートナーであり、犬は決して「悪い生き物」という表現ではありません。
なんでこのカードが出たのか的解釈
さて、タロットでは「なんでこのカードが出たのか」というのが、リーディングにおいてとても重要なポイントとなります。
類似のカードとの違いを見ていきましょう。
惑星の3カード
特徴1:メインの登場人物
星:天使(妖精)
月:動物
太陽:人間の赤ちゃん
お気づきになりましたか?
段々と登場人物(生物)が、天界という存在から地球上の人間へと近づいているのを。
タロットをリーディングするのが人である限り、人の成長の旅路のゴールは「人であること」です。
星はまだ「予兆」でした。まだこれは人間界という人生の旅のスタート地点にも立っていません、まだ天界にいる状況。
月ではまだ進化の途中ですね、旅半ばであること、またまだ人間になれない中途半端さが動物で表現されます。
特徴2:惑星の表情
星:表情なし
月:苦悩
太陽:自信ありげ
成長段階に合わせ、表情が変わります。
星でいる間に表情はありません。しつこい様ですが「予兆」そのものは吉兆を表すものではないからです。
月は予兆(予言書)を手に入れ、旅の途中の状況を表ます。
道半ばゆえに、この時点ではゴールは全く見えません。
夜道は暗く、犬と狼の区別がつかないような道は、旅人にとって不安でしかありません。
しかし旅を決心した以上、どんなに旅路が苦しくとも「旅は必ず続く」のです。道半ばで断念することは月には許されません。
それに月は目を閉じています。
心を閉ざした月は内側に向かっています。
正位置はこの頑なさが悪い方向に向かい、逆位置では内省が次の道の手がかりとなってきます。
月が登場するカード
ソードの2、カップの8があります。
カップの8は、月のカードと同様に月に表情があります。
こちらの月の表情は無表情に近い表情の様です。登場人物は背を向け立ち去ろうとしています。
カップの8は、変化・次の目的地へ進むことを示しています。
月のカードとの違いは、方向転換の意思が明確にあること。
月には「ゴールに向かう」という目的はあっても、進むべき道(方向)に関して具体的な意思はまだ見えていない・足踏みしているという違いがあります。
ソードの2は、月に表情はありません。
フォーカスされているのは剣を持つ人物の方です。
この人物の表情は読み取れません。
剣を少しでも動かせばバランスを崩して身の危険を脅かします。これは決して安全な状況ではありません。
ソードの2は「バランスによる安定や調和」を表すと言われていわれているみたいですが、ちょっと意味合いが異なります。
具体的には「耐え忍ぶことによる表面上の安定」「状況に自己を合わせる抑制」と言う意味の安定であり、つまりは「状況の行き詰まりによる安定」です。
ここに自己の力は及びません。つまりは内心はストレスフルな状況です。
ウェイトさんも「目隠しはされたもの」と述べています。
こんな重そうな剣を持たされて、目隠しされて、心が穏やかな訳はないんですよ、ただ耐え忍んでいることによる停止状態です。(ちなみに自己の力が及ぶ安定は、「正義」のカードです。)
月のカードとの違いは、主体が外側からにあるのか、内側からにあるかの違いです。月の場合は内面にフォーカスが当たります。
母性のカード
月は占星術において「女性」を表す惑星なので、女性関連のカードも見ていきましょう。
タロットでは2大女性を筆頭に女性が登場するカードがたくさんあります。
未婚の女性であれば女教皇、既婚や母親であれば女帝が十分な役割を担うことができます。
と言うわけで、私のリーディングでは月に女性的な意味は持たしません。
ただ・・・これら2枚特に女教皇と一緒に出て、質問の意味に沿うのであれば、「生理(月のもの)」などの意味をとる場合もあります。
月のリーディング:森下あかり的解釈
基本は一般的な月のリーディングに沿っていますが、私が重要視しているのは、旅が行き詰まっているのは「内面に理由がある」と言う部分です。
これはトラウマなどの負の強い部分だけをフォーカスしているわけではありません。
こだわりであったり、自身の哲学、自信や価値観など、他の日常では良い面として捉えられている部分も、質問に対して月のカードは「あなたの内面が進むべき道の障害」になっていると示唆しています。
またそれらは第三者から見たら、非常に優柔不断で不安定でわかりにくいものに映っているとも理解する必要があります。
一般的な解釈以外に私が採用するワードとしては下記のようなものがありますので、ご参考に。
精神・生活カテゴリー
内面に起因する、引きこもりや不登校
視野を広げた正しい判断への忠告を自身で見つけない限り道がひらけない
今はどちらの意見を聞いても決められる段階にない(逆位置の場合はその後展望が見えてきます)
進むべき道の修正の示唆
探し物、悩み事の解決は見つからない
仕事カテゴリー
異動できない・させられない本人に起因する態度や資質の問題
第三者からの評価が定まらない態度
中間管理職のしんどさ(上手い方向は法王や正義がでがち)
キャリア迷子
恋愛カテゴリー
月と太陽がセット(特に逆位置)で出た場合、望まない妊娠への注意喚起の場合あり。望まれた妊娠の場合は大体女帝が出ます
異性からの望まない付き纏い、横槍(これはご本人・相手いずれの場合もありえます)。完璧な浮気は悪魔が多いです。
占い師として言うのは心苦しいのですが、どんなご相談であろうと占いの初っ端から何度も月の正位置が出る場合は、「今回どんなカードが出ようと決断を後押ししたりすることはできないと思いますが、続けられますか?お代は要りませんが。」とお話しすべきだと思っています。
これは私の独自の解釈「犬の忠告か狼の囁きか?」からです。
A(犬)にはこんなメリット・デメリットがあり、B(狼)にはこんなメリット・デメリットがあるようです。と言うのはタロットで出していくことは可能なのです。
ただ、「現段階では、どうしたってクライアントがそれをジャッジできる状況ではない。何を聞いたところでも、クライアントの中にも解決の手立てとなる答えや方法がないからだ(迷い続ける)。」と言うのが月の正位置の回答だからです。