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OISTの寮は広くて綺麗なのか?

Abstract

OIST(沖縄科学技術大学院大学)とは、沖縄県恩納村にある私立大学である。何ヶ月か前にTwitter(現X)にて、OISTの寮が話題になったことがある。本記事では、OISTの寮が本当に広くて綺麗なのかについて検証し、また実際に住んでみて感じた不便な点についても述べる。
OISTの寮は広くて綺麗であるが、周辺環境や部屋の間取り、湿気、虫などによって日常生活で少し困ることもある。

Introduction

OIST(沖縄科学技術大学院大学)とは、沖縄県国頭郡恩納村にキャンパスを構える内閣府直轄の大学院大学である。
オイストと呼ばれる。オイストの中の人はオイスターである。

OISTはその特殊な建築や設置の経緯、予算の出所などが理由となって、たびたびTwitter(現X)の大学関係者間で話題となる。

しかしながら、話題となるツイートの発信者の多くがビジター(学会参加者・セミナー講演者など)であることから、その情報の正確性に疑問符がつくことがある。

本記事では、そういったTwitter上で話題となったものの不正確といえる情報に対して、現役学生である筆者から見たOISTの実際について述べる。(ここまで定型文)

OISTの部屋は広くて綺麗である

OISTは研究成果以外に、その先鋭的で美しい建物にも注目されることが多い。

寮もその例外ではなく、沖縄の赤瓦屋根をモチーフとした建築は、まるで海外のリゾート地のような開放的な雰囲気を醸し出している。

正門から入って一番最初に目にする建造物であることから、キャンパスに訪れた人々はかなりの確率で感動する、と思う。

(余談: コロナ禍ではキャンパス内部の見学を中止していた。見学に来た人はこの寮だけを見て「おぉこれがOISTかぁ」と帰っていった。まるで徒然草は仁和寺にある法師のようだった。)

写真はOIST Graduate School Twitterから
https://x.com/oistgradschool?s=21&t=te8GaEXH36N2NIbvBWreAg

OIST Graduate School Twitterより
OIST Graduate School Twitterより

さて、外観は綺麗な寮であるが、はたして内部はどうだろうか?

OIST Graduate School Twitterより、おそらく2人用シェアルーム。海が見える。
OIST Graduate School Twitterより、一応1人部屋、実際はカップル向けの1LDK。

かなり広いし、築浅であることもあって綺麗だ。

この広くて綺麗な寮に加えて、学生には家賃の80%が補助されるのだから、まさに至れり尽くせりだ。

補助前の家賃は周辺市町村のアパートに比べてそこそこ強気の設定である。入居時にはきちんと敷金1ヶ月分が請求されるし、退去後にはクリーニング代もきちんと請求される(敷金は部屋やエアコンのクリーニング代と相殺され、余れば返ってくる)

Twitterでは、他大学の寮と北欧の刑務所、およびこのカップル向けの部屋を比べたポストが反響を得ていた。

しかし、そのポストで挙げられた他大学の寮は明らかに単身者向けの部屋なので、カップル向けの1LDKと比べるのは少し不公平だ。

OISTでは特別な理由がない限り、単身者は2〜3人のシェアルームに割り振られることになっている。(それでもその件ツイートの寮に比べたら、かなり広いのではあるが…)

https://x.com/oistgradschool/status/1245159800805003265?s=46&t=te8GaEXH36N2NIbvBWreAg

恵まれていることは確かなのだが…

こんな立派な寮に住んでおきながら不満があるとは何事だと怒られそうであるが、実際住んでいると困ることが何点かある。

ここからは私が住んでみて感じた不便な点を紹介していく。

1. 街が遠い

よくOISTは陸の孤島と形容される。
キャンパスはジャングルに囲まれているし、あながち嘘でもない。
キャンパスに入るにはグネグネとした長い坂道を登らねばならず、まるで要塞のようでもある。

坂道の下には沖縄の大動脈・国道58号線があり、さらに海向けに坂を下るとこじんまりとした住宅地がある。
ただ食料品や日用品を買えるようなお店はなく、最寄りのコンビニまで徒歩約30かかる。
もちろん学生街のようなものはない。

徒歩で移動しようと思うとかなり不便だ。

とはいえ、キャンパス内にコンビニ規模のイオンがあるので、たいていの食料品・日用品はこちらで買える。営業は年中無休、8時〜20時。便利になった。

また車で15分も行けばそこそこの規模の街があり、そこには大きなスーパーもある。車さえあれば生活に困ることはない。
OISTがとんでもない田舎だと言うのは、全てが徒歩圏内で完結する都会民の傲慢な発想である。

2. 湿気がヤバい

もともと高温多湿な沖縄で、さらにOISTのキャンパス内はジャングルに囲まれ、そのジャングルの中には川が流れている。

その湿気たるは凄まじく、梅雨時期に除湿をせずにいると、文字通り家の中に水溜りができるほどである。

(なぜか寮の床は、コンクリートの上に直でフローリング柄のシートを敷いたような作りだ。水溜まりができる原因の一つだと思う)

そのため、夏場はエアコンを24時間つけっぱなしにすることが推奨されている。
電気代がかなり高くなるが、そうでもしないと部屋中カビだらけだ。

3. 小さな隣人たち

これはなぜか実験棟廊下に落ちてたクワガタ

沖縄に限った話ではないが、自然豊かな場所に住んでいると、人間以外の生物とも共生しなければならない。

まぁ沖縄にタヌキやシカ、クマといった大きな野生の哺乳類はほとんどいないので(たぶんイノシシくらい?)、遭遇するのはほとんどが虫か両生類である。

私の部屋にはよく蟻や蛾、蜘蛛、ヤモリが現れる。季節によっては蟻が大量発生するので、蟻用駆除剤を部屋中に置いている。

その他についてはほとんど無害なので放っておくのだが、4〜6cmほどの巨大な蜘蛛にはそっとおかえりいただいている。

もちろん部屋の外でも虫に遭遇する。よく大量発生するのはヤスデだが、過去に何回かラブバグが大量発生した年があった。ラブバグは無害な虫なのだが、オスメスがくっついたまま大量に飛び回っていて、非常に鬱陶しかった。

他にも多種多様な昆虫、カエル、モグラ、ネズミ、ノラネコ、たくさんの野鳥、ごく稀にマングースなどにも遭遇することができる。

幸いにも私は遭遇したことはないが、キャンパス内でハブやイノシシが目撃されることもある。

4. 部屋に洗濯機がない

OISTの寮は基本的に全て家具付きである。海外から来た学生が家具をそろえる手間、また海外に出る学生が家具を処分する手間を考えると大助かりだ。

しかし、開学初期からある棟には洗濯機がない部屋がある。

より正確に言えば、部屋に洗濯機を置くためのスペースがない。そのため自分で購入して使用することもできない。

もちろん洗濯できなければ困るので、寮には居住者向けのコインランドリーが併設されている。しかし、洗濯のためにわざわざ家を出る必要があり、これが非常に面倒臭い。

https://www.oist.jp/ja/campus/community-facilities
OIST内のコインランドリー。

また腹が立つことに、洗濯するための選択肢がほぼこのコインランドリー一択であるのにも関わらず、使用料を取るのである。
(管理を委託しているのでしょうがないだろうけど)

洗濯が1回300円、乾燥は20分で100円と、普通のコインランドリーよりは安いのだけれど、洗濯を週3回するとしたら、(だいたい2日に一回として)洗濯だけで月に約4500円の出費だ。

これまでのコインランドリー代で洗濯機が買えないか、何度計算したものか。

5.1LDK?

先ほどカップル向けの1LDKを紹介したが、写真を見てもらえばわかるように、部屋には仕切りが一切ない。
これでは1LDKというよりデカいワンルームである。

夜遅くまで作業したり、リモートで会議があったりすると、パートナーに(もしくはパートナーが)かなり気を使わなくてはならない。

Conclusion

本記事では、その奇抜な建物に注目されるOISTの寮が広くて綺麗かについて議論した。
OISTの寮は外観も美しく、内部も広々としていて築浅で綺麗である。

しかし、OISTの立地や自然環境、間取りなどによって少しだけ住みづらい部分もある。

本記事によって、OISTの新入生が新生活に多少の不安を覚えることが予想される。
本記事の成果によって、今後OISTの評価が変化することは全く期待されない。

Contribution

本記事の構成・執筆・編集は全て筆者が担当した。

Acknowledgment

筆者は本記事を最後まで読んでくれた暇な方に感謝します。
筆者は本記事を書くにあたり、OISTを含め特にどこからも助成を受けていませんが、いつもOISTに感謝しています。

Supplementary information

え、不満ってそれだけ?全然マシじゃん!と思われたかもしれない。そのとおり。OISTの学生はかなり恵まれている。

研究環境は言わずもがな。立地から車がないと生活できないとよく言われるが、車を維持できるだけの経済的なサポートがある。 電気代も洗濯代もどんと来いだ。

経済的理由で博士課程進学を躊躇している方は、ぜひ一度OISTを検討してみてほしい。

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